展覧会レポート
2019.8.20
現代アートと巨匠たちのセッション
ポーラ美術館初の現代アートの展覧会
絵画、彫刻など幅広いコレクションを所蔵するポーラ美術館。
開館以来、初めての現代アートの企画展「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」が開催中です。
2002年、箱根に開館したポーラ美術館。西洋絵画、日本の洋画、日本画のほか、東洋陶磁やガラス工芸など総数1万点にも及ぶコレクションを所蔵しています。
本展では、ポーラ美術館が所蔵するモネ、セザンヌ、ピカソなどの巨匠たちの絵画・彫刻作品と、現代美術の第一線で活躍する12組のアーティストたちによるインスタレーションや映像、音、写真の作品を展示。
箱根の豊かな自然に囲まれたポーラ美術館は、建物の多くを地下に置き、森の中に溶け込むような形をしています。
編集部が特に気になった作品を紹介します。
展示は地下1階からスタート。セレスト・ブルシエ=ムジュノの《クリナメンv.7》が涼しげな音を立てて出迎えます。
水のうつろい モネ×セレスト・ブルシエ=ムジュノ
1961年フランス・ニースに生まれたムジュノ。音楽家として活動を始めました。作家活動の初期から、一貫して偶発性や複雑性に関心を寄せ、楽器や機械、生物を用いたインスタレーションを発表しています。
《クリナメンv.7》は、円形のプールに、大小の白いボウルが漂っている作品。偶発的に奏でられる音色と、水の流れによって絶え間なく移り変わる光景は、モネの《睡蓮》に描かれた水面のきらめきを共鳴するかのようです。
世界を見つける アンリ・マティス×ヴォルフガング・ティルマンス
ティルマンスは1968年、ドイツに生まれました。1980年代からファッション雑誌「i-D」などで写真を発表し、頭角を現しました。プリントを直接壁に留めた自由なレイアウトで、世界の複雑さや同時間性を提示するインスタレーションで知られる作家です。
(左から)ヴォルフガング・ティルマンス《フラワーヘッド》2001年 個人蔵 ©Wolfgang Tillmans
/ アンリ・マティス《室内の婦人》1941年 ポーラ美術館蔵
神秘の大地 ギュスターヴ・クールベ×アブデルカデル・バンシャンマ
展示は地下2階に続きます。入ってすぐ目を引く大型インスタレーションが。
アブデルカデル・バンシャンマによる《ボディ・オブ・ゴースト》です。
アブデルカデル・バンシャンマ《ボディ・オブ・ゴースト》2019年
©Abdelkader Benchamma, Courtesy of Galerie Templon, Paris
黒のインクで大胆かつ繊細に、変化に富んだ空間が作り出されています。
同時に展示されているのは、ギュスターヴ・クールベ《岩のある風景》。地殻変動の跡があらわな岩や、起伏ある土地をが画題に求めて森を探検した画家です。
声のかたち 東洋陶磁×オリヴァー・ビア
ビアは1985年、イギリス・ケントに生まれました。展示されている作品は《悪魔たち》。紀元前3000年から21世紀まで、古今東西のさまざまな「器」にマイクを設置し、それらの内側で反響する音を増幅させる、というユニークな作品です。
エトルリアの陶器や、コンゴの仮面からティーポットまで。さまざまな「器」の奥底でかすかに響く「声」をマイクで捉えます。そのオーケストラのように重なり合う音は、不思議なものです。
オリヴァー・ビア《悪魔たち》(部分)
「シンコペーション」とは音楽の手法で、リズムを意図的にずらし、楽曲に表情や緊張感を与えることを指します。現代の作家による、インスタレーションや映像、音や写真などの多様な表現と、過去の巨匠たちの作品がシンコペーションし、また新しいかたちで鑑賞できる展覧会でした。
美術館をぐるっと一周できる森の遊歩道では、スーザン・フィリップスが野外展示も紹介。こちらもお見逃しなく。
information
会場名:ポーラ美術館
展覧会名:シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート
会期:2019.08.10〜2019.12.01
開館時間:9:00〜17:00(最終入館は16:30)
料金:大人1,800円、65歳以上1,600円、大高生1,300円、中学生以下無料
展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/631/
◎チケットプレゼント
2019年9月19日(木)23:59まで受付!
たくさんのご応募、お待ちしています。
Editor | 静居 絵里菜
【編集後記】
オススメは《クリナメンv.7》。涼しい音と静かな空間の調和が、心地よかった!