展覧会レポート
2019.10.31
色鮮やかに描かれた「明治」を紹介
府中市美術館で、「おかえり 美しき明治」が開催中です。
美術館入り口の看板
今から約150年前の明治初期、日本に憧れを持った外国人たちがやって来ました。
春夏秋冬で表情が変わる自然や、つつましく生きる当時の人びとの姿に感動した外国人画家は、明治の姿を描きました。その作品は、自国へ持ち帰られ大切に保管されました。
展示風景
外国人が描いた水彩画を見た日本人の青年画家たちは、彼らの作品に憧れを持ちました。そして、彼らに刺激を受けた青年画家たちは、日本の水彩画「みずえ」を生み出しました。
本展では、海に渡った明治期の日英作家の里帰り作品と、日本人画家の水彩画など約300点から、「美しき明治」の実像に迫ります。
明治のほほえみ
(左から)笠木治郎吉《花を摘む少女》1897-1912(明治30-45)年頃 星野画廊蔵/笠木治郎吉《下校の子供たち》1909(明治42)年 星野画廊蔵
本展のメインビジュアルに使用されている《花を摘む少女》は、笠木治郎吉の作品です。油彩画と見間違うほど描き込まれていますが、水彩画です。
膠(にかわ)と呼ばれる、主に木工工芸の接着剤や、染色などに使用されるものを、水彩絵の具に混ぜる工夫をして描かれました。
日本を愛した英国人画家
(左から)チャールズ・ワーグマン《街道風景》府中市美術館蔵/チャールズ・ワーグマン《西洋紳士のスケッチ図》1870年代(明治3-12)年頃 郡山市立美術館蔵
チャールズ・ワーグマンは、中国や日本について知るために派遣された、英国人新聞記者。1961(文久元年)に来日すると、翌年には幕末期の日本を描いた風刺画「ジャパン・パンチ」を創刊しました。
日本人女性と結婚したワーグマンは、亡くなるまでの30年間を日本で暮らしました。ワーグマンが見て切り取った明治の風景は、現実味があります。
日本中の花を求めて旅した外国人
(左から)《ロサ・キネンシス・プセウドインディカ》/《ロサ・マルティフローラ》/《ロサ・モスカータ》 いずれもアルフレッド・パーソンズ コノサーズ・コレクション東京蔵
アルフレッド・パーソンズは、明治25年の春から秋にかけて日本各地を旅行し、植物と風景とを組み合わせた水彩画を数多く描きました。
イギリスに帰国後、「バラ属」(バラ図鑑)を4年かけて完成させました。本展では、パーソンズが世界中を旅して見てきたバラが20点展示されています。
日光を描いた画家たち
五百城文哉《東照宮・陽明門》1892-1905(明治25-38)年頃 小杉放菴記念日光美術館蔵
今も多くの外国人観光客で賑わう栃木県・日光市。欧米人の日光旅行は1870(明治3)年の英国公使H・パークス夫妻一向による東照宮参詣と言われています。
《東照宮・陽明門》は1893(明治26)年のシカゴ万博に出品されました。近くで見ると砂利が一粒ずつ描かれています。階段を登っている人物は、今にも動き出しそうなリアルさがあります。
10月22日から後期展示が始まりました。巡回はせず、府中市美術館のみの開催です。お見逃しなく。
information
会場名:府中市美術館
展覧会名:府中市政施行65周年記念 おかえり「美しき明治」
会期:2019.09.14〜2019.12.01
開館時間:10:00〜17:00(入場は閉館の30分前まで)
料金:一般700円、大学・高校生350円、小・中学生150円
展覧会詳細ページ:https://obikake.com/exhibition/520-3/
OBIKAKE GIFTS
本展のチケットを5組10名様にプレゼント!
〆切:2019年11月13日 23:59まで
Editor | 静居 絵里菜
【編集後記】絵の前に立つと、懐かしい雰囲気になりました。