特集
2021.4.16
渡辺省亭(わたなべせいてい)は、明治~大正にかけて活躍した日本画家です。
しかし、『渡辺省亭ってはじめて聞いた!』という方も多いのではないでしょうか?
西洋の博覧会への数多くの出品や、歴史に残る仕事を手掛けておきながら、長いあいだ忘れ去られていたのです。
本コラムでは、渡辺省亭の魅力から、現在東京藝術大学大学美術館で開催中の「渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-」の見逃せない作品までをたっぷり紹介。
コラム最後では、10組20名分のチケットプレゼントもご用意しています!
「渡辺省亭」について予習して、展覧会をより楽しみましょう♪
①省亭ってどんなひと?
渡辺省亭は、1852年に江戸の下町で生まれました。8歳のころに父が他界し、12歳で奉公へ行きますが、彼が熱中したのは絵を描くことでした。そのうちに奉公先を追い出されてしまいます。
その後16歳で歴史画家・菊池容斎(きくちようさい)に入門。画家としての腕を磨き、1878年のパリ万博への出品のため、日本画家として初めてフランスへ渡ります。
《梅屋敷》1876(明治9)年/絹本着色/一幅/奈良県立美術館
展示期間:4/27~5/23
帰国してからは、国内外の博覧会や展覧会に、花鳥画を中心に多く出品し、明治20年代には自身の画風を確立しました。
明治30年代以降、美術展覧会、美術団体と距離をおくようになり、弟子も取らずに活動。68歳(数え年)で亡くなるまで、注文に応じて制作を行いました。
②省亭が得意とする「花鳥画」ってなに?
花鳥画とは、花や鳥、虫などをモチーフとして描いた日本画のことです。
省亭は伝統的な日本絵画や中国画に、自身の画風を加えて人気を集めました。
《鳥図(枝にとまる鳥)》1878(明治11)年/ 紙本淡彩/一面/クラーク美術館、米国
Clark Art Institute. clarkart. edu
《鳥図(枝にとまる鳥)》は、貴重な初公開作品です!
西洋的な写実描写は、フランスで多くの西洋作品を観た省亭ならではの表現です。また、季節の移り変わりや愛らしく生き生きとした動物の描写も圧巻です。ぜひ間近でじっくり鑑賞してみてください。
③卓越したデッサン力とセンスで〇〇も驚いた!
省亭は日本画家としてはじめて訪れたパリ滞在中に、その筆さばきがドガやマネをはじめとする多くの印象派の画家たちを驚かせたと伝えられます。
また、明治20年代にロンドンの画廊で開催された展示会では、100点以上もの作品が販売されたと考えられています。
左:《牡丹に雛図(花鳥魚鰕画冊)》右:《百舌鳥に蜘蛛図(花鳥魚鰕画冊)》
絹本着色/全二十一面のうち/メトロポリタン美術館、米国
今回の展覧会では、海外での高い評価を物語る作品が里帰りします。また、近年公開されることのなかった知られざる個人コレクションも多数出品されます。
近世と近代の変わり目の激動の時代に生きた省亭。長いあいだ忘れられていた画家の、全貌を明らかにするはじめての展覧会です!
また、省亭の生涯や、作品のテーマ・技法をより理解するためには、音声ガイドがオススメです。
貸出料金:おひとり様1台につき 600円(税込)
収録時間:約30分
本音声ガイドにはスペシャルトラックも!渡辺省亭展の楽しみ方、おすすめ作品について聞きながら鑑賞してみてはいかがでしょうか?
※展示替えに伴い、一部ガイド内容が変わります。
※東京展のみ実施
洗練された構図と確かな描写に観る人も驚く省亭作品。
ここからは、展示の様子をレポート(会期中展示替えあり)。「日本美術応援団」でおなじみの山下裕二先生からのワンポイントアドバイスにも注目です!
― めくるめく省亭の花鳥世界《牡丹に蝶の図》
生涯浅草で暮らした省亭は、江戸の美意識をとても大切にする画家でした。
その卓越したデッサン力や描写力と、日本的な情緒がみごとに融合した絵画世界は、現代の私たちが観てもあっという間に引き込まれてしまいます。
展示風景より、《牡丹に蝶の図》1893(明治26)年 絹本着色/一幅/個人蔵
紫、白、桃色と色鮮やかな牡丹が描かれた《牡丹に蝶の図》。花びらが今まさに散っている情緒あふれる場面を表現しています。
白い牡丹に止まって羽を休める蝶の構図も、省亭らしさがうかがえます。
山下先生:落ち始めたおしべ、落ちる途中のおしべ、もう落ちてしまったおしべ、というように、花びらの落ちていく動きが見えるような絵です。省亭の作品には、時間が見事に織り込まれていますよ!
七宝作家との超絶技巧コラボレーション
無線七宝*の技術を開発して近代日本工芸史に多大な功績をのこした濤川惣助(なみかわそうすけ)。その技術の魅力を最大限に引き出したのが、省亭の原画でした。
*無線七宝・・・表面に金属線を使用しない技法。
濤川惣助作 渡辺省亭原画(推定)《柳燕図花瓶》明治時代後期
七宝/一口/京都国立近代美術館
《柳燕図花瓶》は、上部から垂れてくる柳を背景に、ツバメが飛んでいるようすを描いた作品で、正面に菊花紋章が施されています。
帝室技芸員だった濤川は、御紋を施した花瓶を数多く制作しました。そしてそれらの図案は、ほとんど省亭が描いていたそう!
濤川の無線七宝は数々の万博に出品され、海外でも評価されました。
華やかに迎賓館赤坂離宮を飾る七宝焼き
国宝・迎賓館赤坂離宮にある「花鳥の間」。この空間を今も華やかに彩る省亭・濤川共作による七宝額の原画も展示されます。
展示風景
迎賓館赤坂離宮の「花鳥の間」壁面には、30面の七宝額絵が飾られています。
花や鳥などの書き慣れたモチーフでありながらとても細かく描かれており、その質の高さは、工芸品の原画というだけでなく、省亭の代表作として異彩を放っています。
山下先生:これほどの素晴らしい作品がたくさん残っているのに、一般的な知名度がほとんどない省亭。よく目を凝らして絵を観察して、言葉にできない素晴らしさに出会ってみてください。
(迎賓館赤坂離宮 公式サイト)
花鳥画だけじゃない!美人画もすごいんです
省亭のキャリアは、歴史画家・菊池容斎の門下生からスタートしました。
その後、表現力豊かな花鳥画で成功しましたが、独特の品格を持つ美人画は「省亭風」とよばれ、花鳥画にも劣りません。省亭の美人画は、後世に活躍した画家・鏑木清方らにも影響を与えました。
本展では、省亭の選りすぐりの傑作が展示されますが、最高傑作のひとつである美人画も出品されます。
展示風景より左《七美人之図》絹本着色/一幅
クラウス・F・ナウマンコレクション
《七美人之図》は、竹林のなかにたたずむ、さまざまな境遇、世代の女性が美しく描き分けられた作品です。
最大の見どころは、女性たち一人ひとりの細かい人物表現! 彩色の美しさや、流れるような筆づかいは実に見事です。つややかな髪は、黒を強調するため特別に「漆」が使用されています。
山下先生:本作は、これまで見つかっている省亭の人物画の中でも最大級の作品です。着物の柄や女性の髪の描写などは、ずば抜けたクオリティと言えます!
開幕直前に急遽出品が決まった、日本初公開の美人画は鑑賞必須です!
また、本展で思い切り省亭作品にふれたあとは、いつでも鑑賞できる図録を購入してみてはいかがでしょうか?
展覧会公式ガイドブック&オリジナルトートバッグセット¥3,700(税込)
公式ガイドブックとオリジナルトートバッグは、セット購入すると100円お得にゲットできます♪
「省亭入門」にぴったりの展覧会公式ガイドブック(図録)と、愛らしいスズメをあしらったトートバッグ。エコバッグとしても便利そうですね!
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Information
渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-
会場:東京藝術大学大学美術館
会期:開催中〜2021.05/23(前期:~4/25、後期:4/27~5/23)
休館日:月曜日※ただし、5/3(月・祝)は開館
開館時間:10:00~17:00
※入館は閉館の30分前まで
公式サイト:https://seitei2021.jp
東京藝術大学大学美術館サイト:https://www.geidai.ac.jp/museum/
※入館の際、マスクの着用、アルコール消毒、検温のご協力をお願い致します。
※本展は事前予約制ではありませんが、今後の状況により変更及び入場制限等を実施する可能性がございます。最新の情報はホームページでご確認ください。
※新型コロナウイルス感染症拡大防止への主催者の取り組み、お客様へのお願い等を記載いたしますので、ホームページを必ずご確認のうえ、ご来場ください。
本展の無料鑑賞券を、10組20名様にプレゼントいたします。
たくさんのご応募、お待ちしております♪
応募はコチラから。
(締め切り:2021.4/30 23:59まで)
Editor | 三輪 穂乃香
【編集後記】