ミュージアムさんぽ

おびかけ編集部がゆく!
ミュージアムさんぽ【第12歩】/大森 海苔のふるさと館

2021.2.1

「おびかけ編集部がゆく!ミュージアムさんぽ」とは

 

企画展だけではない、ミュージアムの魅力について、編集部がたっぷり取材します!

 

今回は、京急「平和島駅」から徒歩15分のところにある、大森 海苔のふるさと館へ。

 

かつて日本一の海苔生産地だった大田区の海苔づくりに関する伝統文化を紹介する資料館です。

意外と知らない海苔のふるさと東京・大森について、おびかけ編集部がたっぷりとご紹介します!

 

大森 海苔のふるさと館 外観

 

 

日本の海苔づくりは、東京・大森から!

 

私たちの食卓に欠かせない「海苔」。主要な生産地と聞くと、九州有明海や瀬戸内海などを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

 

日本初の海苔づくりは今から約300年前、江戸時代の享保(1716-36)のころに大森から始まったと言われています。

品川から大森周辺の海の浅瀬に「ヒビ」と呼ばれる粗朶木(そだぎ*)を建て、その枝に育つ海苔を摘み取っていました。

 

*粗朶木:直径数cm程度の細い木の枝を集めて束状にした資材のこと。

 

大森 海苔のふるさと館 展示より ヒビ建て 模型

 

浅瀬の広がる大森周辺は、海苔の産地として発展し、江戸時代の終わりごろには、大森から海苔づくりが各地へ伝わり始めました。

 

 

東京の発展により、生産中止に・・・

 

明治以降になり、各地で海苔づくりが行われるようになったなかで、大田区沿岸の海苔は、質、量ともに全国トップクラスの「本場乾海苔(ほんばほしのり)」と称賛されてきました。

 

しかし現在では、大田区で海苔づくりは行われていません。

残念なことに、東京都沿岸部の埋立て計画に応じるため、昭和37年(1962)12月に生産中止を決定したのです。翌38年(1963)の春に海苔づくりの歴史に幕を閉じました。

 

大田区が保存する海苔資料は、大森海苔漁業資材保存会の収集品に、区立郷土博物館の収蔵品を加え、1000点以上のコレクションになっているそう!

その内881点が「大森および周辺地域の海苔生産用具」の名称で、国の重要有形民俗文化財に指定されています。

 

大森 海苔のふるさと館 展示より

 

大森 海苔のふるさと館は、その文化財の展示のほか、海苔づくりを支えてきた伝統の手わざを体験する施設として平成20年(2008)4月に開館しました!

 

 

海苔付け場の再現展示に注目!

 

大森 海苔のふるさと館 展示より 海苔付け場

 

入口を入ってすぐにあるこちらは、昭和30年代の海苔付け場を再現した小屋です。

海苔の収穫は主に12月~3月に行われ、当時の海苔生産者は、真冬の深夜2時から作業していたそう!

日の出とともに外に干して乾燥させるために、深夜から取り掛かっていたんだとか。

 

大森 海苔のふるさと館 展示より 海苔付け場

 

こちらのレプリカが持っているものは‟付け枠”と呼ばれるものです。この枠の中に水に溶いた海苔を流し入れ、‟海苔簀(のりす)”と呼ばれるすだれのようなものに付けて、外に干します。

 

大森で実際に行われていた海苔づくりが詳しく分かる展示になっているので、夏休みの自由研究などにもオススメです!

 

大森の海苔づくりを継承する活動

 

毎年、同館では「大森ふるさとの浜辺公園」の浜辺で海苔を育てる活動も行っています。

 

大森 海苔のふるさと館 展示より ヒビ建ての様子

 

こちらの活動では、学校教育と大森の浜辺の景観再現を目的に、元海苔生産者の指導のもと、昔ながらの方法で海苔を育てています。

 

干潮の時間(*)には、ヒビと海苔あみを見ることができるそう!

大森ふるさとの浜辺公園は、同館から徒歩約11分と近いところにあります。こちらにも足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

*干潮の時間や潮の引き具合は、同館入口の自然情報コーナーに掲示されています。当日、そちらをご確認ください。

 

館オリジナルグッズも!

 

海苔のふるさと館では、オリジナルグッズも販売されています!ここでしか買えないアイテムも多数ありますよ。

 

大森 海苔のふるさと館 オリジナルグッズ

 

海苔屋などの商店で働く人たちが腰に巻いていた、日本伝統の仕事着「前掛け」に注目。

同館のシンボルマークや、‟東京 大森”、‟本場乾海苔”の文字が入っています♪

 

日本唯一の帆前掛けの産地、愛知県豊田市で織られた生地を使用しているとのこと。

ポケットもついているので、普段使いにも最適です!

 

 

また、大田区立郷土博物館の「海苔の浮世絵絵はがき」や、区と同館のマスコットキャラクターがプリントされたハンドタオルなど!

同館を訪れた思い出にいかがでしょうか。

 

 

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気になる質問! 担当者さんに聞いてみました

 

―館内でオススメの展示を教えていただけますか?

 

おすすめは、展示室に入って最初に展示されている海苔船です。海苔採り用のベカブネと、復元された中べかを展示しています。

 

大森 海苔のふるさと館 展示より (左から)中ベカ/海苔船とベカブネ

 

ベカブネは江戸時代から使われていた小舟です。次第に漁場が沖へ広がったり、海苔の技術が複雑になったりするにしたがって、中べかなどの大きな船も使われるようになりました。昭和20年以降は、海苔船を一家で一艘(そう)所有するようになりました。

 

展示している船は昭和30年に造船され、大田区ではこの一艘しか残っていません。長らく橋の下に放置されていましたが平成10年に見つかり、国の重要有形民俗文化財に追加指定され、当館で多くの方々に見ていただけるようになりました。

 

―人気の「海苔つけ体験」について、教えていただけますか?

 

海苔つけ体験は、大森で海苔づくりをしていたころの、生海苔を四角い海苔に加工する「海苔つけ」を体験するイベントで、冬季に実施しています。

指導は、地元の元海苔生産者とその指導を受けたボランティアです。1人2枚海苔を作り、作った海苔は後日完成したら本人にお渡しします。

家族全員で参加できて、元海苔生産者から直接指導を受けられるので、毎回、申し込み初日に定員になる人気のイベントです。

 

※2021年2月現在、新型コロナウイルス対策として、対象を小学3年生以上、定員10名、作った海苔はお渡ししない、指導は職員で行うなど、多くの対策のもと、実施しています。

 

 

現在は新型コロナウイルス感染症対策のため、前半は海苔の歴史や海苔づくりについて、プロジェクターを使った説明の時間を設けました。参加者は落ち着いてじっくり学べるようになり、感染症の制約の中でも楽しんでいただけるよう、工夫しております。

 

―大森 海苔のふるさと館とあわせて見てほしい、周辺のスポットはありますか?

 

ふるさと館の周辺には、「平和の森公園」「大森ふるさとの浜辺公園」「平和島公園」の3つの大田区立の広い公園があります。

 

大森ふるさとの浜辺公園

 

平和の森公園にはフィールドアスレチックや広場、ふるさとの浜辺公園にはローラーすべり台や都内では珍しい広い浜辺、平和島公園はキャンプ場など、それぞれ個性的な公園です。丸一日、大人も子供も楽しく遊ぶことができます。

 

また、ふるさと館の周辺には、海苔の問屋が多く、小売りをしているお店では安くて新鮮な海苔が手に入ります。店主はいずれも海苔のプロで、知識も豊富なのでさまざまな海苔に関するお話をしてくれますよ。それぞれ個性がありますので、問屋めぐりも楽しいと思います。

大森本場乾海苔問屋協同組合(加盟店リストがあります)

 

まち歩きの様子

 

海苔生産日本一だった大田区大森の海苔づくりを、現代に伝える「大森 海苔のふるさと館」。

普段何気なく食べている海苔について、同館でじっくりと学んでみてはいかがでしょうか。

 

Information

大森 海苔のふるさと館

開館時間:9:00~17:00(6月~8月は19:00まで)

休館日:

・第三月曜日(第三月曜日が祝日の場合は翌日休館)

・年末年始(12月29日から1月3日まで)

・館内消毒のための臨時休館あり

入場料:無料

所在地:〒143-0005 東京都大田区平和の森公園2-2

アクセス:

・京急線「平和島」駅から約徒歩15分(駅に地図があります)

・JR「大森駅」東口9番乗り場から「平和島循環」バスに乗り、「平和島五丁目」下車徒歩約3分(バスを降りて左、すぐの角を右へ)
※バスの運行数が少ないのでご注意ください。

・東京モノレール「流通センター」駅から徒歩約15分

公式HP:https://www.norimuseum.com/

※大森 海苔のふるさと館では、新型コロナウイルスの感染拡大・感染予防の取り組みを実施しています。来館前に公式サイトをご確認ください。

 

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Editor  静居 絵里菜

 

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