Be-dan
2021.8.23
今月のBe-danは、名画の続きを描くアートブック『ヨンブンノサン』を考案した丸山琴さんに、インタビュー!
『ヨンブンノサン』は、名画の一部に空いた空白部分を色えんぴつで自由に描くぬりえです。丸山さんはこのアートブックを元に、各地の小学校や学童、保育園などでワークショップを行っています。
丸山琴さん
最終回では、『ヨンブンノサン』の今後の展開や、丸山さんがお好きな美術館について、お聞きします!
―『ヨンブンノサン』のワークショップやアートクラスは保護者の方や先生方からも評判のようですね。
名画に触れられる点が特に評価されているのかなと思います。絵は描いた人が何かに感動したり、喜怒哀楽の感情を抱いたりして描かれたものです。ヨンブンノサンのワークショップやアートクラスは、そうした作家の心の震えに子どもたちが直接触れられるようなプログラムを目指しているので、アートを体感的に学ぶことができます。
そこがお絵描き教室とも美術の授業とも違うところであり、魅力でもあると自負しています。
―ワークショップやアートクラスに参加することで、子どもたちのどのような力が培われていくのでしょうか。
ヨンブンノサンのプログラムは「審美眼」が養われるように作っています。とび箱を飛べるようになるために何度も練習するように、審美眼もアートにたくさん触れることで養われていくと考えています。
審美眼は、美術作品を見るときだけでなく、生きていく上でも大切な力です。例えば、問題を解決したいとき、挫折から立ち上がりたいとき、誰かを幸せにしたいとき、何かに踏み出そうとするときなど、人生の様々なシーンにおいて、審美眼はより善い選択肢を選び抜くときの助けになるはずです。
―丸山さんは、両親がデザイナーなので幼少期からアートに触れていたそうですね。
はい。小さいころから家の絵本の棚に画集がまぎれ込んでいて、ゴッホやミレー、ガウディなどの作品集を絵本だと思って読んでいました(笑)。
また、私の名前の「琴」というのは、マグリットの「心の琴線」という絵からとったそうです。
丸山琴さんの名前の由来になった、ルネ・マグリット《心の琴線》
―そうなのですね!小さいころからアートがとても身近だったんですね。好きな美術館やよく行く美術館はありますか?
根津美術館と山種美術館、サントリー美術館が三大好きな美術館です!
―日本美術がお好きなんですね。
そうなんです。日本美術の抽象と具象のバランスがたまらなく好きです。それと抽象画も好きですね。
画家では、福田平八郎や小野竹喬(おの ちっきょう)、尾形光琳、ミロが好きです。いつか彼らの作品で『ヨンブンノサン』を作れたらいいな、と思っています。
―いつか『ヨンブンノサン』で見られることを楽しみにしています!
今後の活動でやりたいことはありますか?
オンラインでやっているアートクラスの内容を、ムック本のような形にして皆さんに届けたいと思っています。
最近『ヨンブンノサン』は中国への展開を始めたところで、今後は海外の他の地域の方々にも言語の壁を越えて楽しんでもらえるような製品を作っていきたいです。
中国語の『ヨンブンノサン』
アートは、優劣なく人の感性を受容できるものだと考えています。教育におけるアートの役割は、まさにそれだと思うのです。
教育があるところには、どうしても「できる」「できない」という優劣が発生してしまいます。算数ができる子・できない子、体育ができる子・できない子など。私自身、子供の頃、優劣をつけられることで劣等感や自己否定に悩み、苦しい思いをした経験があります。
だからこそ、「優劣をつけられず、あるがままの自分をありのまま受容される経験」を、アートを通して世界中に届けていきたいと思っています!
全4回にわたるインタビュー、いかがでしたか?
いつか丸山さんの『ヨンブンノサン』が、世界中の子どもたちの背中を押す、ステキな教材として使われることが楽しみですね。
次回のBe-danもお楽しみに!
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Editor | 静居 絵里菜
OBIKAKE編集部所属。
Writer | 岩本 恵美