展覧会レポート
2020.11.26
一度見たら忘れられない!
ベルナール・ビュフェの重厚な具象画の世界
Bunkamura ザ・ミュージアムにて「ベルナール・ビュフェ回顧展 私が生きた時代」が開催中です。
展示風景
ベルナール・ビュフェ(1928-1999)は、戦後フランスを代表する画家のひとりです。
控えめな色彩や、細く鋭い線の描写を特徴とする画風は、戦後フランスで一世を風靡しました。
本展はこの画家の作品世界を、「時代」という言葉をキーワードに、ベルナール・ビュフェ美術館(静岡県)が所蔵する油彩を中心とした約80作品で振り返ります。
なぜ戦後フランスで人気を博したのか?
ビュフェは具象画、つまり、実際に存在するものをはっきりと描いた画家ですが、当時のヨーロッパでは、それとは反対の抽象画が主流となっていました。
展示風景
しかし、彼の刺すような黒く鋭いクールな描写は、戦後のひとびとの不安や虚無感、当時フランスで流行していたサルトルの*実存主義やカミュの不条理の思想と呼応したのです。
ビュフェは人気作家となっていき、批判をされながらも自らの道を貫きました。
疫病の不安が重くのしかかり、多くの自然災害に翻弄される現在と、共通する部分があるのではないでしょうか。
*実存主義・・・・19世紀のヨーロッパにおいて誕生した、「生きる道を自分で切り開く、今ここにあるひとりの人間の現実存在(=実存)としての自分のあり方」を求める思想のこと。
パリコレへ影響を与えた?神秘的な妻
ビュフェは、彼の妻・アナベルを作品に繰り返し登場させています。
大きな瞳に長い手足、そして中性的でエキセントリックな雰囲気を持っていたアナベルは、ビュフェに大きなインスピレーションを与えました。
展示風景より左、ベルナール・ビュフェ《カルメン》1962年
1963年春夏のパリコレで発表されたとあるシルエットは、「ビュフェの人物画からの影響がある」と、ファッション業界で話題になりました。
「人は愛する女性の中に、いつだって何かを発見するものだ」とビュフェは語っています。舞台『カルメン』の衣装デザインを依頼された際に描いた作品《カルメン》にも、アナベルの面影が感じられるようです。
ビュフェ作品とは思えない、写実的な作品
ビュフェは1973~76年にかけて、北フランスの城に閉じこもり、それまでの独創的な画風とはまったく違った写実的な風景や静物を描きます。
展示風景より右《花》1974年
これらのアカデミックな作品は、批評家たちをとても驚かせました。
この後も写実的な作品は描き続けますが、彼の心の孤独が消えることはありませんでした。
今もパリに残る美しい風景も
パリのセーヌ左岸、カルチェ・ラタンと隣接するサンジェルマン地区は、知識人や芸術家が集まる街として広く知られていました。
展示風景より左、《サン=ジェルマン=デプレ》1971年
《サン=ジェルマン=デプレ》の画面左に描かれたカフェは、なんとBunkamuraにも支店があるドゥ マゴ パリ! サルトルやカミュなど、フランスの名だたる文化人たちが通いました。
ビュフェが学んだ美術学校もこの付近にあり、彼にとって特別な場所だったのです。
おなじみドゥ マゴ パリでの限定メニューも!
鑑賞後は、パリに思いをはせたティータイムを過ごすことができます。
左:アイスカフェモカ 1,000円、右:ブラック・ベルベット(アルコール)1,400円
エスプレッソの苦味とチョコレートの甘さが調和したカフェモカや、ビュフェの《ピエロ》をイメージしたカクテルなど! 展覧会の余韻を楽しんでみてはいかがでしょうか。
ベルナール・ビュフェが生きた時代とその作品をあますことなく紹介する本展。
お出かけの際は、オンラインチケットがオススメですよ♪
Information
ベルナール・ビュフェ回顧展 私が生きた時代
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:2020.11.21〜2021.01.24
公式サイト:https://www.bunkamura.co.jp/
※1/9以降の土日祝のみ入場日時予約制
※新型コロナウイルス感染症対策のため、ご来館前にお客様へのお願いと当館の取り組みを必ずご確認ください。
※オンラインチケットはコチラ
OBIKAKE gifts
本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は12月13日23:59まで!
★その他の展覧会レポートはコチラ
Editor | 三輪 穂乃香
【編集後記】
Bunkamuraのかっこいい展覧会!
色があまりない暗い作品から、時代を追うごとに色彩豊かになっていく情熱的な構成が楽しいです。
見覚えのあるパリの風景もあって、なんだかビュフェへの親近感が湧いてます。