高橋士郎 《家屋の神》 2019年 ナイロン、送風機
《大事の神》 2006年 ナイロン、送風機、モーター
いずれも作家蔵
高橋士郎 《イザナミ》 1980年 ナイロン、送風機、モーター 作家蔵
高橋士郎 《涙の神》 2008年 ナイロン、送風機、モーター 作家蔵
高橋士郎は造形作家として、1960年代よりコンピューター制御のアート「立体機構シリーズ」を制作し、その先駆的な作品は日本万国博覧会をはじめとする多くの展覧会で発表されてきました。1980年代には風船を素材とした「空気膜造形シリーズ」を考案、世界各地で活動を展開し、誰にでも親しまれるアートとして人気を博してきました。
芸術にコンピューターやテクノロジーを浸透させた立役者の一人であるいっぽうで、Shiro Takahashiの名はイスラム数理造形の研究者としても世界的に知られています。2000年代には多摩美術大学の学長を務めながら、情報芸術の分野におけるユニークな教育の実践者として、多くの才能を輩出してきました。
本展は高橋士郎が長年つづけてきた「空気膜造形」研究の集大成として、日本の古事記に挑んだ作品群で構成されます。古代より現代まで、人間が「気」をどのように扱ってきたのか、その全歴史と文化を自家薬籠中のものとした高橋は、古事記のなかに現れる神々の「気宇壮大」を、独自の気膜テクノロジーによって、21世紀に蘇らせます。
時代を超えてインスピレーションを与えつづけてきた古事記について、岡本太郎は出雲を訪れた際、出雲神話の「おおらかな行動性」を高く評価しています。太郎は小学生の頃に出雲で過ごした記憶を手繰り寄せながら、国引きや国譲りの神話のなかに、生活者の実感に根ざした創造性を感じとったのでした。生田緑地の自然のなかに現れるのは、高橋士郎のおおらかな行動性とイマジネーションを通した、古事記の神々の真新しい姿とも言えるでしょう。
奇想天外でユーモラスな神話の物語には、日本の自然思想の再発見の機会があるだけでなく、世界再生の希望も含まれているように思われます。世代を問わず誰でも楽しむことのできる本展を、ぜひ多くの方々に見ていただきたいと願います。
高橋士郎 古事記展
神話芸術テクノロジー
2020.07.23~2020.10.11
開催終了
9:30~17:00(入館は16:30まで)
月曜日(8月10日、9月21日を除く)、8月11日(火)、9月23日(水)
一般900(720)円、高・大学生・65歳以上700(560)円、中学生以下は無料
※( )内は20名以上の団体料金
川崎市岡本太郎美術館
〒214-0032
神奈川県川崎市多摩区枡形7-1-5 生田緑地内
044-900-9898
小田急線向ヶ丘遊園駅南口より徒歩17分
川崎市岡本太郎美術館