展覧会レポート
2021.2.26
日本近世美術から現代アートまで!
未公開の新収蔵作品を一挙公開
アーティゾン美術館にて「STEPS AHEAD: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」が開催中です。
「1.藤島武二の《東洋振り》と日本、西洋の近代絵画」展示風景
印象派や日本近代洋画などを中心に、多くの美術品を所蔵しているアーティゾン美術館。
2020年に新しくオープンし、20世紀初頭から現代までの作品や、日本近世美術にまで幅を広げてコレクションしています。
本展は、未公開の新収蔵品92点を中心に構成。アーティゾン美術館所蔵の、優品の数々を紹介します。
見どころ①
キュビスムの画家たち
20世紀初頭におこった重要な芸術運動であり、抽象絵画の誕生に関わったキュビスム。アーティゾン美術館では、新たにキュビスムの作品も多く収蔵しました。
「2.キュビスム」展示風景
メッツァンジェは、戦争などの社会動乱のなかを生きながら、アメリカにキュビスムを広めました。
《円卓の上の静物》(写真右)は、第一次世界大戦が終わり、キュビスムが新たな展開を模索していた時期の作品で、幾何学的な線などのキュビスム的手法を用いながらも、主題や画面構成は伝統的なものになっています。
アメリカの個人コレクションで長いあいだ秘蔵されており、展示の機会は今回が初めてだそう!お見逃しなく。
見どころ②
抽象表現主義の女性画家たち
抽象表現主義は、戦後アメリカ・ニューヨークで発生した前衛芸術運動です。多くのヨーロッパの画家たちが戦禍を逃れるためにアメリカへ亡命し、前衛芸術の拠点はアメリカへと移っていきました。
「5.抽象表現主義の女性画家たちを中心に」展示風景
《無題(闘牛)》(写真中央右)は、画家であり、美術批評家でもあった、エレイン・デ・クーニングの作品です。
メキシコで闘牛を見て衝撃を受けたエレインは、横長のキャンバスに鮮やかな色彩と、荒々しい筆づかいで怒り狂う雄牛を表現した作品を制作しました。
印象派などの閉鎖的だったグループとは対照的に、抽象表現主義では、多くの女性画家たちが活躍しました。
見どころ③
オーストラリア先住民による芸術
アーティゾン美術館のコレクションでも注目したい、オーストラリア先住民によるアボリジナル・アート。
オーストラリア大陸に住む先住民は、何万年も前から芸術活動を通して文化と伝統を受け継いできました。しかし、ただ伝統を大切にするだけでなく、常に新しい表現をとり入れている大胆さも特徴です。
「10.オーストラリア美術-アボリジナル・アート」展示風景
《四人の射手》(写真左)は、マンドゥワラワラの母の故郷アーネムランド地方にある、4つの赤い風化岩を表現しています。
岩のひとつの頂上では、この土地の守護霊である鷹が、目を鋭く光らせます。
アボリジナル・アートは、祖先から受け継がれてきた大地とのつながり、そして生まれた場所の伝統への尊敬のまなざしを創造力豊かに表現します。
編集部のお気に入りは?
マティスのドローイング6点も新たにコレクションされました。
20世紀を代表する画家、アンリ・マティスは、同じテーマをさまざまな手法で描き続けたこと、そして優れたドローイングを制作したことでも知られます。
「13.アンリ・マティスの素描」展示風景
《ジャッキー》(写真左)は、マティスの孫娘を描いたもので、愛する孫娘の愛らしい表情を勢いのある筆づかいで一気に描きあげています。
マティスは伝統的なデッサンの手法ではなく、モデルを前にしたときに内面に沸き起こる感情を大事にしました。
未公開作品はもちろん、館が誇る名品200点以上を展示する本展。
さらに前進を続けるアーティゾン美術館の「今」を堪能してみてはいかがでしょうか。
また、本展は日時指定予約制です(ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ、美術館窓口でも当日チケットを販売)。
詳しくは公式サイトをご確認ください。
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Editor | 三輪 穂乃香
【編集後記】
毎度のことですが、出展数がすごい!見ごたえばっちりです