展覧会レポート

生誕260年記念 北斎の肉筆画

― 版画・春画の名作とともに―

2020.4.15

葛飾北斎の40歳代~最晩年の肉筆画11点を一挙初公開!

ガレにも影響を与えた、北斎の魅力に迫る展覧会

 

岡田美術館で、「生誕260年記念 北斎の肉筆画 ―版画・春画の名作とともに―」が開催中です。

 

※新型コロナウイルス感染拡大防止ため、4月9日~4月23日まで臨時休館中。詳しい情報は美術館公式サイトをご確認ください。

 

 

世界的に有名な江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎(1760-1849)。2020年は北斎の生誕260年にあたる節目の年です。

 

岡田美術館に収蔵されている、40歳代から最晩年にいたるまでの肉筆画を中心に全11点を一挙初公開!北斎の名作である「夏の朝」などを中心に版画・版本、春画をあわせて全17点の北斎作品が紹介されます。

 

あわせて、北斎から影響を受けたフランスのガラス作家、エミール・ガレの作品も展示。さまざまな角度から北斎の画業に迫る展覧会です。

 

建築家ジョサイア・コンドルが愛蔵!貴重な屏風絵

 

 葛飾北斎《四季作図屏風》江戸時代後期 19世紀初頭 紙本墨画淡彩 6曲1双 岡田美術館蔵 全期間展示

 

四季の農村風景を描いた本作。ほのぼのとした農村の1年が描かれています。北斎の屏風絵自体、とても珍しいとされています。

 

本作は、明治・大正期に日本で活躍した建築家、ジョサイア・コンドル(1852-1920)が愛蔵していたもの。没後、デンマークのコペンハーゲンで秘蔵され、2007年に日本へ里帰りを果たしました。現在は岡田美術館が収蔵しています!

 

*ジョサイア・コンドル:三菱一号館や、ニコライ堂などを手掛けたイギリスの建築家

 

北斎美人画の二大傑作!

 

文化2年(1805)頃、人気絵師となっていた北斎は、「画狂人(がきょうじん)北斎」から「葛飾北斎」へと改名します。

 

この葛飾北斎期は、肉筆美人画の優品が多いことで知られています。中でも、今回展示されている「夏の朝」と「美人夏姿図」(個人蔵)は傑作と名高いものです。

 

 葛飾北斎《美人夏姿図》江戸時代後期 19世紀初頭 絹本著色 1幅 個人蔵 全期間展示

 

首を下へ曲げてうつむき気味に立ち、帯を締め直す美人の図。物憂げなその姿から、「物思う美人図」と題されてきた名品です。

 

何気ない日常の一瞬をとらえ、表情やしぐさによって女性の内面を表そうとする姿勢は、北斎より前に活躍している喜多川歌麿(?-1806)にも通じます。

 

 葛飾北斎《夏の朝》江戸時代後期 19世紀初頭 絹本著色 1幅 岡田美術館蔵 全期間展示

 

手鏡に顔を映し、身支度を整える女性を描いた作品です。画面右側に掛かっている、縞模様の男物の着物から、夫が寝ているうちに朝の支度をする奥さんであろうと考えられます。

 

「夏の朝」と「美人夏姿図」は、いずれも北斎美人画の分野で代表格で、古くから高い評価を得ています!

 

ガレにも影響を与えた北斎

 

エミール・ガレ(1846-1904)は、19世紀末に起こったアール・ヌーヴォーを代表するガラス作家です。

 

ジャポニスム(日本趣味)に興味を示していたガレの作品。しばしば日本の美術品に通じる部分を見出すことができます。

 

 (左)エミール・ガレ《菊に蝶文花器》1895年頃 被せガラス 1口 岡田美術館蔵/エミール・ガレ《菊に蝶文花器》(部分) 全期間展示

 

本作は、ジャポニスムの影響を受けた作品の代表例です。作品下部には、『北斎漫画』初編から引用した、蛙のモチーフが使用されています。

 

モチーフとなった『北斎漫画』の蛙は、ガレをはじめ欧米の作家たちの間で人気の動物だったといわれています。

 

 

喜多川歌麿「深川の雪」、高精細複製画「品川の月」「吉原の花」も公開!

 

 2階 展示室 展示風景

 

企画展に合わせて、2階の常設展示室には喜多川歌麿の名作「深川の雪」と、高精細複製画「品川の月」「吉原の花」が展示されています。

 

岡田美術館が収蔵する「深川の雪」は、江戸随一の芸者町である深川にあった、料亭のようすを表現したにぎやかな作品です。深川で活躍した辰巳(たつみ)芸者や、飲食を用意する女性たちが、生き生きと描かれています。

 

 喜多川歌麿「深川の雪」 江戸時代 享和2~文化3年(1802~06)頃 岡田美術館蔵 全期間展示

 

高精細複製画で展示されている「品川の月」と「吉原の花」はそれぞれ、フリーア美術館(アメリカ・ワシントンD.C.)、ワズワース・アセーニアム美術館(アメリカ・コネチカット州ハートフォード)に収蔵されています。

 

「雪月花」三部作と呼ばれる歌麿の大画面の肉筆画。いつか日本で3作すべてが揃って展示される日がくるといいですね!

 

北斎の名作が色鮮やかなチョコレートに!

 

岡田美術館のチョコレートブランド「Okada Mueum Cholate」の新作、「Okada Mueum Cholate『波と富士』」が、ミュージアムショップで販売中です!

 

 Okada Museum Chocolate 『波と富士』4,800円(税込)

 

北斎の生誕260年を記念し、代表作「冨嶽三十六景」の中から、同館収蔵の「神奈川沖浪裏」と「凱風快晴」をチョイスした本作。それぞれの作品の魅力が、チョコレートで表現されています!

 

奇才・北斎に迫った展覧会。大ボリュームの展示に圧倒されました!

 

 生誕260年記念 北斎の肉筆画 ―版画・春画の名作とともに― 展示風景

 

information

会場名:岡田美術館

展覧会名:生誕260年記念 北斎の肉筆画 ―版画・春画の名作とともに―

会期:2020.04.05〜09.27

※最新の開館情報は、必ず美術館公式サイトをご確認ください。

開館時間:9:00~17:00(※入館は閉館の30分前)

休館日:会期中無休

料金:一般2,800円、大学生2,800円、小中高生1,800円

展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/7085/

公式サイト:https://www.okada-museum.com

 

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