いわさきちひろ(左)と奥村まこと(右)
所蔵:ちひろ美術館(左)個人蔵(右)
〈わらびを持つ少女〉1972年
『あかまんまとうげ』(童心社)より
絵:いわさきちひろ
所蔵:ちひろ美術館
草花のスケッチ
絵:奥村まこと
個人蔵
青春時代に戦争を体験し、結婚も仕事も自分で選ぶことは難しかった時代、戦後自らの意志で仕事をし、愛する家族との生活をいとおしみながら、やさしいタッチの絵画で、日々の暮らしの大切さを伝えた、いわさきちひろ(1918~1974)。
ちひろより12年遅れて生まれた奥村まこともまた、女性建築家の草分けとして日々の暮らしからの発見を夫・奥村昭雄氏とともに住宅の設計に生かしました。
1966年にいわさきちひろは、黒姫高原に児童文化村を構想した信濃町町長の松木重一郎招聘で、黒姫に山荘を構えます。その設計を交流のあった、川井千恵子(編集者)の紹介で、奥村まことに依頼します。
奥村まこと(1930~2016)は練馬区に生まれ育ち、自由学園を経て建築家となった女性です。彼女は、女性として初めて東京藝術大学の建築科に入学し、卒業後、恩師である吉村順三の設計事務所に入所します。建築科の先輩であった奥村昭雄と結婚した時には、夫婦間のとりきめを「憲法ノート」に記し、夫婦ともに同じ人間として生活ができるよう、ルールをつくりました。1972年に吉村事務所を退所し、独立しますが、それまでにも吉村事務所の仕事とは別に単独でも設計の仕事をうけており、1966年にいわさきちひろの黒姫山荘の設計、そして、1970年にはちひろの上井草の家の増築も担当し、ちひろが亡くなったために使うことはありませんでしたが伊豆のアトリエを、1974年所員と共同設計しています。特に長野県の黒姫山荘は、ちひろにとって、春から秋は「野花亭(やかてい)」、冬は「雪雫亭(せっかてい)」と呼ぶ、特別な場所でした。東京の日常の雑事から離れ、創作に専念ができたこのアトリエで、ちひろは宮沢賢治の『花の童話集』(童心社)や岩崎京子が文を書いた『あかまんまとうげ』(童心社)などの代表作を描いています。
生活の一部が仕事であるというふたりの共通点は、結婚、子育てをしつつ自立した女性の先駆けであるということ。まことは、設計活動を通して、ものの本質を探究し、一方のちひろは、子どもへのまなざしを通して、豊かな自然と世界の平和の継続を願いました。
本展では、自らの日常や暮らしを大切に楽しみながらも仕事を存分にしたふたりの女性と生き方にフォーカスし、ふたりの接点である「黒姫山荘」や伊豆のアトリエ、まことの拠点である練馬での暮らしを起点にふたりの仕事と生活への想いが見える資料、ちひろのピエゾグラフ作品などを「ことば」や「スケッチ」とともに展示します。
そこからは、女性として、そして人間としての積極的なそれぞれの生きざまが感じられることでしょう。
いわさきちひろと奥村まこと・生活と仕事
2022.06.03~2022.09.08
開催終了
10:00~18:00
(土曜・最終日は17:00まで)
日曜・祝日、8月15日(月)~8月20日(土)
無料
ギャラリーエークワッド
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竹中工務店東京本店1F
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公益財団法人 ギャラリー エー クワッド