展覧会レポート
2020.12.16
モダンな美人画で知られる東郷青児
「旅」をテーマとした作品を紹介
SOMPO美術館で「東郷青児 蔵出しコレクション ~異国の旅と記憶~」が開催中です。
東郷青児 蔵出しコレクション ~異国の旅と記憶~ 展示風景
東郷青児(とうごう せいじ/1897-1978)は、モダンな美人画で知られる画家です。24歳から7年間をフランスで暮らし、63歳以降は毎年のように海外を旅してまわりました。
本展は、主に日本とフランスを起点とし、東郷が旅先で見たものや持ち帰った物、それらに刺激を受けた作品などを展示。生涯、異国への興味を抱き続けた東郷の活動の足跡をたどる展覧会です。
外国へのあこがれを込めた作品
《コントラバスを弾く》は、1915(大正年)年に開いた初個展の出品作です。
東郷青児《コントラバスを弾く》1915年 SOMPO美術館蔵
東郷は美術学校に進まず、芸術家や文化人たちが集まる場所に積極的に出入りすることで、彼らの知識を吸収していったそうです。
本作は、作曲家・山田耕筰(*)から表現主義やキュビスムなどヨーロッパの前衛芸術運動の影響を受け、オーケストラの音楽を表現しようとして描かれました。
*山田耕筰(やまだ こうさく/1886-1969):日本で初めて交響楽団(シンフォニーオーケストラ)を組織し、交響楽やオペラの発展に尽力した。代表作は「赤とんぼ」や「この道」、「からたちの花」など。
東郷が描いた世界の情景
(左)東郷青児《南仏風景》1922年 SOMPO美術館蔵(寄託:一般財団法人 陽山美術館)
(右)東郷青児《スペインの女優》1922年 SOMPO美術館蔵
東郷は1921(大正10)年に、約40日の船旅を経て、フランスに留学しました。
留学先では、パリでダダイスム(*)の集会を見たり、オペラ座の前衛的なバレエに通ったり・・・最初の2年間は、ヨーロッパの芸術や文化をどん欲に体験しました。
美術理論について多くを語らない東郷の芸術観は、このフランスへの留学がきっかけに培われたと言われています。
*ダダイスム:ヨーロッパとアメリカの複数の都市で展開された、反美学的姿勢、既成の価値観の否定などを特色とする20世紀前半の芸術運動のこと。
(左)東郷青児《セシル・カット》1960年頃 SOMPO美術館蔵
(中央)東郷青児《廃屋》1962年 SOMPO美術館蔵
(右)東郷青児《南仏風景》1963年 SOMPO美術館蔵
本展では、旅先でのスケッチや、厚塗りに挑戦した晩年の風景画など約20点が、展示されています。
東郷の目を通して見た景色を、ぜひ会場でお楽しみください。
「青児美人」とは?
東郷といえば「青児美人」と呼ばれる美人画が有名です。その中でも代表する作品と呼ばれているのが《望郷》(写真右)です。
(左)東郷青児《朝》1958年頃 損害保険ジャパン株式会社
(中央)東郷青児《赤いベルト》1953年 損害保険ジャパン株式会社
(右)東郷青児《望郷》1959年 SOMPO美術館蔵
高度経済成長が始まった1950年代後期に、東郷は明るい未来を夢見るだけでなく、失われたものに思いをはせる物悲しい表情をした女性を多く描きました。
神秘的な東郷ならではの美人画にも注目です。
モダンボーイと呼ばれた東郷の「旅」をテーマとした本展。
油彩、素描、彫刻、デザイン、写真資料、そして東郷のコレクションなど!
これまで展示する機会の少なかった収蔵品約140点が、紹介される展覧会です。
お見逃しなく。
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本展の招待券を3組6名様にプレゼント!
〆切は1月4日23:59まで!
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開催終了
SOMPO美術館
※本展は【日時指定入場制】です。美術館ホームページより日時指定のオンラインチケットをご購入ください。
※新型コロナウイルス感染拡大防止対策が実施されています。
ご来館のお客様は、必ずこちらをご確認ください。
Editor | 静居 絵里菜
【編集後記】
本展は、一部作品の撮影が可能です!キャプションの上にあ「撮影可」というマークがあるので、そちらを参照にしてください(フラッシュ禁止です)。