展覧会レポート
2021.9.22
塔本シスコの人生絵日記
200点以上の作品が集う大規模回顧展
展示風景
世田谷美術館にて「塔本シスコ展 シスコ・パラダイス かかずにはいられない!人生絵日記」が開催中です。
塔本シスコは、大正から平成を生きた画家です。
塔本は、50代から独学で油絵を始め、91才で亡くなるまで、日々の暮らしや身近な草花、思い出などを自由奔放に表現しました。
本展では、初の大規模展示として200点以上の作品が集結。塔本の人生の歩みとともに、さまざまなモチーフを描いた作品の数々を7つの章で紹介します。
見どころ①
塔本シスコの人生と膨大な作品
自画像 1969年
塔本は、1913年に熊本県八代市に生まれました。1922年、家業が傾いたことにより小学校を4年生で中退し、家で農業や兄弟の子守を担います。
家族への奉公を重ねたのちに20才で結婚し、一男一女を得ました。しかし46才のときに夫が不慮の事故で急逝するという不幸にみまわれます。塔本が心身の体調を崩して静養を続けるなかで、心を傾けたのが油絵でした。
展示風景
独学で油絵を始めたのは53才。日々の暮らしを題材に、夢や喜びを大きなキャンバスに表現しました。その後、57才のときに熊本から大阪に移住。団地の四畳半の一室をアトリエに、本格的な創作活動を始めます。
2001年に貧血で倒れたことをきっかけに、認知症を発症しますが、「私は死ぬまで絵ば描きましょうたい」と、91才で亡くなる前年まで制作を続けました。
美術の専門教育などを受けずに、独自の画風を生み出し、表現者として無垢な状態のまま制作を続けた塔本。自分が描きたいものを見つめ、一つひとつ丁寧に描きながら、生涯でおびただしい数の作品を残しました。
展示作品を通して、是非、制作活動=塔本の営みそのものを感じてみてくださいね。
見どころ②
人生をまるごと絵日記のように描いた作品
展示風景
展示室に入ると、大小さまざまな作品が目に飛び込んできます。
描かれているのは、身の回りの出来事から、家族との時間、草花や動物たち、子どものころの思い出まで・・・。
明るく鮮明な色彩で描かれた作品からは、塔本が見て愛した世界を感じることができます。
金魚 大和錦の産卵 1992年
作品には日記のように言葉が添えられているものも!独特な言葉のチョイスで書かれた日記文は、絵と一緒に味わうのがおすすめです。
見どころ③
竹筒、空き瓶、しゃもじ!絵画を飛び出した立体作品
展示風景
塔本の作品は、絵画のような平面作品にはとどまりません。木箱やお酒の空き瓶、しゃもじなど、日常にある立体物に描いたものや、人形、手描きの着物、粘土のオブジェなど、形の違いを自由に乗り越えたさまざまな作品を制作しました。
絵画を飛び出した立体作品の数々からは、まさに「かかずにはいられない」そんなエネルギーが感じられます。
展示風景
人生を全うするまで、絵を描くという行為と向き合った塔本。大切にした日常の出来事をよろこびあふれる創造のエネルギーで発散しつづけました。
「塔本シスコ」の作品、そして人物像を深く知ることができる本展。一目観て塔本の虜になる方も多いのではないでしょうか!
日常を愛でる塔本の視点や、絵画によって鮮やかに映し出された世界から、私たちの日々の生活を改めて捉え直すヒントが得られるかもしれませんね♪
本展は日時指定制のため、事前予約が必要です。詳しくは公式ホームページのチケット購入ページをご確認ください。
また、世田谷美術館を皮切りに、全国3館に巡回いたします。
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本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
〆切は2021年10月11日23:59まで!
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塔本シスコ展 シスコ・パラダイス
かかずにはいられない! 人生絵日記
2021.09.04~2021.11.07
開催終了
世田谷美術館 1階展示室
Writer|鈴木有子
【編集後記】
シスコさんの描く明るく鮮やかな色彩に心が奪われました。まさにパラダイス!絵のエネルギーをたっぷり浴びて心が洗われました。