展覧会レポート
2020.11.12
日本を代表する8人の現代作家
旧朝香宮邸で魅せる小宇宙とは
東京都庭園美術館にて「生命の庭―8人の現代作家が見つけた小宇宙」が開催中です。
展示風景
本展は、日本を代表する8人の現代作家たちの作品を通して、人間と自然との関係性を問い直す試みです。
出品される作品は、絵画、彫刻、映像、インスタレーションなどさまざまです。それぞれの作家が感じる「小宇宙」を、自由に感じとってみましょう。
荒々しく、美しい「野生」
淺井裕介(あさいゆうすけ)は、動植物などを画面いっぱいに埋めつくした、荒々しく自由な表現が特徴的な作家です。
本展では、自然のなかの「野生」に関心を深める淺井の作品を展示します。
展示風景より、淺井裕介《混血―その島にはまだ言葉がありませんでした》2019-2020年 ©Yusuke Asai courtesy of the artist
《混血―その島にはまだ言葉がありませんでした》は、鹿の血を絵具にして描かれた、命をいただいて生まれた作品です。
淺井は、“自然と人間の関係”から考察されることが多い作家です。
すきまなく画面に描かれた自然のモチーフから、生命について今一度考えてみましょう。
「自然」と「不自然」
加藤泉は、胎児のような「人型」を描いた油彩画や彫刻を制作する作家です。
ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展に参加するなど、国際的にも注目を集めています。
展示風景より、加藤泉《無題》2020年
加藤の指により大胆に生み出された生命体は、 どこか原始的な、不思議な存在感があります。
本展では、絵画、彫刻に収まらない多様な素材を使用した作品が展示されます。
目に見えない「生命」
青木美歌(あおきみか)は、ガラスを通して“目に見えない”世界との関係を問い続ける作家です。
ガラスという物質は透明で、硬いのに脆く、「ある」のに「ない」ようにも見えます。
青木美歌《あなたと私の間に》 2006年
青木は作品のモチーフとして、菌類、ウイルス、細胞などミクロな存在を使います。目に見えないけれど、たしかにそこに存在し、関連しあい変化する生命の姿を表現しています。
真っ暗な空間に浮かぶ、神秘的な作品の数々に注目です。
わたしたち人間は、とても高度な知性を持つ存在です。誕生以来、変化し続ける地球の環境に柔軟に適応することで進化してきました。
現在、文明の発達でうまれたインターネットや便利な生活に囲まれたわたしたちは、自分たちが自然の一部であることを忘れているのではないでしょうか。
大都会に位置する旧朝香宮邸を舞台に、日本を代表する現代作家が出品する本展。
「わたしたち人間は大きな自然の流れの中にいる」ということを改めて気づかせてくれますよ。
展示風景
Information
生命の庭―8人の現代作家が見つけた小宇宙
会場:東京都庭園美術館
会期:2020.10.17〜2021.01.12
公式サイト:https://www.teien-art-museum.ne.jp/
※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症対策を実施しています。詳しくはコチラ
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Editor | 三輪 穂乃香
【編集後記】
旧朝香宮邸と展示が合う~!