展覧会レポート
2021.8.24
現代アーティストのピピロッティ・リストの大規模個展
30年にわたるその活動の全体像が明らかに
9月1日から水戸芸術館にて、「ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island-あなたの眼はわたしの島-」が開催されます。
ピピロッティ・リストはスイスを拠点に活躍する現代アーティストであり、ヴィデオ・インスタレーションの先駆者として知られています。
心地よい音楽と、鮮やかに彩られた世界をユーモアたっぷりに切り取った映像作品は、これまで世界中の人々を魅了してきました。
本展は、身体、自然、女性、エコロジーをテーマにした作品およそ40点で構成。ピピロッティ・リストの魅力に迫ります!
本展のみどころ①
30年間にわたる創作を網羅する作品展示
本展では、30年以上に渡りヴィデオ・アートの第一線で活躍してきたピピロッティ・リストの代表作を網羅して展示。
身体や女性としてのアイデンティティーをテーマとする初期の短編映像作品から、横浜トリエンナーレなどで国際的な注目を集めた《永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に》、自然と人間の共生をテーマにした近年の大型インスタレーションまで、これまでの創作の軌跡に迫ります。
ピピロッティ・リスト《私はそんなに欲しがりの女の子じゃない》1986
ピピロッティ・リストの代表作をここまで網羅的に見ることができる展示は、日本では13年ぶりです。
また、展示構成としては、特に年代やテーマなどは明確に決められておらず、展示室を巡りながら、視覚・聴覚・触覚など五感を通して作品に出会うような構成となっています。
本展のみどころ②
現代の社会問題を、ユーモアを交え「ほぐして」見せる!
ヴェニス・ビエンナーレや横浜トリエンナーレに出品された《永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に》は、ピピロッティ・リストの代表作のひとつです。
ピピロッティ・リスト《永遠は終わった、永遠はあらゆる場所に》1997
2つの壁で構成された本作は、一方の壁には女性がハンマーで車の窓ガラスを次々に楽しげにたたき割っていくようすが、もう一方の壁には壁一面の赤い花が映し出され、両方が互いに重なり合っていくインスタレーションです。
鑑賞者は靴を脱ぎ、カーペットの上で、体も心もゆるませながら作品を観ることできます。
ピピロッティ・リスト《アポロマートの壁》2020-2021 、《アポロマートの床》2020-2021
ピピロッティ・リストは、作品と鑑賞者の関係をより柔らかくし、現代社会が直面する問題をユーモアを交えながら「ともに考え」「テーマを受容し、鑑賞者が主体的に考える」ように促しているのだそうです。
また、本展のタイトル「Your Eye Is My Island-あなたの眼は私の島」は、他者に眼を向けること、心を配ることによってその存在を救出することができるというピピロッティ・リストの思いが込められています。
Islandは日本を示し、EyeとIslandをかけている彼女の遊び心にも注目です。
本展のみどころ③
小さなスクリーンから大きなスクリーンまで
幅広いメディアのバリエーション!
今回の展示では、5センチほどのディスプレイから高さ3.2メートル、幅10メートルを越えるプロジェクションまで幅広いバリエーションのメディアが使用されています。
《4階から穏やかさへ向かって》では、鑑賞者はベッドに横たわり、「まるでモネの《睡蓮》を水の下側から見たような景色」をゆっくりと眺めることができますよ。
ピピロッティ・リスト《4階から穏やかさへ向かって》2016
寝転ぶ、見上げる、のぞき込む、映像を浴びるなどさまざまな方法で鑑賞者が作品を体験できるしかけも!
ぜひ、全身を使って作品を楽しんでみてくださいね。
本展のみどころ④
不用品を作品に!?アップサイクル!?
ピピロッティ・リストは1985年から現在まで、何も印刷されていない半透明または白色のプラスチックや紙製、木製の日用品や使い捨て容器を収集してきました。
ピピロッティ・リスト《イノセント・コレクション》
こうしたものたちは、ひとたび用途を失ってしまえば、ゴミとして捨てられてしまいます。しかし、ピピロッティ・リストはそんな不用品を「即席のダイアモンド」として自らの作品に取り入れ、《イノセント・コレクション》として展示してきました。
こうした作品たちはピピロッティ・リストの環境問題に対する問題提起ともいえます。
ピピロッティ・リスト《不安はいつか消えて安らぐ》2014
五感を使い、改めて社会問題を考えることができる本展。
夏休みのおでかけにいかがでしょうか。
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本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は2021年9月12日23:59まで!
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ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island
-あなたの眼はわたしの島-
2021.09.28~2021.10.17
開催終了
水戸芸術館 現代美術ギャラリー
Writer | marii
アート好きのライター。「働く女性が日々すこやかに生きるヒント」をテーマにTwitterやnoteで発信中。
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