展覧会レポート
2020.6.5
若冲や国芳だけが「奇才」じゃない!
江戸時代の奇才絵師が江戸博に大集合
東京都江戸東京博物館で、特別展「奇才―江戸絵画の冒険者たち―」が開催中です。
展示風景
本展は、日本全国から斬新な表現に挑んだ「奇才」の絵師たちの作品を、京都・大坂・江戸、その他の地域である諸国の4つに分けて紹介。彼らの個性あふれる表現を一堂に楽しめる展覧会です。
ここでは、編集部が各地域ごとに絵師を厳選して紹介します♪
水墨画表現の可能性を広げた絵師! 伊藤若冲
(左から)伊藤若冲「隠元豆・玉蜀黍図」(写真は玉蜀黍図) 和歌山県・草堂寺蔵/伊藤若冲「鶏図押絵貼屛風」(左隻)個人蔵
伊藤若冲(いとう じゃくちゅう/1716-1800)は、現在では観光名所になっている、京都錦小路の青物問屋(*)「枡屋(ますや)」の長男として生まれました。
*青物問屋(あおものどんや):各地の野菜や生鮮食品を集めて小売(八百屋)に卸して販売させる流通業のこと。
「鶏図押絵貼屛風(にわとりずおしえばりびょうぶ)」には、それぞれ独立した鶏と野菜が描かれています。いずれも墨の濃淡、紙の地色を使い分けた羽の表現がすごい!ぜひ間近で観て欲しい一作です。
特に、濃い墨で力強く描かれている雄鶏(おんどり)の尾羽が印象的でした♪
ヘタウマがちょうどいい? 中村芳中
コロコロとした丸っこいフォルムが愛らしい、中村芳中(なかむら ほうちゅう/?-1819)の作品は、コアなファンに愛されています。
(左から)中村芳中「登城図」個人蔵/中村芳中「公卿観楓図」個人蔵
どちらの作品も、人物を後ろから描いたものです。特に右側の「公卿観楓図(くぎょうかんぷうず)」は、遠目だと公卿の後ろ姿が三角おにぎりにも見える愛らしさです。
一度観たらファンになること間違いなし! 大坂の絵師を集めたコーナーは、ゆるっとした作品が多く、癒されました。
北斎と同じ「画狂」と称した絵師 鈴木其一
続いては、江戸で活躍した絵師を紹介。やはり江戸の奇才といえば葛飾北斎ですが、今回は北斎と同じ「画狂」を名乗った、鈴木其一(すずき きいつ/1795・96-1858)に注目してみました。
(左から)鈴木其一「達磨図凧」個人蔵(兵庫県・滴翠美術館寄託)/鈴木其一「紅葉狩図凧」個人蔵(兵庫県・滴翠美術館寄託)
メインビジュアルにも使用されている其一の「紅葉狩図凧」。こちらの箱書きに「金杦邑(かなすぎむら)画狂其一筆」と自ら記しています。
中央の般若(はんにゃ)の面の後ろにあるクリスマスカラーの棒は、能楽で鬼などが持つ小道具、打杖(うちづえ)が描かれています。
恐ろしい鬼の目やツノなどには金泥(きんでい)が使用されており、空で輝き、ひときわ目を引いたと考えられます。
泥絵具による見事な色彩! 絵金
最後は京都や大坂、江戸以外で活躍した絵師を紹介。ここのコーナーも、とてもいい作品が多く、選ぶのに一苦労しました。
数ある作品の中でも、絵金(えきん/1812-1876)をピックアップ! 泥絵具(*)の力強い色彩に目が奪われました。
*泥絵具(どろえのぐ):胡粉(ごふん)を混ぜた安価な粉末状の絵具で、水に溶き泥状にして使用するもの。
(左から)絵金「伊達競阿国戯場 累」高知県・赤岡町本町二区蔵/絵金「東山桜荘子 佐倉宗吾子別れ」高知県・赤岡町本町二区蔵
「伊達競阿国戯場 累(だてくらべおくにかぶき かさね)」は、1778年に江戸・中村座初演の歌舞伎が舞台となっています。
怨念で醜い顔となった累(画面中央)が、赤い着物の女性・歌方(うたかた)姫と夫(累の左の人物)の仲を誤解して嫉妬に狂う場面が描かれています。
女の嫉妬はいつの世も恐ろしいものであることが、よーくわかる作品ですね・・・。
奇才の絵師たちが全国から大集合する本展。新型コロナウイルス感染症の関係で東京展では、当初展示が予定されていた浦上玉堂と神田等謙の2名が、パネル展示となっております。ご注意ください。
臨時休館中に展示期間終了となった作品も収録された本展の図録もおすすめ!
こちらはオンラインストアでも購入可能です。遠方にお住いの方は、ぜひこちらもご覧ください♪
information
展覧会名:特別展「奇才―江戸絵画の冒険者たち―」
会場名:東京都江戸東京博物館 1 階特別展示室
会期:2020.06.02〜06.21
※会期・開館時間が変更となりました。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。
開館時間:9:30~17:30(※入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日
料金:一般 1,400円、大学・専門学校生 1,120円、小学生・中学生・高校生・65 歳以上 700円
展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/9607/
展覧会公式サイト:https://kisai2020.jp
※感染症対策が実施されています。来館前に必ず展覧会公式サイトをご確認ください。
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Editor | 静居 絵里菜
【編集後記】図録はフルカラーで、読み応えバッチリ!作品ごとに解説がついているので、おうちで展覧会が楽しめます。