展覧会レポート

宮崎学 イマドキの野生動物

2021.9.7

自然界の報道写真家・宮崎学が写す

野生動物の驚異の世界

 

東京都写真美術館にて「宮崎学 イマドキの野生動物」が開催中です。

 

展示風景

 

宮崎学(1949-)は、日本中の自然や動物を撮影する写真家です。中央アルプスのふもと、長野県上伊那郡南向村(現・中川村)に生まれ、伊那谷の自然豊かな環境を活かして活動を開始しました。

現在も「自然界の報道写真家」として、日本中の自然を観察しています。

 

宮崎は自作のロボットカメラを使った撮影などで、撮影が困難な野生の姿を数多く撮影。

本展は、半世紀近くにわたる宮崎の作家活動を紹介しながら、人間の目が及ばない自然の姿を浮き彫りにしようとするものです。

 

 

まぼろしの「ニホンカモシカ」を撮る

 

展示は、シリーズ〈ニホンカモシカ〉からスタートします。

宮崎が本格的に野生動物を撮影し始めた1965年前後、野生のニホンカモシカは出会う機会が少なく、謎に包まれた存在でした。

そんな中、宮崎は1965年頃からニホンカモシカの生態観察を始め、中央アルプスの亜高山帯に生息していた33頭のカモシカを個体識別し、四季を通じて生活を追い、その「まぼろし」と呼ばれる姿を写真に収めたのです。

 

〈ニホンカモシカ〉より

 

ニホンカモシカの生態を理解しているからこそ撮影できた本シリーズ。

宮崎の目撃情報と生態写真は、生物地理学上、そして進化史上での貴重な記録にもなりました。

 

 

野生動物の“イマ”とは?

 

宮崎は、長年培った生態の観察力や撮影技法で、言語を超えた写真表現を行っています。

 

最新作〈新・アニマルアイズ〉では、「動物たちの住む森を動物の目線で見る」をコンセプトに、動物たちが残した跡を注意深く読み解き、自作のロボットカメラで人間の目が及ばない世界をみごとに写し出しています。

 

展示風景より〈新・アニマルアイズ〉

 

フェンスをよじ登るツキノワグマや、寝起きの伸びをするムササビなど・・・。まるで動物たちのそばにいるかのような圧倒的な臨場感です。

 

なお、〈新・アニマルアイズ〉と、動物たちの暮らしを動物目線から知ることができるシリーズ〈君にみせたい空がある〉は、世界初公開となります。

人間中心の視点で自然を語ることに危機感を持つ宮崎。彼が写す「野生動物のイマ」に注目です!

 

 

「死」をもって自然界の摂理に向き合う

 

本展では、森の中で起こる、野生動物の死をテーマとしたシリーズも展示されています。

思わず目をそむけたくなるような動物たちの死を通して「生命」について考え続けてきた宮崎。

 

展示風景より〈死〉

 

「死」から「死のおわり」まで、自然界の摂理に向き合いたどり着いた考えとは?

宮崎のまなざしを垣間見ることができますよ。

 

 

ロボットカメラの眼がとらえた!

イマドキの野生動物の世界

 

昼夜問わず、日本中の野生動物たちを追う過酷な撮影を続けた宮崎は、人間の身体の限界を痛感し、約4年の歳月をかけて、赤外線感知装置に直結した「ロボットカメラ」を開発しました。

 

展示風景

 

このカメラにより無人撮影が実現し、野生動物の素の表情や知られざる生態をとらえることに成功します。

宮崎の相棒とも言えるロボットカメラを使用したシリーズのひとつ〈イマドキの野生動物〉では、現代社会にたくましく生きる野生動物をとらえています。

 

《ツキノワグマのカメラマン、長野県、中央アルプス》〈アニマル黙示録/イマドキの野生動物〉より 1993-2012年 作家蔵

 

《ツキノワグマのカメラマン、長野県、中央アルプス》は、設置しておいたカメラと三脚で遊ぶ熊の姿を、もう一台の無人カメラがとらえた作品です。

ツキノワグマは好奇心旺盛なこともあり、ユニークな一枚が撮れたのかもしれませんね。

 

人間の存在を意識せずに行動する野生動物の姿は、私たち人間の創造をはるかに超えています。

自然いっぱいの土地で生きてきた宮崎の、探求心の源泉をのぞいてみてはいかがでしょうか?

 

 

1976年から現在も続く〈けもの道〉から、森の中の動物の日常を観察する最新作まで、200点超えの作品で見せる本展。

自然界の報道写真家が写す驚きの動物の姿の数々は、見ていて全く飽きません。

野生動物の驚きの生態はもちろん、生命について、そして人間中心となっている社会への問いかけなど、さまざまな視点を与えてくれる展覧会でした。

 

 

 

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展覧会名

宮崎学
イマドキの野生動物

会期

2021.08.24〜2021.10.31

会場

東京都写真美術館 2F展示室

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Editor  三輪 穂乃香

【編集後記】

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