展覧会レポート

住友財団修復助成30年記念
文化財よ、永遠に

2019.9.30

伝統の技と、最先端の科学で蘇った文化財たちを紹介。

 

公益財団法人住友財団では、これまでに1000件を超える国内外の文化財修復事業に対して、助成を行ってきました。

 

本展覧会は、助成によって修復された一部の文化財を泉屋博古館分館(東京)のほか、東京国立博物館(東京)、泉屋博古館(京都)、九州国立博物館(福岡)の4館で同時期に開催されます。

 

 

泉屋博古館分館では、伝統の技術と最新の科学によって修復された国宝や重要文化財を含む、絵画、工芸品など約50点を展示(途中展示替えあり)。文化財本来の美しさを、後世まで残す最新の技術について紹介します。

 

(左から)港区指定文化財《五百羅漢図》のうち第三十六幅「六道 人」/港区指定文化財《五百羅漢図》のうち第二十九幅「六道 畜生」/港区指定文化財《五百羅漢図》のうち第二十七幅「六道 鬼趣」 いずれも、狩野一信筆 江戸時代 嘉永7年〜文久3年(1854〜63)東京・増上寺蔵

 

 

本展のメインビジュアルにも使われている《五百羅漢図》。鮮やかな色彩が目を引く作品。幕末に活躍した絵師、狩野一信(1816-1863)が96幅描き、残り4幅を妻と弟子が補作した超大作です。本展では、全100幅のうち修復した10幅が展示されます。

 

10幅すべてに、裏側から彩色する「裏彩色(うらざいしき)」がほどこされていました。また、雲煙や月の部分には裏箔がほどこされ、絹目を通してかすかに発光する工夫も。修復時の分解によりわかったことです。

 

ところで、掛軸の構造は知っていますか? 掛軸を保管するときくるくると巻く棒のことを、「軸木(じくき)」と言います。

 

絵や書が描かれた本紙の周囲には「表装裂(ひょうそうぎれ)」、本紙と表装裂などを補強する「裏打紙(うらうちがみ)」と呼ばれる和紙が貼られています。

 

分解していくと、和紙の他に絹など、複数の素材を使って作られていることがわかります。

 

(左)《比叡山真景図》池大雅筆 江戸時代 宝暦12年(1762)東京・練馬区立美術館蔵/(右)重要文化財《山水図》左から冬景、秋景 伝 蛇足筆 室町時代 15世紀 群馬県立近代美術館(戸方庵井上コレクション)

 

18世紀の京都で活躍した絵師、池大雅(いけの たいが)が描いた《比叡山真景図》。長らく所在不明の作品でしたが近年、小説家・五味康祐の旧宅から発見された作品です。

 

五味氏の書斎床の間に掛けられたままで、画面左上は水濡れなどによって汚れていました。

本作は裏打紙(うらうちがみ)を取り除いた後、汚れた部分を濡らし、移し取る作業を経て、本来の姿を取り戻しました。

 

普段、目にすることのない文化財修復現場に、スポットを当てた本展。開催館によって、テーマも展示される作品も異なります。もう一つの東京開催館である東京国立博物館では、仏像をメインに紹介されます。

 

 

information

会場名:泉屋博古館分館

展覧会名:住友財団修復助成 30 年記念「文化財よ、永遠に」

会期:開催中〜2019.10.27

開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
※10月11日(金)のみ 10:00~18:00(入館は17:30まで)

料金:一般 600(480)円、高大生 400(320)円、中学生以下無料
※( )内は20 名以上の団体料金

展覧会詳細ページ:

https://obikake.com/exhibition/340-3/

 

 

 

 

Editor  静居 絵里菜

 

 

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