展覧会レポート
2019.10.10
国芳と2人の娘の作品を紹介する展覧会です。
多岐に渡るジャンルを手がけた国芳の作品約80点を、年代順に紹介する「歌川国芳―父の画業と娘たち」が、太田記念美術館で開催中です。
歌川国芳(1797-1861)は、迫力あふれる武者絵(むしゃえ*)や、戯画(ぎが*)などを得意とした浮世絵師です。
*武者絵:歴史や伝説などに登場する英雄や武将、またその合戦の場面を描いた絵のこと。
*戯画:こっけいな内容で描かれた絵のこと。「カリカチュア」とも。
水滸伝(すいこでん)の武者絵で人気絵師に!
国芳は17歳頃に浮世絵師としてデビューしました。しかし、30歳を過ぎる頃までは、描いても売れないという困難な時期が続きました。
そんな国芳の大きな転機となったのが、31歳の頃から刊行を始めた「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」です。
(左から)歌川国芳《通俗水滸伝豪傑百八人之一人 花和尚魯知深初名魯達》文政10年(1827)頃 太田記念美術館蔵/歌川国芳《通俗水滸伝豪傑百八人之壹人 浪裡白跳張順》文政10〜11年(1827〜28)太田記念美術館蔵
明時代の中国で書かれた伝奇時代小説の大作である「水滸伝」に登場するヒーローたちを、勢いあるタッチで描いたシリーズです。
スカイツリー建設を予知していた?
歌川国芳《東都三ツ股の図》天保2〜3年(1831〜32)頃 個人蔵
本作の左奥に、東京スカイツリーのような塔が ! 井戸を掘るためのやぐらを目立たせるために、高く描いたと言われています。
未来を予知したような作品に、思わず頬を緩ませてしまいます。
ユーモラスな戯画たち
国芳が45歳頃、天保12年(1841)に天保の改革が行われ、歌舞伎役者や遊女を描いた浮世絵の刊行が禁止されました。
その代わりとして制作されたジャンルの一つが「子ども絵」です。大人たちを子どもの姿にすり替えることで、幕府の目をごまかしました。
歌川国芳《江都勝景 中洲より三つまた永大ばしを見る図》天保13〜14年(1842〜43)頃 個人蔵
隅田川の中洲で子どもたちがさまざまな正月遊び をやっている様子を描いた作品です。中央左の羽子板を持った横向きの女の子は、国芳の長女「とり」だと考えられています。
「ゆるかわ」な戯画も!
歌川国芳《荷宝蔵壁のむだ書》嘉永元年(1848)頃 太田記念美術館蔵
子どものラクガキのような役者の似顔絵です。わざと下手に描かれていますが、よーく見るとそれぞれ特徴が捉えられています。
国芳の2人の娘たち
国芳には、長女の芳鳥(よしとり)と、次女の芳女(よしじょ)の2人の娘がいました。それぞれ画号を、芳鳥は「とり」、芳女は「よし」として、浮世絵を描いていました。
本展では、2人の作品が手がけた作品も紹介されています。
歌川芳鳥《武具尽両面合》嘉永6年(1853) 個人蔵
こちらの作品は、武具の表裏を貼り合わせて遊ぶ仕組みになったおもちゃ絵です。芳鳥は若くして亡くなったため、本作が現存する唯一の錦絵とされています。貴重な作品ですね!
歌川芳女《五節句の内 三節の見立 新材木町 新乗物町》文久2年(1862)頃 個人蔵
こちらは、芳鳥の妹・芳女が単独で描いた現存唯一の錦絵です。芳女は、明治時代に入ってからも絵の仕事で生活していたと言われています。
父娘の活躍が見られる貴重な展覧会です。会期が短いので、ご注意ください。
information
会場名:太田記念美術館
展覧会名:歌川国芳 ―父の画業と娘たち
会期:2019.10.04〜2019.10.27
開館時間:10:30〜17:30(入館は閉館の30分前まで)
料金:一般700円、大高生500円、中学生以下無料
展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/5171/
Editor | 静居 絵里菜
【編集後記】国芳の娘たちの作品も見れて、大満足でした!