展覧会レポート
2020.12.22
初期から現代までの作品を展示
かわいらしい自作のおもちゃにも注目です!
渋谷区立松濤美術館で、「舟越 桂 私の中にある泉」が開催中です。
舟越桂《水に映る月蝕》2003 作家蔵
舟越桂(ふなこし かつら/1951–)は、現代日本を代表する彫刻家です。
東京藝術大学大学院在学中、函館のトラピスト修道院から聖母子像制作の依頼を受けたことをきっかけに、本格的に木彫での人物像の制作を開始しました。
本展では、初期から現代までの代表的な彫刻作品のほか、ドローイングや版画、何かを思うたびに書き留められるメモ、自作のおもちゃや小物などを展示。
舟越作品が生み出される内なる源泉の姿を探る展覧会です
さりげない日常の衣装をまとった半身像
地下1階展示室では、初期から2000年頃までの木彫作品が展示されています。
(手前)舟越桂《冬の本》1988 作家蔵
舟越が、彫刻家を志したのは17歳の時でした。東京造形大学彫刻科へ進学し、その後東京藝術大学大学院の彫刻科で学びました。
キリスト教徒でもあった舟越は、20代のはじめに親戚を通じて函館のトラピスト修道院の聖母子像の制作を依頼されます。
この依頼がきっかけで、以後制作のメインとなる材料「楠(くすのき)」と出会いました。
舟越桂《山を包む私》2000 個人蔵
ぜひ会場で注目していただきたいのは、大理石がはめ込まれた「目」です。
最初期には入っていませんでしたが、1980年代からは大理石の瞳を入れるようになりました。
角度によって、瞳の色が少しずつ違うので、いろんな表情が楽しめますよ。
2020年制作の新作も出品
2階展示室では、1990年代前後から本格化していった「異形」の作品や、「スフィンクス・シリーズ」が展示されています。
現在でも制作が続けられている「スフィンクス・シリーズ」の新作《スフィンクスには何を問うか?》も、出品されています。
舟越桂《スフィンクスには何を問うか?》2020 作家蔵
スフィンクスとは、古代神話に登場する怪物のこと。エジプト・ギザの大スフィンクスは、皆さんご存じなのではないでしょうか。
舟越は、スフィンクスを‟人間を黙って見つめ、見透かしている存在”であると考えています。その姿を通し て、人間という存在について鑑賞者に問いかけています。
舟越桂《戦争をみるスフィンクスⅡ》2006 個人蔵
2006年に制作された《戦争をみるスフィンクスⅡ》は、舟越作品の中では珍しく激しい感情表現がなされた作品です。
本作は、2003年のイラク戦争に対する怒りと嘆きが示されています。舟越自身の戦争への考えが作品に反映されています。
家族のために制作した、自作のおもちゃたち
舟越が、自身の家族のために制作したおもちゃも紹介されています。
「木彫をやっていて出てきた、捨てるにはもったいない大きさの木っ端を利用した」ことがきっかけで作られたおもちゃは、使い方に合わせて工夫が施されています。
温かみのあるおもちゃたちにも、ぜひご注目ください。
舟越の初期から現代までの作品を展示し紹介するのは、東京の美術館では久しぶりだそう。
年末年始の休館日は、12/28から1/3まで。その前後にお近くの方は、足を運んでみてはいかがでしょうか。
OBIKAKE gifts
本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は12月28日23:59まで!
★その他の展覧会レポートはコチラ
舟越 桂 私の中にある泉
2020.12.05~2021.01.31
開催終了
渋谷区立松濤美術館
※新型コロナウイルス感染拡大防止対策が実施されています。
ご来館のお客様は、必ず美術館公式サイトをご確認ください。
Editor | 静居 絵里菜
【編集後記】
初期から現在までの作品を、こんなに間近に見られるのはとても貴重な機会です!お近くの方は、足を運んでみてはいかがでしょうか♪