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山﨑妙子さんが山種美術館長を目指したきっかけとは?(2/4)

2019.11.11

国内最高レベルの近代・現代日本画コレクションを所蔵する山種美術館。

第1回では、同館館長の山﨑妙子さんに、創立のきっかけについてお聞きしました。第2回では、「なぜ山種美術館の館長を引き継ごうと思ったのか」そのきっかけや、美術館運営にかける思いをお聞きしました!

 

 

-山﨑館長は、なぜ美術館長を目指されたのか教えていただけますか?

 

幼い頃から多くの日本画を見て育ち、中学までは油絵も習っていたのですが、大学は美術系ではなく、慶應義塾大学の経済学部に進学しました。でも在学中に、画家としては無理だとしても、私の家に深く結びついている「美術」と関わる仕事がしてみたい! という思いが強く湧いてきたんです。

 

-でも大学は専門外の学部だったんですね。

 

そうなんです。そのため、父・富治からは「日本美術の勉強で修士号を取得するくらいでなければ2美術館を継がせることはできないよ」と言われて。そこから2年間かけて必死で勉強して、東京藝術大学大学院に入学しました。

 

―藝大ではどのようなことを学ばれたんですか?

 

在学中は日本美術史を学び、速水御舟の研究で博士論文を書きました。自宅の床の間によく飾られていた、速水御舟のミステリアスな作風に惹かれていたからです。でも同時に、日本画の実技も学べたことは、とても貴重な経験だったと思います。ちょうど日本画科で教えておられた恩師である平山郁夫先生から、「せっかく藝大に入ったのだから、日本画の実技も学んで、画家の心が分かる研究者、そして美術館長になってください」というお言葉を頂いたんです。そこで、日本画の制作を初歩から学び、法隆寺の壁画模写なども経験しました。

 

 

―在学中、美術史の研究と並行して実技を学ばれたことは、美術館でのお仕事にプラスになっていますか?

 

そうですね。日本画に使われている様々な技術や各画家の創意工夫を、自分の言葉で来館者の皆様にお話できるようになりました。

 

―山種美術館の今後の使命や、力を入れて活動していることはありますか?

 

一番の課題は、もっと多くの方に日本画の良さを知ってもらいたい、ということですね。海外のお客さまも含めて、興味・関心をもっていただけるよう、日々試行錯誤しています。たとえば、広尾に移転してから、美術鑑賞と合わせて、その展覧会の出品作をモティーフとした和菓子と抹茶を味わうことができる、「Cafe椿」をオープンしました。また、1971年から開催していた「山種美術館賞」を、推薦制から公募制に変えて新たにスタートさせた「SEED山種美術館 日本画アワード」で、新人発掘、若手画家の奨励にも力を入れています。

 

「日本画」への幼い頃からの思いが忘れられずに、大変な努力をされて山種美術館の3代目館長になったのですね。現在は様々な日本画普及活動に取り組んでいて、最近では、多くの若い女性が来館するようになっているそうです! 第3回では、その理由についてお聞きしています! 次回もお楽しみに!

第3回につづく)

 

information

【山種美術館 広尾開館10周年記念特別展】

東山魁夷の青・奥田元宋の赤―色で読み解く日本画―

会場:山種美術館

会期:2019.11.02〜12.22

展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/272-2/

 

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Writer | 齋藤 久嗣

脱サラして満3年が経過。現在は主夫業とアート系のブロガー&ライターとして活動中。

首都圏を中心にほぼ毎日どこかの展覧会に出没中。日本美術が特に好みです!(Twitter:@karub_imalive

 

 

Editor | 三輪 穂乃香

OBIKAKE編集部所属。

和菓子が美味しい美術館。最高です。

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