展覧会レポート
2019.10.7
イメージや認識の作られ方を再考する
「洞窟」をテーマにした展覧会
東京都写真美術館にて開催中の「イメージの洞窟 意識の源を探る」。
内覧会の様子をレポートします。
凝った演出の撮影スポット!
本展は、古代からさまざまな作品表現の源になっている「洞窟」をモチーフとしています。
展示作品の中から、“私たちの頭の中に作り出されるイメージ”や、“ものごとをどのように認識しているのか”を、再考してみましょう。
それでは、本展作品をいくつかピックアップしてご紹介します。
オサム・ジェームス・中川
オサム・ジェームス・中川 《#009》〈ガマ〉より 2010年 東京都写真美術館蔵
©Osamu James Nakagawa, courtesy PGI
沖縄のガマ(洞窟)で長時間撮影したこちらは、オサム・ジェームス・中川のシリーズ作品です。
洞窟の闇を人工光と超高解像度のデジタルカメラで長時間撮影したこと、岩肌のリアルさ、ガマという聖域、そして集団自決があった場所。
これらの複雑なイメージが絡み合うことで、鑑賞者はまるで自分がそこに行ったことのあるような、奇妙な視覚体験に誘われるのです。
会場内には、同作家によるインスタレーション展示もあります。
和紙で作られた〈闇〉というシリーズのインスタレーション。実際はもっと暗く、岩肌のようです。
北野謙
北野謙 〈未来の他者〉展示風景
こちらは北野謙の〈未来の他者〉シリーズの新作です。
本作は、カメラを使わず印画紙の上に直接赤ちゃんをのせてイメージを写し取る、フォトグラムの技法を用いています。
赤ちゃんは数ヶ月前まで母親のおなかの中にいて、生まれてすぐはコミュニケーションをとることができません。
向こうの世界と現実のはざまにいる、絶対的他者へ思いを巡らせる試みです。
ゲルハルト・リヒター
ゲルハルト・リヒター《MV.6》〈Museum Visit〉2011年 東京都写真美術館蔵
©Gerhard Richter, courtesy Wako Works of Art
ゲルハルト・リヒターは、撮影した印画紙の上に着彩する、オーバーペインテッド・フォトグラフ(*)と呼ばれる手法を用いています。
日本初公開のこちらの作品は、ベースの写真はどれも何の変哲もないスナップ写真です。が、エナメルによって隠された部分を凝視しています。
作家がどこに視線を動かし何を記憶したか、作品からその痕跡を辿ろうとしているのかも知れません。
*スナップショット的な写真の上に油彩やエナメルで色彩をほどこす手法。
明と暗に分かれた、穏やかでひんやりとした展示空間では、「自分はどこから来て、どんな意識を持っているのか」自問自答してもいいかも。
もちろん、作品をじっと見つめて自分自身の“意識の源”を垣間見るもよし。
information
会場名:東京都写真美術館 2階展示室
展覧会名:イメージの洞窟 意識の源を探る
会期:2019.10.01〜2019.11.24
OBIKAKE gifts
「イメージの洞窟」展 チケットを5組10名様にプレゼント!
締切:10月25日23:59まで!
Editor | 三輪 穂乃香
個人的に一番好きな美術館。毎回じっくり楽しめる展示なのでオススメです。