展覧会レポート
2019.11.7
東京富士美術館で「フランス絵画の精華 ー大様式の形成と変容」が開催中です。
20世紀を代表する美術史家、ルネ・ユイグ(1906-1997)。31歳の若さでフランス・ルーヴル美術館の絵画部長に就任し、第二次世界大戦時にナチス・ドイツからルーヴルの貴重な絵画コレクションを守った人物です。
本展では、17世紀から19世紀半ばのフランスを代表する画家たちを紹介。また、ユイグ氏の助言のもと収集された東京富士美術館のコレクションもあわせて展示されます。
神に見立てられた少年像
(左手前)ウスタシュ・ル・シュワール《病人たちをいやす聖ルイ》1654-1655年 トゥール美術館蔵/(手前右)ピエール・ミニャール《眠るアモルの姿のトゥールーズ伯爵》1682年 ヴェルサイユ宮殿美術館蔵
《眠るアモルの姿のトゥールーズ伯爵》の中央に描かれている愛らしい寝姿の美少年は、ルイ14世と寵愛を受けていたモンテスパン侯爵夫人の子どもです。
モデルを神や聖人に似せて描くのは、イタリアのルネサンス期から見られます。フランスでは、王国貴族を神に見立てて描かれていました。
「アモル」とは、ギリシャ神話の愛の神のこと。愛の神と言われてもピンときませんね。英語名の「キューピット」といえば、ピンとくる方も多いのでは?
本作もよ〜く見ると、弓や矢筒、背中に翼など、キューピットを連想させるものが描かれています。
日本初公開の作品も
ジャン=アントワーヌ・ヴァトー《ヴェネチアの宴》1719-1719年頃 エジンバラ、スコットランド・ナショナル・ギャラリー蔵 Jean-Antoine Watteau,Fétes Venitiennes,National Galleries of Scotland.Bequest of Lady Murray of Henderland 1861
ジャン=アントワーヌ・ヴァトーは、裕福な市民の生活を演劇の登場人物や神話の物語に見立てた「雅な宴(雅宴画)」という新しいジャンルを開拓した画家です。
画面右端に描かれた「ミュゼット」という楽器を持つする男は、ヴァトー本人。中央の美しい女性を物憂げに見つめています。
マリー=アントワネットお気に入りの女性画家
エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ・ルブラン《ポリニャック侯爵夫人、ガブリエル・ヨランド・クロード・マルチーヌ・ド・ポラストロン》1782年 ヴェルサイユ宮殿美術館蔵 Photo © RMN-Grand Palais(Château de Versailles)/ Gérard Blot / distributed by AMF)
ヴィジェ・ルブランは、王妃マリー=アントワネットのお気に入りの画家となり、宮廷の人びとなど多くの肖像画を描き人気を博した女性画家です。
ポリニャック伯爵夫人は、フランス王家の教育係を務め、何度もルブランのモデルになりました。
夫人の柔らかな表情と落ち着いたポーズを見る限り、ルブランととても仲が良いことがわかりますね。こちらの作品は撮影可能です。
フランス絵画がもっとも輝いた17世紀から18世紀の作品が一堂に展覧できる機会です。東京展終了後、九州国立博物館(2020.02.04〜03.29)と大阪市立美術館(04.11〜06.14)へ巡回します。
information
会場名:東京富士美術館
展覧会名:ルネ・ユイグのまなざし フランス絵画の精華 ー大様式の形成と変容
会期:2019.10.05〜2020.01.19
開館時間:9:00~17:00(※入館は閉館の30分前)
料金:一般1,300円、大高生800円、中小生400円、未就学児無料
展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/10-2/
Editor | 静居 絵里菜
【編集後記】ポリニャック夫人がとても可愛かったです!