展覧会レポート

奈良原一高のスペイン――約束の旅

2019.12.24

忘れられたシリーズ、

東京でほぼ半世紀ぶりの展覧!

 

世田谷美術館にて「奈良原一高のスペイン――約束の旅」が開催中です。

 

展示風景

 

奈良原一高(ならはらいっこう)は、戦後日本の新しい写真表現を切り開いた写真家です。

たとえば代表作〈王国〉シリーズは、北海道にある男子修道院と和歌山県の女子刑務所の様子をとらえたもので、極限状況での生を感じとることができます。

 

本展では、これまでほぼ取り上げられてこなかった60年代のシリーズ、〈スペイン 偉大なる午後〉に注目。奈良原がスペインと出合ってゆくプロセスをたどります。

 

 

プロローグ 遠い都市

 

展示風景

 

プロローグは〈ヨーロッパ・静止した時間〉シリーズから始まります。

奈良原は30歳の夏、フランスのモード誌から誘いを受け、パリに行きます。

その時、ヨーロッパ各地の古い都市に残る石造りの塔などに、重々しく独特な残酷さを覚えます。

本シリーズは、そんな違和感をきっかけに撮影されたものです。

 

これと並行して制作されていたのが、本展のメインである〈スペイン 偉大なる午後〉です。

 

 

第1章 祭り

 

展示風景より左《フィエスタ セビーリャまたはマラガ》〈スペイン 偉大なる午後〉より 1963-65年 

 

第1章は、奈良原がスペインに見出したものをより理解するために、シリーズ〈スペイン 偉大なる午後〉の中の「フィエスタ」から紹介されます。

 

こちらの作品は、路上で歌い踊る若者たちをとらえた一枚。

自由で現代的な若者たちが、祭りに参加し、文化を体現していることに、奈良原は深く共感しました。

 

 

第2章 町から村へ

 

展示風景より左《バヤ・コン・ディオス エル・エスコリアル、マドリード》、右《バヤ・コン・ディオス アラゴン》 すべて〈スペイン 偉大なる午後〉より 1963-64年

 

奈良原が旅していた60年代前半のスペインは、情勢の変化や経済の自由化により、日本に次ぐ驚異的な高度経済成長期を迎えています。

変わりゆくスペインの姿を知りながらも、簡単に変わることのない何かを人々の中から見出していたのかもしれません。

 

 

第3章 闘牛

 

展示風景より、左・中央《偉大なる午後》1963-65年、右《偉大なる午後 パンプローナ》1963-65年 すべて〈スペイン 偉大なる午後〉より 

 

奈良原は闘牛士と牛が接近するとき、「生と死の交わりを成就する」場が現れると感じています。

極限状況での生を見つめる写真家として出発し、それまでの自分を問い直していた奈良原にとって、闘牛ほど心揺さぶられるテーマはなかったのでしょう。

 

その後も奈良原は闘牛興行を追うように旅を続け、実に200頭もの闘牛を見ています。

 

 

奈良原一高のスペインを鮮やかによみがえらせた本展。

どの写真にも「生と死」や「失われゆくもの」、「時代の変化」などが収められています。

 

展示風景

 

特集として、写真集〈スペイン 偉大なる午後〉をデザインした勝井三雄とのコラボレーションの数々も展示されています。

今まであまり注目されてこなかった奈良原の仕事をたっぷり鑑賞できる機会ですよ。

 

 

Information

展覧会名:奈良原一高のスペイン――約束の旅

会場:世田谷美術館 1階展示室

会期:2019.11.23〜2020.01.26

詳細:https://obikake.com/exhibition/6639/

 

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本展の招待券を5組10名様にプレゼント!

〆切は1月5日23:59まで!

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Editor  三輪 穂乃香

 

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