展覧会レポート
2021.3.9
「日本の印象派」を代表する画家のひとり、南薫造を紹介
イギリス仕込みの水彩画にも注目です!
東京ステーションギャラリーにて「没後70年 南薫造」が開催中です。
没後70年 南薫造 展示風景
南薫造(みなみ くんぞう/1883-1950)は、明治から昭和にかけて日本の洋画界に大きく貢献した画家です。
イギリスへ留学し、水彩画に親しんだ南は帰国後、印象派の画家として評価されました。特に、留学前後に描かれた、明るい色彩と柔らかな筆づかいを特徴とする作品は、「日本の印象派」と呼ばれています。
本展では、南の代表作のほか、木版画や水彩画を展示。南薫造の画業を紹介する大回顧展です!
南が生涯にわたって描いた「瀬戸内海」の風景
1883(明治16)年、広島に生まれた南。1902(明治35)年に、東京美術学校(現・東京藝術大学)へ入学し、岡田三郎助に学びました。
明治30年代半ばの日本は、水彩画ブームが起こっていた年でした。その頃に美校に進んだ南が、水彩画に親しんだのは当然であったと考えられています。
また、1904(明治37)年の白馬会展(*)を開催する際、岡田から水彩画の出品を勧められるほど! 短期的に技術的な進歩も見せていました。
*白馬会:1896(明治29)年に、明治美術会を脱会した黒田清輝と久米桂一郎を中心に結成された洋風美術団体のこと。
(左から)《瀬戸内海》1905年 東京藝術大学蔵/《美校一隅》1904年 広島県立美術館蔵
《瀬戸内海》は、美校在学中の1905(明治38)年に描かれた作品です。
南は故郷の瀬戸内海を生涯にわたり描いています。本作はその中でも、もっとも早い時期に制作されたそう!
同年に開催された白馬会創立10周年記念に、《灯台守》《春の朝》とともに「瀬戸内の水」というタイトルで出品されたものだと考えられています。
鮮やかな青色が目をひく作品です♪
イギリス仕込みの水彩画にも注目!
(左から)《春(フランス女性)》1908年頃 公益財団法人ひろしま美術館蔵/《二人の少女》1908年 公益財団法人ウッドワン美術館蔵
南が留学先に選んだイギリスは、18世紀以来の水彩画の伝統があり、「水彩画の本場」と呼ばれている国です。
東京美術学校西洋画科で学び、白馬会の先輩画家たちに感化されている南にとって、本場イギリスで水彩画を学ぶという発想は、意外なことではなかったと考えられます。
(左から)《川べりの家》郡山市立美術館蔵/《うしろむき》1909年 広島県立美術館蔵 いずれも、3/14までの展示
《うしろむき》は、テムズ川に面したキングスアームズホテルの少女・マリーを描いた作品です。
迷いのない色彩に対して、あどけない立ち姿を描くために、少女の足の角度はえんぴつで何度も修正されています。
透明感のある、本場で磨かれた南の水彩画にも注目です!
さわやかな初夏の農村を描いた作品
帰国後の南は、日本初の洋画家による個人展覧会を開催します。
1910(明治43)年の「南薫造・有島壬生馬滞欧記念絵画展」で注目を集め、その後数々の受賞を重ねて審査員に選ばれるなど! 南は画壇で評価を築きました。
(中央)《六月の日》1912年 東京国立近代美術館蔵
1910年半ば頃から新たな方向を模索し始め、多様な素材や表現を試しつつ、独自の画風を追求していきました。そうして1930年代を迎える頃には、温かみのある色彩と、伸びやかでシンプルな描写を獲得します。
《六月の日》は、南の代表作の一つといわれる作品です。
収穫作業に疲れて水を飲む若い農夫の姿が描かれた本作。画面の奥に描かれた海は穏やかで、初夏の暑さが伝わってくるような作品です!
南薫造の画業の全貌を知る、初めての全国規模の展覧会である本展。
東京展終了後は、広島県立美術館と久留米市美術館へ巡回が予定されています。詳しい情報は、それぞれの美術館公式サイトをご確認ください。
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本展の招待券を5組10名様にプレゼント!
(4/2までの使用期限付きチケット)
〆切は2021年3月15日23:59まで!
応募フォーム ※締め切りました
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開催終了
東京ステーションギャラリー
※新型コロナウイルス感染症対策が実施されています。ご来館前に必ず美術館公式サイトをご確認ください。
Editor | 静居 絵里菜
【編集後記】
南のみずみずしい水彩画にうっとり♡ ミュージアムショップのポストカードなどもオススメです!