展覧会レポート
2021.3.24
たば塩にミティラー画がやって来た!
3000年以上継承されてきた貴重な壁画を紹介
たばこと塩の博物館にて「ミティラー美術館コレクション展 インド コスモロジーアート 自然と共生の世界」が開催中です。
展示風景
ミティラー美術館は、新潟県十日町市の雪深い森にある旧大池小学校の校舎を利用した私立の美術館です。
インドのミティラー地方で、母から娘へと3000年以上伝えられてきたミティラー画をはじめ、インド先住民族ワルリー族が描くワルリー画やゴンド族の描くゴンド画など、貴重な作品を数多く所蔵しています。
同館最大の特徴は、インド人のアーティストを招き、新たなアートの創造の場を提供していることです。
新しい作品を含めて、その量と質は世界に類がないものとインド政府からも高く評価されているそう!
ミティラー美術館所蔵作品の数々
本展では、ミティラー美術館で制作された作品を中心に、伝統的な手法を守りつつも、現地の生活では生まれることのなかった個性豊かな作品を紹介します。
ミティラー画
インド・ビハール州北部の、ガンジス川とヒマラヤのふもとに挟まれた平原地帯は、古来ミティラー王国として知られてきました。
この地の女性は3000年以上ものあいだ、家族の幸せや豊穣などを祈って、母から娘へと壁画を伝承してきました。ミティラー画は細い竹の棒を筆にし、木の実や植物の汁など身近にある画材を使って、細かく描きます。
展示風景
また、この地域には壁画だけでなく、儀式に神々を招くため、牛糞と粘土で塗られた大地に、米をすりつぶした白い汁液で描くアリパン(床画)というものもあります。
これらの伝統的な絵画は現代になると、現地の女性たちの自立や独立の美術運動を通して紙に描かれるようになり、ミティラー画として欧米諸国でその芸術性が高く評価され、広まっていきました。
ワルリー画
ワルリー族は、インド西部に居住する先住民族で、主に農耕で生計を立てていますが、季節によって漁労に携わる人もいます。彼らは万物を育む女神、祖先、精霊、自然神を崇拝しています。
ワルリー画は、米をすり潰して水と混ぜた真っ白な絵の具と竹を削った筆を使い、婚礼の儀式が行われる部屋の壁面に赤土を塗り、儀礼画として描いたものです。
シャンタラーム・ゴルカナ『カンサーリー女神(豊穣の女神)』2004年
『カンサーリー女神(豊穣の女神)』は、貧しくも心の優しい男に、カンサーリー女神がお米をほどこす場面をえがいた作品です。
女神のもつ竹カゴからお米が次々と溢れていくさまを表現していますが、お米ひとつひとつの細かさと丁寧な描き方にびっくり!
ワルリー画はモチーフはシンプルですが、その豊かな表現力絵ワルリーの奥深い精神世界をのぞくことができますよ。
ゴンド画
インド中央部に居住するゴンド族は、インドの500にもおよぶ民族集団の中でも最大の先住民部族です。
ゴンド画は、独自の自然信仰を持つこの民族が、祈りの気持ちを表すため、村の儀礼や祭りの際に家の床や土壁に描いていた絵が原点とされます。
ジャンガル・シン・シュヤム(1960〜2001)は、ゴンドの森に住む生き物、神々、伝説などを独自のスタイルで描き、民族アートの枠を超えたゴンド画を確立しました。
展示風景
テラコッタ
インドには、5000年以上に及ぶテラコッタ(素焼の陶器)制作の伝統があります。
母なる大地から採った粘土で作られるテラコッタは、現地の人々に生き物のように扱われたり、守り神のように思われたりしています。
ニラマニ・デーヴィー『壺』1998年
こちらはマニプール州の伝統的な技法で作られた壺。ろくろは使わず、濡れた布を当てながら壺の周りを自らが回り、木製のへらで叩きながら形を作っていきます。
インドの技法を用いながらも日本の土と稲藁を使った、現地では見ることのできない作品です。こちらも注目です!
伝統を守り継承するインドの民族アートを紹介する本展。
美しい自然の中にあるミティラー美術館の、ゆったりとした時間の中で制作された作品をお楽しみください。
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ミティラー美術館コレクション展
インド コスモロジーアート 自然と共生の世界
2021.02.06~2021.05.16
開催終了
たばこと塩の博物館 2階特別展示室
Editor | 三輪 穂乃香
【編集後記】
ミティラー美術館、いつか行ってみたい!