Be-dan
2021.4.12
今月のBe-danは、現代アートのコレクターズミュージアム「WHAT」の企画担当者である、中橋アレキサンダーさんと、古後友梨さんにインタビュー!
古後さんと中橋さん ※撮影時のみ、マスクを外していただきました。
お二人は、コレクターの持つ美術品をもとに展覧会を企画し、来館者へ届けるお仕事をされています。
第2回では中橋さんに、展示を企画するときのこと、そして現在開催中の「- Inside the Collector’s Vault, vol.1- 解き放たれたコレクション展」について詳しくお伺いします。
(第1回はコチラ)
―WHATのオープニングとなる「- Inside the Collector’s Vault, vol.1- 解き放たれたコレクション展」は、日本を代表する現代美術コレクターの高橋龍太郎さんと、匿名A氏のコレクションで構成されています。お二人を選んだ理由を教えてください。
中橋:お二人とも寺田倉庫と関わりのあるコレクターさんということもありますし、コレクションとひと口に言ってもいろんな形があることを提示できると思ってお願いしました。
高橋先生がさまざまな作家の作品を集める一方で、A氏は奈良美智さんの作品をメインに収集しています。異なるコレクションの形を見せることができる組み合わせだと考えました。
―どちらもコレクターそれぞれの人生が垣間見られる展示で、音声ガイドを聞くとコレクターがより身近に感じられますね。
音声ガイドでは、コレクションを始めたきっかけ、作品やアーティストとの出会いのエピソードをコレクター自身の言葉で伝えることを大事にしました。A氏とは一緒にテキストを作成し、高橋先生の音声ガイドに関してはご本人の声で吹き込んでいただきました。
そうすることで、鑑賞者も共感できるし、「自由な視点でアートを見てもいい」ということを示せたのではないかと思っています。
高橋コレクションの展示室
―コレクターの方とはどのようなプロセスで展示を作っていくのでしょうか。
一番大切なのは、コレクターが「どういう志をもってコレクションをしているかということ」だと思うので、ヒアリングを重ねて展示の軸を決めていきます。
高橋先生のコレクションに関しては2000点以上あるので、話し合いを何度も行い構成していきました。そこで高橋先生から出たテーマが「描き初め」で、描く力に焦点を当てつつ、コレクションの新しい一面を紹介することになりました。高橋先生は「自分のコレクションは時代とともに変化している」とおっしゃっていて、今回の展示では高橋龍太郎コレクションの新しい側面として、ストリートアートやグラフィック系の若手アーティストの作品も展示しています。
A氏は2000年前後の奈良さんの作品が好みだそうで、自分の人生とリンクさせながら集めてきたといいます。
例えば、「ひよこ大使」はA氏が初めて奈良さんを知った展覧会で見かけた作品です。自身が取り組む起業支援が卵のふ化に例えられることから、ひよこがモチーフとなるこの作品に強く惹かれたそうです。
左:奈良美智《ひよこ大使》
―寺田倉庫で預かる美術品は膨大な数だと思うのですが、そこからどのように展示を企画するのですか。
保管サービスにも作品一つひとつを個品管理するサービスや、大きな一部屋を貸し出す方法などいろいろあり、コレクターさんが寺田倉庫に預けている作品全てをこちらが把握することはできません。
そのため実は、コレクターさんにアプローチし、作品の展示依頼をすることから始まるんです。そこからは先ほど言ったような、地道な話し合いですね。
コレクターの方の協力なしにはWHATの展示は成り立たないんです。
ふたりのコレクターのコレクションを通して、新しいアートの視点の気づきを提示する「- Inside the Collector’s Vault, vol.1- 解き放たれたコレクション展」。
あたたかい季節、ぜひお出かけ先の候補にしてみてはいかがでしょうか?
次回は、WHATでのアートの楽しみ方や、中橋さんと古後さん個人のアートの楽しみ方について、お伺いします。お楽しみに!
(第3回につづく)
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Editor | 三輪 穂乃香
OBIKAKE編集部所属。
Writer | 岩本 恵美