展覧会レポート
2020.10.22
日本で初めて「ゴッホ展」を開いた人物!?
式場隆三郎ってどんな人?
練馬区立美術館で、「式場隆三郎 腦室反射鏡」が開催中です。
式場隆三郎 腦室反射鏡 展示風景より
式場隆三郎(しきば りゅうざぶろう/1898-1965)は、現在の新潟県五泉市に生まれ、新潟医学専門学校(現・新潟大学医学部)に学んだ精神科医でした。
医業のかたわら、民藝運動に参加、『ゴッホ論』、『精神病理学入門』などを執筆。生涯の著書は200冊におよびます!
本展では、式場の多彩な足跡を、約200点の作品・資料を通して紹介します。
医学生がどうして芸術に?
式場隆三郎 腦室反射鏡 展示風景より 岸田劉生表紙装幀 『白樺』とその関連雑誌 1918―1927 とんかつ文庫
式場は、医学生時代に白樺派に強く憧れを持っていました。
白樺派とは、1910年に武者小路実篤と志賀直哉ら、学習院の同窓生を中心に創刊された同人誌『白樺(しらかば)』で活躍した文学者たちの総称です。
この『白樺』を通じて実篤や志賀、画家の岸田劉生と親しくなりました。
こちらは、劉生が装丁(そうてい)を担当した雑誌です。『白樺』の表紙をよく見てみると・・・劉生の愛娘、麗子に似た少女が描かれています。
式場隆三郎 腦室反射鏡 展示風景より
民藝運動との関わりにも注目!
式場は『白樺』を通じて、民藝運動で有名な柳宗悦(やなぎ むねよし)とも知り合いになりました。
柳が1926年に提唱した民藝運動にも初期から参画し、ほかの関係者とも親交を結びました。
式場邸応接間(柳宗悦・濱田庄司ほか設計、1939 年竣工)
式場邸(現存)の設計には、柳や濱田庄司、河井寛次郎が携わっており、「民藝建築」の代表作となっています。
日本人に初めてゴッホ作品をみせた人!?
式場隆三郎 腦室反射鏡 展示風景より
式場は、昭和26年(1951)9月に、銀座松坂屋で「ゴッホ複製画展」を開きます。これは、式場が制作や広報に協力した劇団民藝『炎の人 ヴァン・ゴッホの生涯』のプレ・イベントでした。
式場隆三郎 腦室反射鏡 展示風景より
展覧会は大盛況。その評価に自信を持った式場は、翌年5月から欧米各地を回り歩いて、さらに複製画や資料を集めました。
昭和28年(1953)5月には、日本橋丸善で「ゴッホ生誕100年記念展」を開催。以後、全国に複製画展を巡回させました。
これらの多くは、日本人が初めてみたゴッホ作品であり、「炎の人」としてのゴッホ像を決定づけるものでした。
カワイイ! ゴッホ柄の浴衣やワンピース
式場隆三郎 腦室反射鏡 展示風景より
こちらは、式場が晩年にプロデュースした、ゴッホ柄のワンピースと浴衣です。
真ん中の白いワンピースは、ゴッホの有名な作品《星月夜》を写して制作されたものだそう! ゴッホのどの作品がモチーフとなっているのか、考えながら観てみては?
医者でありながら近現代日本の文化史において、重要な役割を担った、式場隆三郎の活動を総覧する本展。
本展は広島、新潟での会期を経て、東京で終了します。お見逃しなく!
information
展覧会名:式場隆三郎 腦室反射鏡
館名:練馬区立美術館
会期:2020.10.11〜12.06
開館時間:10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日
料金:一般1,000円、高校・大学生および65~74歳800円、中学生以下および75歳以上無料、障害者(一般)500円、障害者(高校・大学生)400円、ぐるっとパスご利用の方500円(年齢などによる割引の適用外になります)
展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/13621/
公式サイト:https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=202008231598163149
※感染症対策が実施されています。来館前に必ず美術館公式サイトをご確認ください。
OBIKAKE gifts
本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は11月4日23:59まで!
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Editor | 静居 絵里菜
【編集後記】
日本文化史でとても重要な人物であることを、恥ずかしながら初めて知りました・・・。とても見ごたえのある展覧会なので、お近くの方は、ぜひ足を運んでみてください!
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