展覧会レポート
2021.6.6
ルーベンスなどの大画家の作品を間近で!
西洋風景画の歴史を「#映える」視点から紹介
町田市立国際版画美術館にて「#映える風景を探して 古代ローマから世紀末パリまで」が開催中です。
展示風景
目の前に広がる美しい景色をひとつの絵に収めるために、画家や版画家はさまざまな工夫をこらしてきました。
本展では、版画を中心に、16~19世紀までの西洋風景画の歴史をたどります。
古代遺跡から世紀末パリのにぎやかな街角まで、その時々の「#映える風景」を紹介します。
見どころ①
絵画のテーマとしての「風景」を辿る
長らく物語の背景にすぎなかった「風景」が絵画のメインテーマとなりはじめたのは、1500年頃のこと。ブリューゲルやルーベンス、レンブラントなどの巨匠が風景画を描くことにより、異国への憧れや関心をひとびとが持つようになります。
展示風景
18世紀に活躍したカナレットはイタリアの美しい風景を描き、それを見たイギリス人がグランド・ツアーと称してヨーロッパ大陸旅行を楽しむようになりました。
誰もが知る大画家の作品とともに、風景画が生まれ、成熟するまでを紹介します。
見どころ②
映える風景はどうやって作られる?
19世紀になると、写真が普及します。それにより、版画の「複製技術」という地位もし失われ、風景は写真で撮影されるようになっていきました。
制作者不明《眼鏡絵:リヴォルノの道路とファリオ遊歩道の眺め》、
制作年不詳、エッチング、手彩色、町田市立国際版画美術館蔵
「眼鏡絵」は、「のぞき眼鏡」とよばれる視覚装置で見ることを前提に作られた版画です。
ふつうに見ると、左右が反転しており、奥行きが強調されたへんてこな絵ですが、覗き眼鏡をかけることで、浮き上がったリアルな風景をのぞくことができます。
江戸時代に舶来した眼鏡絵は、当時の日本人の大きなインパクトを与えたそうです。
また、写真の普及にあらがい、版画の芸術的価値を見出す協会も設立されます。
A.P.マルシアル(アドルフ・マルシアル・ポテモン)腐蝕銅版画家協会本部
腐蝕銅版画家協会は、エッチングと呼ばれる版画技法を使い、質も高い版画を大量に刊行しました。その結果、エッチングの普及に大きな役割を果たし、「版画」を復興させることに成功したのです。
現代でもより綺麗な写真を残すために行われる‟加工”。16~19世紀頃の加工技術などをたっぷり知ることができます!
見どころ③
世界中を描いた版画で旅行気分?
描いたイメージをそのまま表現することができる版画技法・リトグラフなどが普及した19世紀。
人々は旅行記や挿絵本を通じて、タイムトリップを楽しむようになりました。
19世紀、美しい古代遺跡の数々を載せた『エジプト誌』は、当時のフランス人たちを魅了し、エジプトブームの火付け役となりました。
また、こうして遠い異国への関心が高まる一方で、それまで見過ごされてきた自国の風景も改めて注目を集めます。
ほかにも、日本の葬列風景からイギリスで生まれた世界初の旅客鉄道、そして世紀末のパリまで。
世界中を飛び回っているような鑑賞体験ができますよ!
版画を通して、西洋風景画をたどることができる本展。町田市立国際版画美術館らしい展示です!
海外旅行が難しい時期ですが、お近くの方は世界旅行気分を味わってみてはいかがでしょうか?
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#映える風景を探して
古代ローマから世紀末パリまで
2021.04.24~2021.06.27
開催終了
町田市立国際版画美術館 企画展示室1・2
Editor | 三輪 穂乃香
【編集後記】
知っている画家でも、版画を通して新鮮な目で観ることができたり。
日本の風景を描いた版画も探してみてくださいね♪