展覧会レポート
2021.8.5
浮世絵は当時どのように親しまれた?
三谷家コレクションから浮世絵の裏側を知る
千代田区立日比谷図書文化館にて「特別展 紀伊国屋三谷家コレクション 浮世絵をうる・つくる・みる」が開催中です。
展示風景
浮世絵は、日本を代表する芸術として世界中から広く知られています。
私たちも普段からテレビや本などで目にする機会が多いですが、江戸・明治時代の人びとが、浮世絵をどのように楽しんだかは、あまり想像したことがないのではないでしょうか?
本展では、「うる」「つくる」「みる」の3つのキーワードをもとに、浮世絵が人びとのささやかな娯楽品として、暮らしの中の貴重な情報源として親しまれていたことを紹介します。
江戸の浮世絵ショップ!
浮世絵を「うる」
浮世絵は、現代の本屋と近い絵草紙屋(えぞうしや)で販売されていました。
浮世絵のほかに、絵入り小説の草双紙、音楽芸能に関する本などが主な商品でしたが、江戸時代後期以降、色鮮やかな錦絵が主力商品となっていきます。
展示室には、当時の絵草紙屋の営業風景を再現したコーナーが設置されています!
展示風景
店先に並んだ華やかな浮世絵は人びとの目を引き、江戸時代後期には一枚20文程度(現在の500円前後)と買い求めやすかったことから、江戸の大人から子ども、江戸を訪れた旅人や武士など、幅広い層に購入されました。
通常、店ののれんには屋号が記されますが、本展示では「日比屋」の文字が!
遊び心ある展示、ぜひ江戸時代にタイムスリップしたつもりで楽しんでみてください。
職人とパトロンで「つくる」浮世絵
浮世絵というと、まず絵師の名前が思い浮かびますが、多くの人の手を経て完成します。
出版と印刷を行う版元に始まり、版下絵に描く絵師、版木を彫る彫師、紙を摺る摺師、そして財政的に支援するパトロンがここに加わることもありました。
展示風景
神田塗師町の商家・紀伊国屋三谷家の八代目当主・長三郎もパトロンのひとりでした。
長三郎は浮世絵づくりに積極的に参加し、下絵完成の段階から細かく絵柄の指示を出すこともあったそうです。
左:三代目歌川豊国《今昔忠孝家賀見 人形屋幸右衛門》大判 版下絵 弘化4~嘉永元年(1847~48)頃
右:三代目歌川豊国《今昔忠孝家賀見 幡随長兵衛》大判 版下絵 弘化4~嘉永元年(1847~48)頃
三代目歌川豊国《今昔忠孝家賀見 幡随長兵衛》は、鏡をモチーフにした枠の中に役者を描いたシリーズの版下絵です。
朱書きで「此二本のすじけし也。ほらずによろしく候」と記されており、眉間にある二本の線を消す指示が出されており、絵師とパトロンの浮世絵制作の具体的なようすをうかがえる興味深い展示となっています。
鑑賞するだけじゃない!
浮世絵を「みる」
戦国時代が終わって、平和な江戸時代を迎えると、どうせ移ろいやすい世であるならば、浮き浮きと人生を謳歌しようという人生観が広がります。
そうした世の中を背景に、移ろいゆく流行の風俗や話題を、時代の好みに合わせて描いたのが浮世絵でした。
展示風景
現代では芸術品として鑑賞される浮世絵ですが、江戸・明治時代の人びとにとって、浮世絵は鑑賞して楽しむものであり、最新情報を提供してくれるメディアでもありました。
歌舞伎役者の宣伝のための役者絵や、最先端のファッションがわかる美人画、人気の旅先を紹介する名所絵などバラエティに富んだ浮世絵は、流行に敏感な江戸っ子の心をつかんだのです。
浮世絵体験コーナーも!
展示を観たあとは、4色摺りの体験ができます。
版木にローラーでインクをつけ、バレン(摺り道具)で摺るという本格仕様!
浮世絵体験キット協力 草津宿街道交流館
おびかけ編集部も挑戦してみましたが・・・
なかなか上手にできました。
摺った浮世絵は、記念に持ち帰ることができますよ♪
質・量ともに豊かな紀伊国屋三谷家コレクション。
本展は前後期入れ替え展示となっています。
バリエーションに富む浮世絵の世界をのぞいてみてはいかがでしょうか?
OBIKAKE gifts
本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は2021年8月16日23:59まで!
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特別展 紀伊国屋三谷家コレクション
浮世絵をうる・つくる・みる
2021.07.17~2021.09.19
開催終了
千代田区立日比谷図書文化館 1階 特別展示室
※前後期で出品作を全点展示替え
前期 7月17日(土曜日)~8月15日(日曜日)
後期 8月18日(水曜日)~9月19日(日曜日)
Editor | 三輪 穂乃香
【編集後記】
パトロンコレクションということで、状態の綺麗なものばかりです!
こんな鮮やかなものが店先に並んでいたとは・・・江戸時代の人が羨ましい!