展覧会レポート
2021.1.15
人々を魅了してきたきらきらの螺鈿
根津美術館にて展覧会開催中!
根津美術館にて、企画展「きらきらでん(螺鈿)」が開催中です。
樹下人物螺鈿硯屏(じゅかじんぶつらでんけんびょう)
木胎漆塗 中国・元~明時代 14~15世紀 根津美術館蔵
螺鈿(らでん)は、貝のきらきらの部分を切り抜き、はめこんだり貼り付けたりする装飾技法のことで、夜光貝やあわび貝をなどが使用されます。
貝の真珠層は、光の加減や視点によってさまざまなグラデーションを見ることができ、その美しさは古来より多くの人々を魅了してきました。
本展では、根津美術館の所蔵品を中心に、日本における螺鈿の歴史をたどりながら、アジア圏の螺鈿技術も紹介します。
独自に花開いた日本の螺鈿技術
螺鈿技術は大きく、加工された貝の厚みによって「厚貝法」「薄貝法」の2種類に分けられます。
中でも奈良時代に唐からもたらされた「厚貝法」は、日本の螺鈿技術の基本となりました。
重要文化財 桜螺鈿鞍(さくららでんぐら) 日本・鎌倉時代 13世紀 国(文化庁保管)
こちらは黒漆地に厚めの夜光貝で、満開の山桜が表された螺鈿鞍(らでんぐら)。華やかな美術品が数多く残る中世の時代のものです。
螺鈿鞍※は『平治物語』などの軍記にも登場しており、当時の武将の美意識を垣間見ることができます。
螺鈿鞍のような高度な技術を用いた品物は、本家・中国への贈答品としても使用されたほど。日本の螺鈿技術は、独自の展開を広げていきました。
※鞍(くら)とは、乗馬の際に使用する馬具の一種のこと。
琉球の螺鈿
琉球王国は、螺鈿に使用される夜光貝の主要産地でした。
中国への貢物としても制作されていた琉球螺鈿は、朱い漆地を用いた朱螺鈿や、金・銀箔を施した箔絵螺鈿など、多彩な技術が特色です。
鳳凰巴紋螺鈿小椀 1口 木胎漆塗 琉球・第二尚氏時代 16~17世紀 個人蔵
こちらは王国内で祭祀に使用された器の一種です。ふたの裏には「天」という文字が刻印されており、王族が使用したと考えられる道具に刻まれています。
王族も使用した琉球の螺鈿は、その優れた技術で、日本の徳川将軍家等への献上品にもなりました。
李朝螺鈿と日本
16~17世紀、朝鮮時代(李朝)の螺鈿器がもたらされたことにより、日本の螺鈿技術、デザイン性に大きく変わります。
李朝の螺鈿は、遊び心のある牡丹唐草文や、あわび貝を使用して、あえてひびを魅せる「割貝法」などが特徴です。
桜花螺鈿椀 木胎漆塗 日本・桃山時代 17世紀 個人蔵
桜花螺鈿椀は、茶人である織田有楽(おだ うらく)が鎌倉・明月院に寄進したとされる椀で、桜花が描かれた部分は、割貝法が施されています。
李朝螺鈿の明快なデザインは、日本の螺鈿にもどんどん取り込まれていきますが、日本ならではのアレンジを加えているのも見どころです。割貝法も、ぜひ間近で鑑賞してみてください。
江戸の螺鈿も百花繚乱
近世になると、武士や裕福な町人の登場、西洋人との交わりなどにより、高価な品物の需要が大きく拡大します。
江戸時代の螺鈿は技術だけでなく、その大胆な華やかさに目を奪われます。
秋草蒔絵硯蓋 木胎漆塗 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館
秋草蒔絵硯蓋は、秋草であるキキョウに贅沢な螺鈿を施しています。硯蓋(すずりぶた)は、硯箱のふたが独立して単独の器になったものです。
需要層の拡大で、これまで以上にバリエーションが広がった螺鈿。‟螺鈿”と言っても形や使い方までさまざまで、多彩な展開を楽しめます。
日本における螺鈿の歴史を、貴重な作品群を通して通覧できる本展。
根津美術館は、新型コロナウイルス感染拡大防止策の一つとして、すべての入館者を対象とするオンラインによる日時指定予約制を行っています。
ご来館前日までにオンライン日時指定入館券をご購入ください。
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Editor | 三輪 穂乃香
【編集後記】
実物をいろんな角度から観るのが、めっちゃ楽しいです。きらきらでん☆っていう名前も、好きです。