展覧会レポート

アジアのイメージ 日本美術の「東洋憧憬」

2019.10.30

日本人が憧れたアジアの古代美術

 

1910年(明治43年)頃から1960年(昭和35年)にかけて、日本の知識人、美術愛好家・作家たちは、中国や朝鮮半島など東アジアの古典美術に憧れを抱いていました。

 

本展は、アジアの古美術品と、それに影響を受けた1910年から1960年頃までの絵画、工芸品、現代作家の新作を通じて、日本の作家たちによるアジアへの憧れと尊敬、そこから得た新たなイメージを紹介する企画展です。

 

チャイナドレスの婦人たち

 

藤島武二《匂い》1915年 東京国立近代美術館蔵

 

《匂い》は、日本洋画としてはもっとも早い「チャイナドレス」を描いた作品のうちの一つ。作者自らの中国服コレクションをモデルに着せて、アトリエで描いたものです。

 

チャイナドレスは、近代中国で西洋のドレスと「西洋が求める中国のイメージ」を合体させてできたもの。中国は、西洋が自分たちに持つイメージを逆手にとって、新しい服飾文化を作りました。

 

日本の画家たちは、そのチャイナドレスをアジアの中の新しい息吹として捉え、作品に取り込んでいきました。

 

 

東アジアの古典美術からのイメージ

 

《三彩梅花文壺》中国・唐時代(8世紀)東京国立博物館蔵

 

唐三彩(とうさんさい)は、中国・唐時代(8世紀前半)に焼かれた、白地に緑や藍色などで彩られた副葬品(*)と知られる陶器で、中国での発掘により日本に入ってきました。

 

コロンとした胴体に可愛らしい梅の花のような模様がある《三彩梅花文壺》は、緑や黄色の釉薬を流しかけた作品。花模様に見える白い部分は、ロウ抜き(*)したと考えられています。

 

*副葬品:死者を埋葬するとき、遺体に添えて収める品物のこと。

*ロウ抜き:溶かしたロウソクを塗って、抜き模様を施す陶芸技法のこと。

 

今のアーティストが感じる「アジア」

 

(手前)田中信行《流れる光 ふれる形》2019年 作家蔵/(奥)岡村桂三郎《百眼の白澤》2019年 作家蔵

 

新館ギャラリー1・2では、3人の現代アーティストの作品が展示されています。

 

岡村桂三郎の《百眼の白澤》の「白澤(はくたく)」は、人の言葉を理解するとされた、中国に伝わる想像上の霊獣です。

 

本作には、白澤の体と無数の目だけが描かれています。物を言わない白澤は、一体なにを見つめているのでしょうか。作品の真ん中に立つと、心地よい静けさ感じることができます。

 

田中信行《流れる光 ふれる形》は、アジアで古くから用いられてきた漆(うるし)の作品。液体のようになめらかな雰囲気を持つ作品が、室内空間に自立しているのは不思議な雰囲気があります。

 

山縣良和《Tug of War 狸の網引き》2019年 ミクストメディア 作家蔵

 

巨大な糸巻きから伸びる縄を引いている狸たちが微笑ましく見える本作は、1970年代初頭の「日米繊維交渉」や「沖縄返還」と戦後日本の問題を表しています。

 

 

東洋への憧れは、1960年代頃に作品制作の表舞台からフェードアウトしていきます。しかし、日本美術の根底では、発展し、生き続けていると考えられます。

 

 

information

会場名:東京都庭園美術館

展覧会名:アジアのイメージ 日本美術の「東洋憧憬」

会期:2019.10.12〜2020.01.13

開館時間:10:00–18:00
※ただし、11月22日(金)、23日(土・祝)、29日(金)、30日(土)、12月6日(金)、7日(土)は夜間開館のため20:00まで開館
※入館は閉館の30分前まで

料金:一般 1,000円、大学生800円、中高生500円、65歳以上500円

展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/250-2/

 

OBIKAKE GIFTS

本展のチケットを5組10名様にプレゼント!

〆切:2019年11月27日 23:59まで

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Editor  静居 絵里菜

【編集後記】美術館と作品がマッチしています!ぜひ足を運んでみてください。

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