Be-dan
2021.8.2
今月のBe-danは、名画の続きを描くワークブック『ヨンブンノサン』を考案した丸山琴さんに、インタビュー!
『ヨンブンノサン』は、名画の一部に空いた空白のなかを自由に描くぬりえです。丸山さんはこのぬりえを使い、各地の小学校や学童などでワークショップを行っています。
丸山琴さん
第1回では、丸山さんが『ヨンブンノサン』を作ったきっかけについて、たっぷりとお聞きしました!
―名画の続きを描くぬりえとは、とてもユニークですね。「ヨンブンノサン」が生まれたきっかけをお聞かせください。
もともと、美術が敷居の高いものになっていることに疑問を持っていました。本来、美術はもっと多くの人が気楽に楽しんでいいもののはず。そこで、「美術を身近なものにできないか」と考えて作ったのが『ヨンブンノサン』なんです。
―『ヨンブンノサン』にはゴッホやモネなどの名画が採用されていますが、名画はどのような基準でセレクトされているのですか?
子どもたちに実際に試してもらったとき、反応がよかったものを採用しています。ワークブックを作るにあたり、様々な検証をたくさん行いました。そこで段々「こどもたちが楽しんでくれる絵」というのがわかってきて、それを軸に選定・考案を繰り返しました。
選定した名画を本にするときは、ページのバランスを考えています。例えばこのページでは、「ぐるぐる」の表現を見て感じてもらいたいと思い、「うずまき」という共通点があるゴッホの《星月夜》とクリムトの《生命の樹》を並べています。
―画面の4分の3が名画、残りの4分の1が空白というバランスがとても絶妙です。
試行錯誤の中で子どもたちが、一番描きやすそうだったのが4分の1だけ欠けているもの、つまり名画が4分の3残っているものだったんです。
そうして、4分の3が名画で、4分の1が空白のぬりえ『ヨンブンノサン』ができました。
『ヨンブンノサン』の特徴は、ぬりえの気楽さと白紙の自由さをあわせ持っているところです。白紙を渡された時の抵抗感なく、ぬりえを楽しむような感覚で名画に触れることができます。
―丸山さんは大学在学中に『ヨンブンノサン』の事業を立ち上げたそうですね。大学では経営学を専攻なさっていたのですか?
いいえ。経営には興味も関心も全くありませんでした。
―そうなんですね。そこから、なぜ事業家の道へ?
大学1年生のとき、野村総合研究所によるデザイン思考のワークショップに参加し、「考えが面白いから起業してみないか」と、声をかけていただいたのがきっかけです。
最初は「自分には事業を起こす才能なんてないから無理だ」と断っていました。しかし、声をかけてくださる人がいるということは、「私でもやれるのかな、やってみようかな」と次第に思うようになり、思いきって起業の道に進みました。
―丸山さんが『ヨンブンノサン』の事業を通して目指していることを教えてください。
「他者の中での自己表現を解放すること」です。昨今は自己表現がとても自由な時代になりました。しかし、他者や関係性を大切にしようとするがあまり、時に自己表現を躊躇してしまうこともあるのではないでしょうか。
『ヨンブンノサン』の空白を埋めるとき、周りの名画の部分を見て埋めていきます。名画の部分は画家、つまり他者の表現。一方で、空白の部分は自己表現になります。他者表現と自己表現を両立させることは、他者の中での自己表現の具合を見極める、いわばトレーニングになると思います。「他者も自分も肯定し、受け入れること」そんな思いやりにあふれた社会をつくっていきたいと思っています。
『ヨンブンノサン』は、まさに私の事業理念を形にしたものなんです。
名画の4分の1が空白になっているユニークなワークブック『ヨンブンノサン』。
こちらはオンラインショップで販売中! 興味のある方は公式サイトより詳細をご覧ください。
続く第2回では、全国の小学校などで行われているワークショップについて、詳しく聞いていきます。
次回のBe-danもお楽しみに♪
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Editor | 静居 絵里菜
OBIKAKE編集部所属。
Writer | 岩本 恵美