展覧会レポート
2021.3.16
英国の風景画家・コンスタブル
テート美術館から35年ぶりに来日
三菱一号館美術館にて「テート美術館所蔵 コンスタブル展」が開催中です。
展示風景
ジョン・コンスタブルは、19世紀イギリスの画家です。
同年代のイギリス人画家であるターナーが絶えず各地を旅して、国内外の景色を描いたのに対して、コンスタブルは自身の生活や環境と結びつく場所をひたすら描きました。
日本で35年ぶりとなる本展では、コンスタブルの優品を多く収蔵するテート美術館(イギリス)から、大型の風景画や肖像画などの油彩画、水彩画、素描およそ40点にくわえて、同時代の画家の作品約20点が来日。
国内所蔵の秀作を含む全85点を紹介します。
2作品がロンドン以外で初めて競演!
《ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)》は、ロイヤル・アカデミー展において、ターナーの《ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号》と並んで展示されました 。
左:J.M.W.ターナー《ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号》
1832年、油彩/カンヴァス 東京富士美術館蔵
右:ジョン・コンスタブル《ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)》
1832年発表、油彩/カンヴァス テート美術館蔵
ターナーは寒色系の自身の海景画が、暖かい色彩を散りばめたコンスタブルの大型作品の隣に配されたことを知り、手直しの期間に、鮮やかな赤色の塊(ブイ)を描き加えて仕立てあげ、観客の視線を自作に引きつけようとしたそうです。
後日コンスタブルは、「ターナーはここにやってきて、銃をぶっ放していったよ」と述べたんだとか!
ライバル同士だった2人の作品が並ぶのは、ロンドン以外では初めてのこと。ぜひじっくり見比べてみてくださいね。
自然にもとづく絵画制作
1802年からコンスタブルは、太陽の下で自然を描き始めました。 油彩のスケッチに描き留めたのも、やはり、自身と関わりのある情景でした。
ジョン・コンスタブル《フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)》
1816-17年、油彩/カンヴァス テート美術館蔵
フラットフォード橋の脇から、コンスタブル家の製粉所を遠方にとらえた本作。
画家になるきっかけをくれたストゥーア川沿いの風景との別れを表した作品ともいえ、馬に乗る少年は、コンスタブルの少年時代そのものとみなすことができます。
19世紀初頭に、自然を前にして油彩画制作を行ったイギリス人画家は、コンスタブルだけではありません。ターナーをはじめとする同時代の風景画家の、屋外制作の油彩画もあわせて展示します。
海辺の街・ブライトン
病気の妻の療養のため、コンスタブルは1824年以降、海辺の町・ブライトンに何度も訪れます。 異国風のリゾート地のブライトンが気に入らなかった画家は、最初はひと気のない浜辺や、住人が少ない丘陵地帯の一角などを題材としています。
ジョン・コンスタブル《チェーン桟橋、ブライトン》1826-27年、油彩/カンヴァス
テート美術館蔵
しかし、ブライトンを描いたなかで唯一の大型作品《チェーン桟橋、ブライトン》には、荒天の下の波打ち際で、流行りの服を身にまとった観光客と昔ながらの漁師、古いものと新しいものの関係性を色彩や陰影によってドラマティックに表現しています。
本作は、ブライトンで制作したスケッチを利用して、ハムステッド(ロンドン)で描かれました。
後期のピクチャレスクな風景画と没後の名声
1829年、ロイヤル・アカデミーの正会員に選出され公的な評価を確立したことで、自由な題材を選ぶことができるようになったコンスタブル。
これ以降、過去に描いたサフォークやハムステッドの風景に再び取り組みはじめます。
ジョン・コンスタブル《虹が立つハムステッド・ヒース》1836年、油彩/カンヴァス
テート美術館蔵
《虹が立つハムステッド・ヒース》は、初期のように忠実に描いたものではなく、存在しない風車が書き加えられるなど、、想像力を駆使した絵画制作を行いました。
また、死後の評価に思いをはせた晩年のコンスタブルは、主要作品の版画集の出版や、ロイヤル・アカデミー美術学校での指導、夏季展覧会の選考委員会に加わるなど、画壇の重鎮としての役割を果たしました。
コンスタブルが表現した、鮮やかでどこか懐かしい風景画の世界を紹介する本展。
テート美術館はもちろん、日本国内で所蔵される名品も出展されます! この機会をお見逃しなく。
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本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は2021年4月11日23:59まで!
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テート美術館所蔵
コンスタブル展
2021.02.20~2021.05.30
開催終了
三菱一号館美術館
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Editor | 三輪 穂乃香
【編集後記】
イギリスの曇り空の再現がすごいです!(笑)