展覧会レポート

山城知佳子 リフレーミング

2021.9.1

沖縄の土地に眠る声をすくい上げる

映像とフィクションで織りなす山城の世界

 

東京都写真美術館で「山城知佳子 リフレーミング」が開催中です。

 

OBIKAKE 展覧会レポート 山城知佳子 リフレーミング展示風景

 

山城知佳子は、自身が生まれ育った沖縄を主題に、沖縄の社会と複雑な歴史、地政学的な状況と向き合いながら制作をする映像アーティストです。

 

彼女の作品は、見過ごされ聞き過ごされてきた声や肉体、魂を伝える作品が多く、国内外で高く評価されています。

 

公立美術館初個展となる本展では、2002年の初期作から2021年の最新作まで、山城の作品世界が通覧できる29作品を展示。

本記事では、編集部が注目した3作品をご紹介します。

 

注目作品①

《あなたの声は私の喉を通った》

 

OBIKAKE 展覧会レポート 山城知佳子 リフレーミング

《あなたの声は私の喉を通った》2009年、《OKINAWA墓庭クラブ》2004年 展示風景

 

本作は、「戦争体験を継承すること」をテーマに取り組んだ作品の1つです。

 

戦時中のつらい記憶を語ったおじいさんの言葉を文字で書きおこし、その記録ビデオを見ながら、おじいさんの言葉と同じように自分の声で繰り返し語ることで伝承の形を再考した作品です。

 

さて作者はこの行為の中で、おじいさんの記憶を継承することができたのでしょうか?

 

山城は10回ほど繰り返す中で、1回だけ感情が震え自然に涙する体験をしますが、のちのインタビューで「他者の痛みを経験したのではなく、自分の痛みとして仮想的に経験したのではないかと感じた」と振り返っています。

 

他者の経験を理解し、体感することが可能か、あるいは不可能かを表現した本作。

戦争という見知らぬ体験にわずかでも近づけるように努力し、戦争体験者や戦没者と共に生きていきたいという山城の願いが込められています。

 

 

注目作品②

《土の人》

 

OBIKAKE 展覧会レポート 山城知佳子 リフレーミング《土の人》2016年 展示風景

 

本作は、山城が沖縄で長年向き合ってきた「記憶/声の伝承」という主題を、沖縄特有の地域課題で終わらせず、どんな場所であっても起こりうることとして表現を進化させた作品です。

 

撮影の舞台となったのは、沖縄北部の辺野古、伊江島、そして韓国の済州島。済州島は沖縄と同様に軍事基地問題を抱えた地域です。現地を取材し、沖縄と済州島それぞれが持つ固有で複雑な歴史を背景に踏まえつつ、全体を「土」というモチーフでつないだ寓話を生み出しました。

 

3つのスクリーンと、山城の独特なリズム、そして日本語、ウチナー語(沖縄の方言)、韓国語の詩で構成される本作は、観る者を瞬く間に作品の世界に引き込んでいきます。

 

 

注目作品③

最新作《リフレーミング》

 

OBIKAKE 展覧会レポート 山城知佳子 リフレーミング

《リフレーミング》2021年(新作)© Chikako Yamashiro Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 

《土の人》でこれまでの主題に一区切りをつけた山城が、より俯瞰的な視点で沖縄の風景と近現代史を見つめ直し、見過ごされてきた出来事の中にフィクションの可能性を見出そうとした作品です。

 

制作の舞台は、沖縄県名護市安和の小さな集落。

カルスト地形(*)で知られる安和は、鉱山を背景に複雑な物語を持ち、地形が急激に変化した場所です。

*カルスト地形:サンゴ礁が化石化して隆起したもの。セメントの原料になる石灰石でできている。

 

山城はリサーチの最中に、安和の集落で森と海を守る闘いの記憶を持つ老人と、傷ついたサンゴを再生させる男性親子に出会い、この二人との出会いが本作を構想するきっかけになりました。

《リフレーミング》は過去と現在、地上と地下、山と海、人と人でないものとを切り結び、現代の風景に重ね合わせる物語です。

 

過去の作品にも出演した川口隆夫、振付家・ダンサーであり、アートと社会を繋ぐ活動を展開している砂連尾理、沖縄出身の映画俳優の尚玄ら、多彩で多才な出演者の身体表現が物語の核となっています。鑑賞する1つのポイントとして、出演者の身体表現の違いに着目するのもオススメです。

 

OBIKAKE 展覧会レポート 山城知佳子 リフレーミング《リフレーミング》2021年(新作)展示風景

 

観る者を囲むように別々に配置された3つのモニター、複数の音源が織り成す展示は、意識が分散し翻弄させられます。この不思議な感覚に身を委ねながら、ゆっくりと《リフレーミング》の世界に入りこんでみてはいかがでしょうか?

 

 

このほか、複数の映像・写真作品で構成される山城の作品は、沖縄という特定の地域の問題にとどまらない、広い文脈での読み込みや解釈に開かれています。

身体感覚に訴えかけるイメージの豊かさと詩性、そして同時代を見つめる批評的な視点が感じられる山城ワールドに今後も注目です!

 

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展覧会名

山城知佳子 リフレーミング

会期

2021.08.17〜2021.10.10

会場

東京都写真美術館 B1F展示室

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Editor|松栄 美海

【編集後記】

展示室に入った瞬間、心臓部分がぎゅっとなるほど緊張感のある展示でした。

1点1点理解が少し難しい分、一歩踏み込んだところまで考えてみるきっかけになりました。

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