展覧会レポート
2020.3.6
華々しい時代から厳しい時代まで
江戸の名品浮世絵を揃えた展覧会開催中!
たばこと塩の博物館にて「隅田川に育まれた文化 浮世絵に見る名所と美人」が開催中です。
(3月25日より開館。その他休館情報はコチラ)
たばこと塩の博物館のそばにある隅田川。
江戸時代には、花の名所や役者の別荘、豪華な料亭などでにぎわっており、江戸のシンボル的な存在でした。
本展では、隅田川を背景として描いた華々しいものから、天保(てんぽう)改革後の浮世絵が取り締まられた時代の作品を紹介するものです。
第1部 描かれた江戸の水辺 ―隅田川を中心に―
展示風景
当時、隅田川は“大川”とも呼ばれており、交通や物資の輸送などでも重要な役割を果たしていました。
隅田川下流の東岸は埋め立てなどの開発で、市街地化していきましたが、田畑が広がる上流は江戸以前に建てられた神社仏閣が数多くあり、特に川沿いに桜の木が植えられたあとは、観光スポットとしても人気を博したそう。
第1部では、風景画やコマ絵*として描かれた美しい隅田川を紹介しています。
*作品のアクセントとなる小型の挿絵のこと。
展示風景より、歌川国貞(三代歌川豊国)〈東都五代橋〉 個人蔵
こちらの東都五代橋シリーズは、江戸時代に隅田川にかけられた5本の橋をコマ絵に描き、それぞれの橋からイメージされる女性の全身像を描いたものです。
右から2番目は、今でも多くの人が知っている吾妻橋をテーマにして遊女が描かれています。当時の遊郭は、浅草寺の裏手にありました。
よく見ると、橋の奥に浅草寺の五重塔が描かれているのがわかるでしょうか?
知っている場所が描かれた作品、なんだか親近感が湧きます。
第2部 弘化・嘉永期の美人画 ―国芳・三代豊国の揃物*を中心に―
*同じテーマで描かれたシリーズ作品のこと。
展示風景
隅田川が江戸有数の名所として親しまれるようになった文化文政期(1804-1830)を経て、天保改革が始まります。
この改革ではぜいたくが禁止になったり、節約しろと言われたり、風俗が取り締まられます。
そして、浮世絵も取締の対象になり、役者や遊女を描くことが禁止されます。
第2部では、そんな厳しい時代の中でも工夫して描かれた珍しい浮世絵を紹介しています。
左:歌川国芳《賢女烈婦伝 大井児》、右:歌川国芳《賢女烈婦伝 白拍子静》ともに個人蔵
こちらは絵のテーマが制限される中、歴史物語や戯曲に登場する女性を取り上げたシリーズ。
左の大井児(おおいこ)という人物は、鎌倉時代の説話集『古今著聞集』に登場する人物で、2mの大石を動かすことのできる怪力の女性だそう!
画家たちは厳しい制約の中でも、芝居や古典文学の登場人物などで江戸当時の美人を描き、美人画へのニーズに答えました。
第3部 江戸の後
幕末は鎖国が終わり、海外の文化が入り始め、人々の生活にも変化が訪れます。
写真や新聞の普及により、スピード感で劣る浮世絵は、次第に衰退していきます。
そんな中でも当時を代表する浮世絵師はいました。世の変化を浮世絵にとどめつつ、やはり隅田川を中心とした名所・美人の組み合わせは健在でした。
楊洲周延《見立十二支 巳 不忍弁財天》個人蔵
見立十二支は、干支(えと)になぞらえて、関連のある東京の名所を描いた揃物です。
こちらは上野不忍池にある弁天堂が描かれています。弁財天は芸事の神として有名で、女性は琴を弾いています。
今も下町の懐かしい雰囲気のある隅田川。江戸の名所に思いをはせて、散歩するのも楽しそうです。
珍しい作品がズラリと並ぶ本展。入場料はなんと100円です。是非お見逃し無く。
Information
展覧会名:隅田川に育まれた文化 浮世絵に見る名所と美人
会場:たばこと塩の博物館
会期:2020.02.29〜2020.04.19
([前期]〜04.05[後期]04.07〜04.19)
※開館情報については随時HPなどでご確認ください。
詳細:https://obikake.com/exhibition/9761/
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Editor | 三輪 穂乃香
たば塩さんはいつも良い浮世絵展をやるんです・・・必見ですよ。
天保改革後の浮世絵は、着物の柄も地味にしてあったり、工夫が面白かった〜。