展覧会レポート

「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶」展

2019.9.20

しびれる美濃焼の展覧会です。

 

桃山時代、岐阜県の美濃(現・岐阜県東濃地方)では、斬新なデザインの「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部」が大量に焼かれ、流行しました。

個性的な美濃焼の造形美を紹介する展覧会が、サントリー美術館で開催中です。

 


重要文化財《織部松皮菱形手鉢》桃山時代 17世紀 北村美術館蔵

 

桃山時代に美濃で焼かれた「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部」。

力強い形とカラフルな色彩、斬新なデザインをもつ美濃焼は、それまでの六古窯(*)を主産地とする「土の焼き締め陶器」というモノクロームな世界から脱却し、大いに流行します。

*六古窯(ろくこよう):中世から現代まで生産が続く代表的な6つの産地(越前・瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前)の総称。

 

「第1章 美濃における茶陶創造」では、「姿を借りる」「描く」「歪む」「型から生まれる」などのキーワードを元に、美濃焼の造形美が紹介されます。

 

 

志野焼は、「もぐさ土」と呼ばれる白土で作った器に、「志野釉(しのゆう)」とも呼ばれる白い釉薬(ゆうやく)をかけて焼いたもの。

 

白地の器には筆で自由な絵が描かれ、志野焼の誕生により日本で初めて「絵のあるやきもの」が創られました。

 

《志野果樹文鉢》は、ふちを四弁の花弁形に象った鍔縁(つばぶち)の大鉢です。うつわの内側には、花と実を付けた桃の木、縁には群れて飛ぶ千鳥が描かれています。

 

(手前)《織部南蛮人燭台》桃山時代 17世紀 サントリー美術館蔵

(奥)《南蛮屏風》江戸時代 17世紀 サントリー美術館蔵(10/21まで展示、10/23〜11/10は重要文化財《南蛮屏風》伝 狩野山楽 桃山時代 17世紀 を展示予定)

 

《織部南蛮人燭台》は、奥の南蛮屏風の中の南蛮人を立体化したような作品。上着と籠を緑釉で彩り、その他部分は長石釉で白地とし、頭部に鉄絵で絵付けがされています。

 

 

美濃焼の魅力は、なんといってもこの鮮やかな色彩と、器の中に描かれた絵。

タヌキの置きもので有名な信楽焼や、陶器をコーティングする釉薬をつけない備前焼など、桃山時代の主力なやきものと違い、装飾性の高いものです。

 

続く「第2章 昭和の美濃焼復興」では、近代以降、高い評価を得るようになった美濃焼を紹介。さらに、美濃焼の美に挑んだ陶芸家の作品も展示されています。

 

 

加藤唐九郎(1897-1985)は、桃山時代の美濃焼の再現を目指し、独自の作風を展開した陶芸家です。

 

黄瀬戸(きせと)とは、桃山時代につくられた黄色のやきもののこと。唐九郎は、桃山の美意識を現代に反映し、独創的な作品を制作しました。

 

美濃焼の魅力が詰まった本展覧会。ミュージアムショップでは、家でも楽しめる美濃焼グッズも販売されています。

 

 

information

会場名:サントリー美術館

展覧会名:「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶」展

会期:2019.09.04〜2019.11.10

開館時間:10:00~18:00
※金・土および9月22日、10月13日、11月3日は20:00まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで

料金:一般 1,300円、大学・高校生 1,000円、中学生以下無料

展覧会詳細ページ:

https://obikake.com/exhibition/303/

Editor  静居 絵里菜

【編集後記】織部焼が好きなので、幸せでした。

 

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