Be-dan
2021.4.5
今月のBe-danは、現代アートのコレクターズミュージアム「WHAT」の企画担当者である、中橋アレキサンダーさんと、古後友梨さんにインタビュー!
古後さんと中橋さん ※撮影時のみ、マスクを外していただきました。
お二人は、コレクターの持つ美術作品をもとに展覧会を企画し、来館者へ届けるお仕事をされています。
第1回目では、2020年12月にできたばかりの「WHAT」について、寺田倉庫が力を入れるアート事業についてお聞きしました!
―昨年オープンしたばかりの「WHAT」ですが、どんな美術作品を扱っているのでしょうか。
中橋:寺田倉庫がコレクターの方々からお預かりしている美術品の中から、貴重な現代アートの作品をお借りし、展示しています。ふだんは観ることのできない貴重な作品とともに、コレクターの生の声を紹介する新しい文化施設です。
古後: WHATという館名は、「WAREHOUSE OF ART TERRADA」 に由来するのですが、本来であれば倉庫に眠って見ることができない個人蔵のアート作品を‟垣間見る”という意味が込められています。
※WAREHOUSE・・・倉庫
寺田倉庫では、お預かりしているものの価値をさらに高めていくことを目指した保存・保管事業を行っていて、WHATもそのひとつです。お預かりしているアート作品を公開することで、その魅力や価値を発信していこうというコンセプトのもと、オープンしました。
WHAT外観
―オープン後、どんな反応がありましたか。
中橋:美術館では、アーティストや学芸員などのコンセプトや意図を紹介した企画展示が多いと思いますが、WHATではアート作品を見る側の視点で紹介しています。なので、「これまでと違った視点で見られて面白い」という声が多く寄せられています。
古後:コレクターの方々の視点を知ることで、「こういう見方もあるんだ」「アートを自由に定義していいんだ」と感じられるお客さまが多いですね。
―美術品は、手元に置いて楽しむ方が多いのかと思っていました。でも、管理も大変そうですよね。
古後:寺田倉庫はもともと、1950年に政府の備蓄米を保管するところからスタートした会社なんです。保管環境の徹底した管理など厳しい条件をクリアしていくなかで、その確かな保管技術が認められて1975年から美術品保管サービスを開始した、ということが大きな背景としてあります。
中橋:あとは、日本の狭い住環境でしょうか。アート作品をコレクションしていくと、どうしても置くところがなくなってきてしまいますよね。
そうしたスペースの問題もあって、保管環境がきちんと整っているところに預けるという方が多かったのかなと思います。
―WHATもそうですが、建築文化の魅力を発信する建築倉庫プロジェクトなど、寺田倉庫はアート関連事業に力を入れていると思いますが、なぜなのでしょうか。
古後:美術作品は時を経て価値があがっていくものです。そこに着目し、事業を展開してきたというところでしょうか。
たとえば建築模型は、建築家の思考プロセスや建物のコンセプトの根幹をうかがい知ることができる資料であり、芸術性があるものとして世界的に価値が認められているにも関わらず、日本ではこれまで保管場所の確保が難しく、建築模型がアーカイブされない傾向にありました。そこで、それらを保管し、公開することによって価値を高められるのではないかということで、2016年から建築倉庫ミュージアム(現:建築倉庫プロジェクト)がスタートしています。
そして美術作品に関しても同じように展開できるのではないかということで、WHATへとつながっていきました。
美術作品を公開し、作品の魅力や価値を発信することに社会的意義もありますし、後世に美術品そのものを受け継いでいくことの手助けにもなると考えています。
貴重な美術作品を倉庫に眠らせておくのではなく、世の中に広く公開するユニークな試みをする「WHAT」。
第2回では中橋さんに、展示を企画するときのこと、そして現在開催中の「解き放たれたコレクション展」について詳しくお伺いします。お楽しみに!
(第2回につづく)
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解き放たれたコレクション展
2020.12.12~2021.05.30
開催終了
WHAT
Editor | 三輪 穂乃香
OBIKAKE編集部所属。
Writer | 岩本 恵美