展覧会レポート
2020.7.28
日本の豊かでおいしい食文化!
浮世絵を通じて紹介する展覧会
森アーツセンターギャラリーで、「おいしい浮世絵展」が開催中です。
江戸時代後期、江戸文化が発展するとともに、人々は「食する」ことを人生の楽しみとして謳歌するようになりました。
本展では、浮世絵そのものの紹介とあわせて、江戸の豊かな食文化や、当時の料理書などを展示します。
四季を満喫する江戸っ子たち
日本の四季は、今も昔も変わることなく人々を魅了しています。
桜や梅雨、十五夜に雪など。変化する季節の中で、人々は「食」を楽しむことも忘れませんでした。
展示風景より、三代歌川豊国(国貞)《十二月の内 小春 初雪》虎屋文庫蔵
冬をテーマに描かれた《十二月の内 小春 初雪》では、焼き芋を売る店が描かれています。
当時の冬は、隅田川が凍ることもあったそう! 道を歩く人は、さつまいものあのほくほく感を求めたのでしょうね!
誰もが憧れた江戸のエンターテイメント!
江戸時代、庶民の心をつかんだ「歌舞伎」。
当時の歌舞伎は、上演時間が早朝から日暮れまでととても長く、お客たちは芝居小屋で菓子・弁当・すしなどを食べていたそうです。
展示風景より右、三代歌川豊国(国貞)
《ふき屋町市村座大入あたり振舞楽屋之圖》味の素食の文化センター蔵
こちらは、人気役者たちが楽屋でくつろぎ、お酒を楽しむ様子がにぎやかに描かれています。
歌舞伎に熱中する人々が、もっと役者のプライベートな姿も見たいと望むようになったことから、役者のオフの姿も描かれるようになりました。
彼らが実際にどんなものを食べていたのか、気になりますね。
おいしくて豊かな江戸の食卓
うなぎ、すし、天ぷら。どれも現代でも日本人が大好きなものですが、当時の江戸の人々にも広く愛されていました。
展示風景より右、歌川国芳《縞揃女辯慶(松の鮨)》味の素食の文化センター蔵
《縞揃女辯慶》(松の鮨)は、名店「松の鮨」のすしが描かれたものです。お皿には美味しそうな握りが盛られ、画面右下の子どもも待ちきれず、ねだっているようです。
私たちが今も慣れ親しむ「すし」。どんな味だったのか想像しながら浮世絵を楽しめます。
江戸の「名店」を味わう
江戸時代後期には、多くの料理屋が誕生しました。
有名浮世絵師による、人気の店を紹介するシリーズなどから、江戸の外食文化の発展を知ることができます。
展示風景より右、歌川広重《江戸高名會亭盡 両国柳橋 河内屋》
味の素食の文化センター蔵
『江戸高名會亭盡』は、江戸の有名な料理屋30店を取りあげたシリーズです。本作で描かれた河内屋では、隅田川を前に美しい風景を一望できました。
長旅のお楽しみも「食」!?
東海道が描かれたシリーズでもっとも有名なのが、歌川広重の『東海道五十三次』です。
その土地ならではのおいしいものを知ることができます。
展示風景より左、歌川広重《東海道五十三次之内 鞠子 名物茶店》
和泉市久保惣記念美術館蔵
《東海道五十三次》の20番目の宿場「鞠子宿(まりこしゅく)」を描いた本作(現在の静岡県)。
山々に囲まれた鞠子の名物は「とろろ汁」でした。松尾芭蕉もその味を俳句でたたえたそうです。
とても長い徒歩の旅、各地にある美味しいものが癒しだったのかもしれません。
江戸の「おいしい」がたくさんつまった本展。
展示室を出て同じフロア内にあるCafe THE SUNでは、江戸庶民の料理から着想を得た御膳や、浮世絵をイメージしたスイーツが楽しめます!
(※Cafe THE SUNのコラボメニューは9月4日(金)まで )
美味しそうでした!左上の巨大寿司が気になる!
「目」でも「舌」でも楽しめる、ユニークな展覧会です。
なお、本展では日時指定の予約制を導入しています。公式サイトをご確認のうえ、ご観覧ください。
Information
展覧会名:おいしい浮世絵展 ~北斎 広重 国芳たちが描いた江戸の味わい~
会場:森アーツセンターギャラリー
会期:2020.07.15〜2020.09.13
公式サイト:https://oishii-ukiyoe.jp/
※事前予約制
※感染症対策を実施しています。詳しくは、公式サイトをご確認ください。
★その他の展覧会レポートはコチラ
Editor | 三輪 穂乃香
【編集後記】
おなかが空いているときに行くと、辛い(笑)。