展覧会レポート
2019.11.18
女性写真家としての挑戦
東京都写真美術館にて「山沢栄子 私の現代」が開催中です。
展示風景
山沢栄子は1899年大阪に生まれ、1920年代のアメリカで写真を学び、それから30年以上、日本における女性写真家の草分けとして活躍しました。
本展では、女性写真家のパイオニアである山沢栄子が、独自の芸術表現に到達した歩みを回顧するとともに、1920年代以降のアメリカ近代写真作家もあわせて紹介します。
ダイナミックな抽象写真シリーズ
山沢は、写真家として対象の配置と角度、光の回り方など、写真による造形の実験を重ね、「抽象(アブストラクト)写真」というスタイルに到達しました。
山沢栄子 左《What I Am Doing No.08》/右《What I Am Doing No.08》
1980(プリント1986)年 ともに銀色素漂白方式印画 大阪中之島美術館蔵
当時の日本では見られなかった、鮮やかなカラー写真〈What I Am Doing〉シリーズは、野菜や果物、自身の過去の作品など、身近な素材をモチーフとして、計算しつくされた画面をつくりだしています。
山沢の集大成とも言えるシリーズです。
写真家から芸術家へ 山沢の創造への軌跡
山沢栄子 写真集『遠近』より グラビア印刷
山沢は1962年に写真集『遠近』を出版しました。
収録作品のほとんどのプリントやフィルムは現存しておらず、写真集そのものが山沢の抽象表現の原点を示す貴重な資料と言えます。
戦後、ポートレート写真家となっていた山沢に、長らく自分の写真をつくる時間はありませんでしたが、1955年、写真の師であるコンスエロ・カナガに招かれ、NYに半年間滞在します。
その間、彼女の写真の方向性は写実から抽象へと向かっていくのです。
「写真家」としての山沢栄子
山沢は1931年、大阪のビジネス街に写真スタジオを開き、ポートレートの撮影を中心に、活動していました。
展示風景
アメリカ仕込みの技術が、財界人や文化人の評判を呼び、商業写真家として成功を納めます。
「商業写真」に「抽象写真」。山沢の仕事の幅広さがよくわかります。
晩年は車椅子での生活でしたが、創作の手を止めることなく、生涯第一線で活躍し続けた山沢栄子。
女性の生き方に強い関心を持ちつづけながらも、性別や年齢にとらわれない生き方に、見るものも励まされます。
Information
展覧会名:山沢栄子 私の現代
会場:東京都写真美術館 3階展示室
会期:2019.11.21〜2020.01/26
詳細:https://obikake.com/exhibition/5771/
OBIKAKE gifts
本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は12月2日23:59まで!
Editor | 三輪 穂乃香