展覧会レポート
2021.7.30
岡本太郎の視線を追体験
写真ってやっぱりおもしろい!
川崎市岡本太郎美術館で、「太郎写真曼陀羅 ―ホンマタカシが選んだ !! 岡本太郎の眼―」が開催中です。
展示風景
岡本が撮影した写真を中心に掲載した『太郎写真曼陀羅』(筑摩書房、2011年)を、写真家・ホンマタカシ(*)の視点から再構成する本展。
岡本は自身の制作のかたわら、雑誌連載の企画で日本各地を取材のために訪問し、文章の挿図のために自ら写真を撮り続けました。
撮影した写真を中心に、その発見の記録155点をホンマタカシの5つの切り口で紹介します。
*写真家・ホンマタカシ
対象との特有の距離感とクールな色合いを持ち、被写体をその背景や文脈を切り離して写し出すことで高い評価を得てきた写真家。「写真を使った世界の見方をさまざまに問いかける試み」を追及している。
1 岡本太郎自身
第1部では、岡本太郎自身が写った写真を紹介します。
展示風景
ホンマは、岡本が撮影した写真と岡本自身が写された写真を区別せず、「岡本太郎が居て、そこになんらかのコトが起こっていて、誰かがシャッターを切る。」それが岡本太郎の写真であると捉えています。
岡本が写っていれば、すべてインパクトのある写真に見えてしまう画力の強さ。
第1部で展示された写真たちは、被写体である岡本のオーラや構図から見ても、誰が撮影したのかなどは全く関係のない傑作ばかりです。
2 ポートレート
第2部では、取材やその合間に撮影したポートレートを紹介します。
展示風景
写真に写っているのは、旅館の女将や踊り子など、取材対象ではない女性たち。
仕事の合間に出会った綺麗な方々を撮らずにはいられなかったのでしょうか?
岡本の視線がひしひしと感じられる印象的な作品です。
※ホンマは、ところどころ監修中に気になった作品を大判で印刷しています。大きさによって見え方の変わる「写真」の面白さにも注目です!
3 取材
第3部では、雑誌連載のための取材で撮影された写真を紹介します。
展示風景
岡本が取材で撮影したのは、東北や沖縄の民族的な祭礼などが多く、岡本独自の民族学的観点で撮られた写真ばかりです。
ホンマはこれらの写真群を、被写体のはっきりした記号化された写真であると解釈しました。
被写体ありきの写真。岡本がその視線の先に何を捉えたのか考えながら鑑賞してみてはいかがでしょうか?
岡本太郎 青森、八戸・オシラさま 1952年7月26日
またホンマは、岡本ならではの被写体に対する踏み込みの良さや、アングルを変えて執拗に何枚も撮影していることなどは、プロカメラマンでさえも驚きに値する、情熱とパワーが垣間見えるとも語っています。
4 看板
第4部では、目的こそ不明ですが、岡本が残した看板の記録を紹介します。
岡本太郎 長崎、長崎市街 1957年3月6日 ほか展示風景
取材の合間に視界に入ってきたさまざまな看板。ホンマはこれらの作品を、「つい撮ってしまった写真」として大変魅力的だと考えています。
その書体やデザインからは、その時代にしか撮れない空気が濃密に記録されています。看板ひとつひとつがどういったお店なのか、現在も営業しているのかなどを想像したり、調べてみるのも面白そうですね。
5 スナップショット
第5部では、ホンマが今回の監修に最も意味を見出したスナップショットが並びます。
展示風景
カメラが勝手に写してしまった写真。またはシャッターを切る瞬間に何かが写りこんだ写真。
こうした仕事には使えないミスショットにも、実は写真の面白さがたくさん詰まっているとホンマは考えます。
無作為に切り取られたその瞬間は、現場のドラマをより想起させてくれますよ。
同館では、以前にも岡本の写真を発表してきましたが、それらの多くは、被写体に迫るように撮影した個性的な作品ばかりでした。
本展は、岡本のアーティストとしての直観力、パリで学んだ民族学の観察力、子どものような好奇心によって撮影された「なんてことない風景」の中に魅力を見出し、岡本の視線を追体験できる初めての機会です。
展示風景
また、デジタル写真ではない、現像という科学変化を通した白黒写真の重みや、一緒に展示している彫刻作品とのコラボレーションなども見どころです!
普段とは少し違う、肩の力を抜いた岡本の写真展。
親しみやすいホンマのコメントとともに、新たな岡本の一面や「写真」の魅力が再発見できますよ!
OBIKAKE gifts
本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は2021年8月29日23:59まで!
★その他の展覧会レポートはコチラ
太郎写真曼陀羅
ーホンマタカシが選んだ!! 岡本太郎の眼ー
2021.07.17~2021.10.11
開催終了
川崎市岡本太郎美術館
Editor | 松栄 美海
【編集後記】
岡本がカメラを通して何をみていたのか
没頭して妄想に浸りました(笑)