展覧会レポート
2020.9.25
激動の2020年から何気ない日常をすくう
原美術館 群馬に拠点を移す、品川での最後の展覧会
原美術館にて「光―呼吸 時をすくう 5 人」が開催中です。
城戸保 展示風景 Courtesy of the artists
本展は、今井智己、城戸保、佐藤時啓の3人のアーティストの写真を中心とする表現に加え、原美術館のコレクションから佐藤雅晴のアニメーションとリー・キットのインスタレーションが出品されています。
世界の情勢に翻弄された2020年。
慌ただしさの中で視界から外れてしまうものに眼差しを注ぎ、形にし続けている彼らの作品を通して、意識されぬまま過ぎ去るや、見過ごされてしまいそうな光景を、記憶に残しつつ、たどっていきましょう。
「突然の無意味」
城戸保「梅と小屋」2017年 Courtesy of the artists
城戸は、何気ない日常の風景の中で本来の役割や用途からズレた「もの」を捉え、「見ることやあることの不思議」を考察しています。
日常の延長線状に広がる色とりどりで豊かな世界を目にすることで、これからの日常の見方が変わるのではないでしょうか。
出品作の中には原美術館をモチーフにした作品もあります。探してみてくださいね。
「想定外」によって過去になっていく出来事
今井智己 展示風景 Courtesy of the artists
シリーズ〈Semicircle Law〉は、福島第一原発から30km圏内の数か所の山頂より、原発小屋の方向にまっすぐカメラを向け続けて撮影された作品です。
時とともに社会の記憶が薄れ、人々が新たな「想定外」に出合うことによって徐々に過去になっていく出来事へ視線を寄せています。
今回新たに原美術館から同方角をとらえた新作も加わりました。2011年の事故が2020年の今も延々と続くものであることを考えさせられます。
原美術館の40年をなぞる作品
佐藤時啓 左:「光―呼吸 Hanabi#4」、右:「光―呼吸 Hanabi#5」ともに2020年 Courtesy of the artists
佐藤時啓の作品は、いずれも品川の原美術館と群馬のハラ ミュージアム アークで撮り下ろした『光―呼吸』シリーズの新作です。
このシリーズでは、長時間露光を駆使し、風景の中をペンライトや鏡を持って歩き回り、光と自身の移動の軌跡をフィルムに定着させています。
両館と縁の深い佐藤が空間をなぞるように撮影することで、原美術館のこれまでの40年の時を振り返りながら、「原美術館 ARC」として生まれ変わるハラ ミュージアム アークの未来も想像させられます。
本展の終了とともに、原美術館は建物の老朽化に伴い閉館します。入場には予約が必要です、この機会をお見逃しなく。
Information
光―呼吸 時をすくう 5 人
会場:原美術館
会期:2020.09.19〜2021.1.11
公式サイト:http://www.haramuseum.or.jp/
※原美術館の入館には、ウェブサイトでの予約が必要です。詳細はコチラ
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Editor | 三輪 穂乃香
【編集後記】
無くなるのがとっても惜しい美術館です。いつでも脳裏で思い出せるように、目に焼き付けました!