Be-dan
2021.9.6
今月のBe-danは、数々の対話型鑑賞会でファシリテーターを務める、NPO法人ARDA(アルダ)所属・田辺梨絵(たなべりえ)さんにインタビュー!
田辺梨絵さん ※撮影時、マスクを外していただきました。
田辺さんは、対話型鑑賞会のファシリテーター・ワークショップデザイナーとしてご活躍されています。
対話型鑑賞とは、知識にもとづいて作品をみるのではなく、自分の目でよくみて「感じたこと」「考えたこと」をグループ(複数人)で対話しながら作品をみる鑑賞法です。
アメリカ・ニューヨーク近代美術館で子ども向けの鑑賞法として開発されて以降、日本では2000年前後から教育普及プログラムの一環として各美術館で行われ始め、現在では世代を問わずアートを楽しむ方法のひとつとして、対話型鑑賞を用いたイベントが数多く開催されています。
第1回では、対話型鑑賞との出会いや、田辺さんがファシリテーターを目指すことになったきっかけについてお聞きしました。
―田辺さんは、小さい頃からアートがお好きだったのですか。
大好きというほどではないのですが、好きでした。中学生の時には、帰宅部のような美術部に所属していました(笑)。
油絵をやってみたかったので、美術の先生の家に友人たちと通って個人的に教えてもらったり、美術館に連れて行ってもらったりしていました。
そのときに見た、地元・新潟出身の横山操さんの大きな作品は今でも覚えています。この頃にアートに触れた経験が、後々考えると今の活動につながる大きなきっかけだったのかなと思いますね。
―対話型鑑賞のファシリテーターのお仕事は、特殊なイメージがあります。元々このお仕事を目指されていたのでしょうか。
いいえ。実は社会に出て働くこと自体が自分の中でしっくりこなくて、小さい頃から社会人になりたくないという気持ちがありました。
ずっと小5のままでいられるカツオくんみたいに、サザエさんの世界にいたいと思っていたくらいです(笑)。
そうは言っても働かずに生活はできないので、大学を出てプランナーやライターとして会社勤めをしていたのですが、もっと好きなことだったら頑張れるのかなと昔から憧れていたアートの分野で、何か自分にできることはないかと模索し始めました。
美術史の本を読んで独学で学んだり、現代美術の連続講座やキュレーションの講座などに参加してみたり。でも、どれもしっくりきませんでした。
―しっくりこなかったのはなぜでしょうか。
美術館やギャラリーなどのアートを発信する側は「アーティストの良さを伝えたい」「アートっていいでしょ」というスタンスが強く、もっとアートを見る・受け取る側との間に立つことはできないのかと考えていたからです。
そんな中、アートコミュニケーションという分野があるのを知り、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)の対話型鑑賞を紹介する記事とその様子を記録した動画を見つけました。
みんなで話し合いながらコミュニケーションの中でアートを見ていくというのが単純に面白そうでしたし、これまで感じていたような一方的なものとは違うなと感じました。
それで、すぐさまこの大学に行ってみようと決意しました。
田辺梨絵さん ※取材時は十分な距離をとってインタビューを行いました。
―仕事を辞めて京都へ行かれたんですか!
オープンキャンパスまで行って授業も体験して、もうこれしかないと確信したのですが、仕事を辞めて京都に移り住むということを考えると結局その時は勇気がなく、一旦止まるしかありませんでした。
しかしその後も諦めきれず、東京で対話型鑑賞が学べる場所を探した結果、NPO法人が主催している社会人講座があるのを見つけてすぐさま参加を決めました。
―それが田辺さんが所属されているNPO法人ARDA(アルダ)の講座なんですね。
はい。私もARDAで学んだ身なのですが、今ではARDAが主催の小中高生向けの鑑賞授業や美術館でのワークショップ、オンラインでの親子向け鑑賞イベントのほか、対話型鑑賞講座修了生向けの勉強会などを担当するようになりました。
それとは別に、個人の活動ではアート作品だけではなく映画の対話型鑑賞を仲間と行うなど、さまざまな鑑賞ワークショップも行っています。
対話型鑑賞会のファシリテーターを軸にワークショッププランナーとして幅広く活躍する田辺さん。
第2回ではそんな田辺さんがファシリテーターを務める対話型鑑賞会はどのようなことをするのか、詳しくお聞きします。お楽しみに!
(第2回につづく)
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Editor | 松栄 美海
OBIKAKE編集部所属。
Writer | 岩本 恵美