展覧会レポート
2020.11.13
美しくて、あやしい? 日本の伝統的な昔話
挿絵や絵画で、わかりやすく紹介する展覧会
弥生美術館で、「奇想の国の麗人たち ~絵で見る日本のあやしい話~」が開催中です。
奇想の国の麗人たち ~絵で見る日本のあやしい話~ 展示風景より
日本人が長年語り継いできた昔話や伝説などを「伝承文学」といいます。
本展では、伝承文学をその物語にまつわる挿絵や絵画とともに紹介。
江戸時代の絵草子(えぞうし)や浮世絵の複写、明治から昭和初期に出版された雑誌の挿絵のほか、現代の画家の絵画など!
大人はもちろん、子どもも一緒に楽しめる展示になっています。
ここでは、本展の見どころをご紹介していきます!
「狐の嫁入り」が描かれた着物
こちらの着物は、「狐の嫁入り」と「玉藻の前(たまものまえ)」の物語を描いたものです。
奇想の国の麗人たち ~絵で見る日本のあやしい話~ 展示風景より
私たちが知る「狐の嫁入り」といえば、日中、空が晴れているのに雨が降り出す「天気雨」ではないでしょうか?
この話の元となっているのは、日本各地に伝わった怪異伝説である「狐の嫁入りの行列」だと、考えらえれています。
展示されている着物の裾のあたりをじっくり見てみると、生き生きしたキツネたちが描かれています。
「狐の嫁入りを描いた引きずりの着物」部分
田中翼/像 中川忠明/撮影 淡交社/協力
夜間、ちょうちんの群れを思わせる、無数の火の玉が見られたということから、「狐の嫁入りの行列」といわれたそうです。
美女の正体は・・・大蛇!?
女性の強烈な嫉妬を描いた悲恋の物語「安珍・清姫伝説(あんちん・きよひめ でんせつ)」に関する作品も展示されています。
「安珍・清姫伝説」とは、道成寺(どうじょうじ)にまつわる伝説のこと。
清姫は、旅の途中だという若くて美しいお坊さんである安珍に、宿を提供した家の娘です。
清姫は、安珍に一目惚れしてしまい、彼の後を追います。困惑した安珍は、清姫に「また帰りに寄るから」とうそを告げ、清姫から逃げてしまいます。
奇想の国の麗人たち ~絵で見る日本のあやしい話~ 展示風景より
「安珍と清姫」1920年代 橘小夢/画
うそをつかれたと知った清姫は激怒!
すぐに安珍のあとを追いますが、彼は日高川を船に乗って逃げていきます。清姫は彼に追いつくために、なんと「蛇」に変化します!
安珍は川の対岸にあった道成寺に逃げ込み、鐘の中に隠れますが・・・
蛇と変化した清姫は、安珍の隠れる鐘に巻き付き、口から火を吐いて、安珍を焼き殺してしまいました。
奇想の国の麗人たち ~絵で見る日本のあやしい話~ 展示風景より
(右)「日高川」2020年 加藤美紀/画 (左)「(仮)艶笑」1920年代 橘小夢/画
初公開作品の加藤美紀「日高川」は、日高川を泳ぎながら蛇に変身する清姫を描いたものです。
加藤はこの作品について、「安珍に裏切られた清姫の悲しみや絶望を表現したかった」と語っています。
赤と黒のまがまがしい雰囲気が、清姫の安珍に対する激しい恋心を表現しているようにも見えますね。
日本文学の母体?『今昔物語』とは?
奇想の国の麗人たち ~絵で見る日本のあやしい話~ 展示風景より
『今昔物語(こんじゃくものがたり)』は、平安時代に書かれた短編小説集です。
書き出しのほとんどが「今は昔」、つまり「今となっては昔のことだが」という意味の句で始まるため、この名前がついたと言われています。
本展では、1970年代に活躍した挿絵画家・田代光の原画を約10点が紹介されています。
ユーモアで、すこしずる賢い平安時代の庶民たちの生活を、今に伝える作品です。
地獄と極楽
奇想の国の麗人たち ~絵で見る日本のあやしい話~ 展示風景より
(左)「紫式部妄語地獄」 橘小夢/画 (右)「恵心僧都尊菩薩来迎」 橘小夢/画
こちらの屏風絵2点は、大正デカダンスの画家として人気の高い、橘小夢(たちばな さゆめ)の作品。
こちらも初公開となります。
「紫式部妄語地獄(むらさきしきぶもうごじごく)」と「恵心僧都尊菩来迎(えしんそうずそんぼさつらいごう)」は、一対の屏風に仕立てられた作品です。
「源氏物語」の作者として有名な紫式部に、「地獄」というイメージはありませんが・・・
実は、虚言で人びとの心を惑わせた罪により、地獄に落ちたと伝えられています。
挿絵と絵画とともに、あやしくて美しい日本の昔話を知ることができる本展。
入館には、オンラインによる事前予約(日時指定)が必要です。詳しくは、美術館公式サイトをご確認ください。
奇想の国の麗人たち ~絵で見る日本のあやしい話~ 展示風景より
information
展覧会名:
奇想の国の麗人たち ~絵で見る日本のあやしい話~
館名:弥生美術館
会期:2020.10.31〜2021.01.31
開館時間:10:30~16:30(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月・火曜日
※ただし11/3(祝火)、11/23(祝月)、1/11(祝月)開館、11/4(水)休館
年末年始(12/28~1/2)
料金:一 般 1,000円 /大・高生 900円/中・小生 500円
※竹久夢二美術館と二館併せてご覧頂けます。
※入館にはオンラインによる事前予約(日時指定)が必要です。詳しくは、公式サイトをご確認ください。
展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/12864/
公式サイト:http://www.yayoi-yumeji-museum.jp
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本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は11月25日23:59まで!
Editor | 静居 絵里菜
【編集後記】
人魚や鬼、またボーイズラブなどについての資料も、多数紹介されていました!日時指定制ですが、ぜひお近くの方は足を運んでみてください