特集
2020.5.7
\アートビギナーにもっと美術について知ってほしい!/
そんな想いから、“今さら聞けない”美術用語について紹介する企画を考えました!
第1回は『印象派』について分かりやすくまとめてみました。もちろんおさらいとして読んでもOKですよ!
「印象派」ってなんだろう?
クロード・モネ《睡蓮》1906年 シカゴ美術館蔵
「印象派」とは、19世紀後半のフランス・パリで起こった芸術運動のことです。
家庭に飾ることができる小さなサイズで、教養がなくても感覚的に楽しむことができる作品は、当時の一般市民や振興ブルジョワジー(富裕層)の間で親しまれました。
色も鮮やかで、筆遣いもユニークなものが多い印象派は、現在でも人気の高い西洋絵画のジャンルの一つ。日本でも印象派の展覧会が開催されると、多くの人でにぎわいます!
「印象派」の主な特徴とは?
19世紀中頃フランスでは、「現実をあるがままに再現しよう」という写実主義が流行しました。その写実主義を受け継いだ印象派では、屋外での制作を重要視していました。
印象派の絵画は、明るい色彩を用いて、外の建物や人物などをふんわりと空気で包まれた“印象”として表現しているのが特徴です。
ポイント!屋外での制作活動
現在では絵の具がチューブに入っているのは当たり前ですが、18世紀中頃までの画家たちは、自分で鉱石などを粉砕し、絵の具を作っていました。
自作の絵の具は長期保存が効かないため、持ち運びがとても不便なものでした。チューブ入りの絵の具が誕生したのは1841年。チューブ入り絵の具登場により、それまで室内でしかできなかった色付け作業が、外でもできるようになり、画家たちのフットワークが格段に軽くなりました。
印象派の新技法!絵の具は混ぜない
印象派の画家たちが多用した技法に、絵の具をパレットの上で混ぜずに、そのままカンヴァスに置く技法があります。難しい言葉でこれを「筆触分割(ひっしょくぶんかつ)」といいます。
15世紀のルネサンス以降、パレットの上で絵の具を混ぜ合わせて色を作り、それをカンヴァスに塗るのが伝統的な画法とされていました。
しかし、モネやルノワールといった印象派の画家たちは「絵の具は、色を混ぜることで発色が悪くなる」という特徴をヒントに、チューブから出した絵の具を短い筆さばきでそのまま置き、まばゆい光の輝きを表現しました。
印象派の作品を見るときは、絵の具を置き方に注目してみてください!
まるでラクガキのような絵!?最初は酷評されていた「印象派」
1874年に「画家、彫刻家、版画家などによる共同出資会社 第1回展」(第1回印象派展)に、西洋絵画史の新しい区切りとなる作品が出品されました。
モネの《印象、日の出》です。クロード・モネ《印象、日の出》1873年 マルモッタン・モネ美術館蔵
《印象、日の出》は、フランス北西部ノルマンディー地方、ル・アーヴル港で見た夜明けの景色を瞬間的にとらえた作品です。
しかし、《印象、日の出》を見た批判家のルイ・ルロワは、「印象を描いただけの未完成な絵」と批評。「印象派」という言葉は、この作品が由来とされています。
画商の登場が印象派を有名にした!
印象派が誕生する4年前の1870年、フランスとプロイセン(現在のドイツ北部からポーランド西部)の普仏戦争が起こります。モネはこの戦争を避けるためにロンドンに渡ったことで、前印象派の風景画家ドービニーに、画商のデュラン=リュエルを紹介されます。
ブルジョワジーを相手に絵を売買する画商は、王侯貴族や教会がパトロンだった時代にはなかった職業でした。
ミレーなどバルビゾン派(*)の作品を扱っていたデュランは、直感で「次にブームを起こす絵は印象派である!」と思いました。
*バルビゾン派:自然や農民たちの生活にインスピレーションを受けた、芸術家グループのこと。フランスのバルビゾン村に集まったたことから「バルビゾン派」と呼ばれています。
翌年、デュランはすぐにモネの作品を購入し、その後も値段もつかない無名の印象派画家たちの作品を買い集めました。
画商と画家のタッグがなければ、印象派はヒットしなかったといわれています。
「後期印象派」とは?
印象派にはほかにも、「後期印象派」と呼ばれるジャンルがあります。
「後期印象派」は1880年代半ばから1890年代に登場し、印象派を超える新たな芸術を模索しました。
印象派の影響を受けながらも、それまでの即興的・感覚的に描く手法に変わり、構図の計算や、作品に内情を込めるなどのそれぞれのスタイルを模索しました。ゴッホやセザンヌ、ゴーガンなどが代表として挙げられます。
人気の高いルノワールのエピソード!
日本でも人気のあるピエール=オーギュスト・ルノワール。幸福に満ちた作風が特徴です。
そして彼の作品の中でも、ひときわ有名なのが《ピアノを弾く少女たち》です。
ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾く少女たち》1892年 メトロポリタン美術館蔵
本作はニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されていますが、同じ構図のものを、パリのオルセー美術館、オランジュリー美術館でも観ることができます。
もともと美術館から依頼されて描いたもので、構図の異なる「ピアノを弾く少女たち」が複数存在しています。
日本でも観れる場所はあるの?
実は印象派の有名な作品を日本で観ることができます。
オススメなのが、SOMPO美術館が所蔵するゴッホの《ひまわり》です。世界に7枚しか存在せず、1点は焼失、1点は個人所蔵なので、とっても貴重です!
フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》1888年 SOMPO美術館蔵
また、日本では印象派の人気がとても高いので、所蔵している美術館も多く、展覧会でも目にすることができますよ♪
OBIKAKE編集部のまとめ
ひとくちに「印象派」と言ってもさまざまな作風がある!
モネの連作《睡蓮》は200点以上存在するので、色々な場所で観れて楽しいですよ♪(三輪)
当時の画家たちがみた景色を、作品として鑑賞できるのがうれしいですね。
実物を観ると、その場にいるようなみずみずしさがあります!(静居)
発信元 | OBIKAKE編集部