展覧会レポート
2020.12.2
戯画から風刺画、そして漫画へ
日本の「漫画」の歴史を辿る展覧会
すみだ北斎美術館で、「GIGA・MANGA 江戸戯画から近代漫画へ」が開催中です。
GIGA・MANGA 江戸戯画から近代漫画へ 展示風景より
『北斎漫画』展示風景 すみだ北斎美術館蔵
いまや世界共通言語となった日本の漫画=MANGA。その起源には、さまざまな説があると言われています。
本展では、印刷文化が発展した江戸時代の戯画(ぎが)を、現代日本で認識されている漫画的な表現の出発点として紹介。
浮世絵版画から明治・大正時代の風刺漫画雑
戯画ってなんだろう?
歌川国芳「浮世よしづ久誌」(前期展示)1847(弘化4)~52(嘉永5)年1月
京都精華大学国際マンガ研究センター/京都国際マンガミュージアム蔵
戯画とは、人物や動物などをユニークに描き、風刺(*)的な意味を持たせた絵のことです。
*風刺(ふうし):遠まわしに社会・人物などを批評すること。
《鳥獣戯画》や、平安時代の僧侶たちが「おなら」で対決する場面を描いた《放屁合戦絵巻》など、ユーモラスな表現がされた「戯画」は古代から描かれていましたが、貴族や僧侶、武将など上流貴族の人びとだけしか見ることができませんでした。
戯画が、庶民にも親しまれるようになったのは、印刷出版文化が発展した江戸時代中期からです。この時代は、葛飾北斎や歌川国芳など、人気浮世絵師が次々と誕生した時代でもあります。
幕府の改革や幕末の動乱、近代化、そして庶民の日常など、浮世絵で描かれた「戯画」は、さまざまな事柄を時にユニークに、時に辛らつに伝え、民衆たちの人気を集めました。
(左から)作者不詳「諸職吾沢銭」1855(安政2)年/歌川芳藤「心夢吉凶鏡」(前期展示)1867(慶応3)年4月
いずれも、京都精華大学国際マンガ研究センター/京都国際マンガミュージアム蔵
写真右の作品は、歌川芳藤(うたがわ よしふじ)「心夢吉凶鏡(こころのゆめよしあしかがみ)」です。
こちらは、今では漫画の表現で欠かせない、心や言葉のメッセージを伝える「吹き出し」が使われている作品です。
本作には、美味しいものを求める「口のよく(欲)」、歌舞伎を観たい「目のよく(欲)」などの欲望が書きこまれています。
漫画の原流といえば、コレ!
葛飾北斎『北斎漫画』に描かれている、ユニークなコマ表現や、生き生きとしたキャラクター性からは、漫画の原点といえるような表現を見出せます。
GIGA・MANGA 江戸戯画から近代漫画へ 展示風景より
『北斎漫画』展示風景 すみだ北斎美術館蔵
『北斎漫画』は、1814(文化11)年に初編が出されて人気を博しました。
北斎が没する1849(嘉永2)年までに13編まで出され、北斎の死後、関係者たちによって14、15編まで出版されました。
大ベストセラーとなった『北斎漫画』は、江戸の町のあちこちの書店、古書店などでも見られたそう。
幕末の西洋との貿易では、陶器を輸出する際、割れないように包むパッキングに使われていたこともあり、ヨーロッパの人びとにも広く知られています。
海外の影響を受けた漫画雑誌
明治時代になると海外の影響を受け、ニュース性のあるテーマなどを、風刺画(ふうしが)と文章で紹介した漫画雑誌が登場します。
(左から)『滑稽新聞』第120号 滑稽新聞社 1906(明治39)年8月5日/『滑稽新聞』第109号 滑稽新聞社 1906(明治39)年2月20日
いずれも、京都精華大学国際マンガ研究センター/京都国際マンガミュージアム蔵
1923(大正12)年に創刊された『日刊アサヒグラフ』に、『お伽 正チャンの冒険』という、日本初の日刊連載の新聞4コマ漫画が、掲載されました。
小星・東風人『お伽 正チャンの冒険』二の巻 朝日新聞社 1924(大正13)年9月10日
京都精華大学国際マンガ研究センター/京都国際マンガミュージアム蔵
キャラクター性のある絵柄とストーリー展開など、現代日本の漫画にも通じる表現は、多くの読者に親しまれました。
同時期開催
4階展望フロアでは、「クラクフ ドラゴンとドラゴン」展が開催されています。
「クラクフ ドラゴンとドラゴン」展 展示風景より
本展は、同館が2019年1月15日に、ポーランドのクラクフにある“日本美術技術博物館マンガ(通称:マンガ館)”と友好協力協定を締結したことを記念する展覧会です。
マンガ館のあるポーランドの街クラクフ・ヴァヴェル城に伝わる「ポーランドのドラゴン」と、北斎の龍の画にインスピレーションを得た「日本のドラゴン」をテーマに、ポーランド人のアーティスト6名による48点の作品が展示されています。
こちらもぜひ、お見逃しなく。
展覧会オリジナルグッズ
すみだ北斎美術館 ミュージアムショップより
本展に出品されている作品をグッズ化した、展覧会オリジナルグッズもミュージアムショップで販売中です。
展覧会の思い出に、こちらもいかがでしょうか?
時代の枠組みを越えて、総数約270点の「漫画のルーツ」が集合する「GIGA・MANGA」。
同館初となる前期・中期・後期の3つの会期で展示替えが行われます!
詳しい会期は、美術館公式サイトをご確認ください。
Information
GIGA・MANGA 江戸戯画から近代漫画へ
会場:すみだ北斎美術館
会期:2020.11.25〜2021.01.24
公式サイト:https://hokusai-museum.jp/gigamanga/
※新型コロナウイルス感染症拡大防止についてはコチラ
OBIKAKE gifts
本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は12月16日23:59まで!
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Editor | 静居 絵里菜
【編集後記】
漫画の変遷が展覧できる本展。3期に分けて展示替えがあるので、お近くの方はぜひ足を運んでみてください♪