展覧会レポート
2020.10.20
コミュニケーションってなんだろう?
「翻訳」からたどる、他者同士のつながり
21_21 DESIGN SIGHT にて「トランスレーションズ展 -「わかりあえなさ」をわかりあおう」が開催中です。
「翻訳」とは、ある言語で表現された文章やことばを、別の言語に言い換えることを指しています。
でもそれは言語だけではありません。言葉が通じない相手がいたとき私たちは、身振り手振りで伝えたり、新たに言葉をつくりだしたりします。それもまた、自分の感情を伝えようとする「翻訳」と言えます。
本展では、“わかりあえない”はずである他者同士が交流するための「翻訳」というコミュニケーションを、さまざまな角度から紹介します。
展示はぜんぶで21。すべてはご紹介できませんが、おびかけ編集部が気になったものをピックアップします♪
ことばのつながりを見つける
Google Creative Lab「ファウンド・イン・トランスレーション」
皆さんもよくご存じのGoogle翻訳。現在108の言語に対応していますが、地球上で話されている言語は7000近くあり、まだまだ追いついていません。
この翻訳機能技術が発達するにつれ、「異なる言語同士にも、実はつながりを示す共通点がある」という発見がありました。
この体験型展示では、鑑賞者がマイクに向かって話しかけると複数の他言語へと接続され、「翻訳」の過程をのぞくことができます。ことばの海を泳いで、ことば同士の新たなつながりを探してみてください。
ことばの世界の多様さを知る
エラ・フランシス・サンダース「翻訳できない世界のことば」
イラストレーターのエラ・フランシス・サンダースが、世界中の翻訳できない表現を集め、イラストとともに紹介する本です。日本でもとても人気なので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
ポルトガル語とガリシア語の「SAUDADE」は、「心の中になんとなくずっと持ち続けている、存在しないものへの渇望や、または、愛し失った人やものへの郷愁」なんだとか。
日本語へ翻訳するととても違和感があるのに、それを一語で表現できるなんて!ことばって不思議ですよね。
もうひとつ。日本語「木々の葉のすきまから射す日の光」と訳されることば、皆さん何かわかりますか?
「KOMOREBI」ですよ!
こころの内側をひらく
清水淳子「moyamoya room」
私たちには、どれだけことばを尽くしても伝えにくい、モヤモヤした複雑な気持ちがあります。
そんな「こころの内側」を翻訳するために、複雑な考えや対話の過程を、“グラフィックレコーディング”の手法を使ったワークショップを実施しました。
その方法は、①こころのモヤモヤを語ります→②モヤモヤをかたちや色、簡単な言葉で表現します→③視覚化されたモヤモヤを囲んで、みんなで対話します。
誰かと対話して、自分のモヤモヤを理解してみてはいかがでしょうか?
見えない生き物と話す
Ferment Media Reserch「NukaBot v3.0」
こちらはヌカボット v3.0。
日本の代表的な発酵食品「ぬか床」には、実に100種類以上もの微生物が存在しています。ぬか床をかきまぜることは、人の手に宿った菌と微生物が混ざり合い、乳酸菌や酵母などが、野菜の糖質をエネルギー変換し、豊かな味と風味をつくりだす行為です。
ヌカボットは菌の発酵状態を私たちに伝えてくれる「翻訳装置」で、話しかけると「そろそろかき混ぜたら?」などと返してくれます。
目には見えない微生物たちの声に、耳をかたむけてみましょう。
手話や映像、AIを使った自動翻訳、動物・微生物などにおける対話まで、さまざまな「翻訳」について紹介する本展。
見て、体験して、考えて。他者の考えや異文化の魅力に気づくきっかけになりそうです。
長谷川 愛「Human × Shark」
OBIKAKE gifts
本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は11月20日23:59まで!
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トランスレーションズ展 -「わかりあえなさ」をわかりあおう
2020.10.16~2021.06.13
開催終了
21_21 DESIGN SIGHT
Editor | 三輪 穂乃香
【編集後記】
お互い言葉が通じなくても、身振り手振りでコミュニケーションをとって、最終的に意気投合できる、なんてことありますよね。
一人旅の醍醐味かもしれない(笑)