展覧会レポート
2021.8.2
冨嶽三十六景から本展初公開の版まで
すみだ北斎美術館の集大成です!
すみだ北斎美術館にて、特別展「THE北斎 ―冨嶽三十六景と幻の絵巻―」が開催中です。
葛飾北斎は江戸時代後期に活躍した浮世絵師です。その繊細かつ大胆で独創的な表現は、現在も世界中のアーティストに大きな影響をあたえ続けています。
本展は、だれもが知る「冨嶽三十六景」から、すみだ北斎美術館開館記念で100年ぶりに発見され話題となった肉筆絵巻「隅田川両岸景色図巻」を中心に、北斎の輝かしい仕事の数々を紹介し、また「四面版木火鉢」の初公開など見どころの多い展覧会です。
「冨嶽三十六景」「諸国瀧廻り」「諸国名橋奇覧」の全作品が展示!
会場に入ると、北斎の代表作である三大錦絵シリーズが出迎えてくれます。
錦絵シリーズは、前期と後期で作品の入れ替えもおこなわれ、それぞれの全作品が展示されます。代表的な連作を一望できる貴重な機会です。
いずれも葛飾北斎「冨嶽三十六景 山下白雨」1831年
すみだ北斎美術館蔵(前期展示)
富士山をめぐる風景を描いた人気シリーズ「冨嶽三十六景」の展示は特に充実。前期展示では、「冨嶽三十六景 山下白雨」は摺り状態が違うものや、絵柄の一部が違う本展初公開の変わり図も展示されています。
葛飾北斎「諸国瀧廻り」シリーズ いずれも1834年頃
すみだ北斎美術館蔵(前期展示)
「諸国瀧廻り」は日本各地の滝を、「諸国名橋奇覧」は日本各地の橋を描いたシリーズです。それぞれモチーフは、名前通りの名所もあれば、マイナーな場所、現存していない場所も描かれています。
卓越した描写力はもちろん、北斎独自の審美眼を垣間みることができます。
葛飾北斎「諸国名橋奇覧 足利行道山くものかけはし」1834年
すみだ北斎美術館蔵(前期展示)
本展にて初公開! 四面版木火鉢
〈葛飾北斎「桜に鷹」ほか 四面版木火鉢〉年代未詳
個人蔵、すみだ北斎美術館寄託(通期展示)
今回の展示品の中でも注目なのが、昨年新発見された版木「四面版木火鉢」です。前期では、その中の一面を使って製作された、錦絵「桜に鷹」も同時展示されています。
なぜ錦絵の版が重厚な火鉢に生まれ変わったのでしょうか? これらの版は材質に使われた木が高品質かつ、絵柄が彫刻としてもデザイン性に優れていました。そのような背景から、火鉢として再利用したのではないかと考えられています。
四面版木火鉢をのぞく北斎の版木は現在、アメリカのボストン美術館に1枚収蔵されているのみで、当時の版木が現存しているのは非常に珍しいそうです。
大胆かつ精細な彫りからは作品と同様、北斎と彼が生きた時代の息づかいが伝わってくるようです。時を超えたロマンを感じてしまいます。
戯作家との友情が生んだ隅田川両岸景色図巻
葛飾北斎「隅田川両岸景色図巻」1805年
すみだ北斎美術館寄託(半期巻替え)
展示の最後を飾るのは「隅田川両岸景色図巻」。両国橋から新吉原に向かう隅田川周辺の名所を描いた、全長約7mにもおよぶ北斎肉筆の絵巻です。こちらは約100年間行方不明になっていた作品でもあります。2015年に墨田区が取得、すみだ北斎美術館の所蔵となり、話題になりました。
作品には、戯作家の烏亭 焉馬(うてい えんば)の書いた狂文(*)が添えられています。彼は「隅田川両岸景色図巻」の注文主であり、北斎とは友人としても親しい関係にあったそうです。
*狂文・・・江戸中期から明治初期まで盛んに行われた、こっけいで風刺的な文章のこと。
長くて大きい壁面ケースいっぱいに展示されたようすは圧巻! 隙がないながらも、のびのびとした肉筆画は時間を忘れて観入ってしまうでしょう。
こちらも前期と後期で、前半から後半に巻替え、その全貌が展示されます。会期中何度も足を運びたくなってしまいそうです。
展示を楽しみつくすためのクイズも!
今回の展示では「THE 北斎 探してみよう」という鑑賞シートが用意されています。北斎作品のなかの見どころをクイズ形式で学べます。
会場入り口に置かれたシートを手に、だれでも挑戦することができます。浮世絵を観慣れていない人やお子さんでも楽しめます! 出口で答え合わせをするころには、より北斎の絵世界に親しむことができているはずです。
北斎の画業のベスト盤とも言える本展。
北斎ファンはもちろん、浮世絵にこれから触れてみたい人にも必見の展覧会です!
OBIKAKE gifts
本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は2021年8月9日23:59まで!
応募フォーム ※終了しました
★その他の展覧会レポートはコチラ
特別展「THE北斎 ―冨嶽三十六景と幻の絵巻―」
2021.07.20~2021.09.26
開催終了
すみだ北斎美術館
前期: 7月20日(火)~8月22日(日)
後期: 8月24日(火)~9月26日(日)
Writer | 日比生 梨香子
アートとサブカルチャーに関心があるフリーライターです。
【編集後記】
北斎のマスターピースの数々に圧倒される展覧会でした。
前期と後期の入れ替えもあり、何度も足を運びたくなります。