Be-dan
2021.3.8
今月のBe-danは、江戸切子の職人で、篠崎硝子工芸所の社長・篠崎英明さんにインタビュー!
伝統工芸士の認定を受けている篠崎さんは、江戸切子協同組合の副理事長も務めています。
篠崎英明さん ※撮影時のみ、マスクを外していただきました。
第2回は、職人の腕がわかる切子の模様や仕事道具のこと、制作する際の一工夫など! 引き続きお話を伺っていきます。
(第1回はコチラ)
―工房では職人の皆さんが作業されていますが、カットにはどんな道具を使うのですか?
‟ダイヤモンドホイール”という工具をオーダーして、カットしています。「この作品の、この花の模様を作るとき専用」といったホイールもたくさんありまして、うちはかなりの数を揃えています。
切子では、道具がとても大事なんです。
―道具が作品の出来に大きく関わるのでしょうか?
もちろん! いくら職人の腕が良くても、道具や材料がないとバリエーションに幅が出ません。
ただし、ダイヤモンドホイールは、「どんな作品を作りたいか」というイメージがないとうまく注文できません。イメージするには「こんな道具を使えば、だいたいこういう形にカットできる」という知識がいるし、そうした知識を積むには経験値が必要です。
工房も見せていただきました! 作業途中の作品が並びます
―何年くらい修行をすれば、一人前になれるのでしょうか?
どんな工房に入るかによります。まず、ソーダガラスの切子を作るか、クリスタルガラスの切子を作るかで、かなり仕事が変わってくるので。そのふたつを比べてみると、色味や重さが全然違います。
うちはソーダガラスも作りますが、きらびやかでシャープな印象のクリスタルグラスが中心です。逆にソーダガラスばかりのところもあります。
―第1回で「工房によって仕事内容が違う」というお話がありましたね!
材料以外にも、カットを入れたガラスを磨くときに酸で洗うか手で磨くか・・・そうした工程の違いもたくさん出てきます。若い頃、江戸切子協同組合の2代目同士で集まって話をしたとき、同じ組合の職人でもそれぞれやっていることがかなり違うのでびっくりしました。
たまに職人になりたいという人が来るのですが、「何を作りたいのか」「誰の品物見て入りたいと思ったのか」は確認します。
―せっかくなので、職人さんの腕の見せ所という部分があれば、ぜひ教えていただきたいです。
「菊つなぎ」という細かい線がたくさん入ったカットはよく知られていると思います。
でも、もう少しシンプルな、左右がずれていたりするとすぐわかるようなデザインの方が技術が必要です。
左のグラスには菊つなぎがあしらわれています!
―なるほど! お聞きしなければ、素材の違いや難しい部分など、全然気づけないものですね。
職人が直接説明できるような売り場だと良いのでしょうね。こうした説明が付加価値になりますし。
うちのグラスは、一目見てわかる良さだけでなく、もう一工夫加えるようにしています。「こういうふうに見ると綺麗ですよ」「これは横から見てください」と言うと、さらに感動できるような。
―二重の感動ですね。そうしたお話を聞くと、江戸切子がさらに素敵で価値のあるものに思えてきます。
作家物の切子は高いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。でも、そのお値段には必ず意味があるんです。
お手頃な価格の切子もたくさんありますが、「今は手が届かなくても、いつか欲しい」という夢を持っていただけるような、職人の技術力に裏打ちされた高級品もないと、切子という文化自体がなくなってしまいます。
特にこれからの時代は、そうした「夢」がより必要だと感じています。
こうしたお話を聞いていると、切子のイメージがまた少し変わっていきますよね。
次回は、篠崎さんたちの作品にフォーカスを当てる予定です。お楽しみに!
(第3回につづく)
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Editor | 三輪 穂乃香
OBIKAKE編集部所属。
Writer | ニシ
美術と日本文化に癒しを求めるライター。記事とシナリオの間で反復横跳びしながら、何らかの文章を日々生産している。