Be-dan
2021.3.15
今月のBe-danは、江戸切子の職人で、篠崎硝子工芸所の社長・篠崎英明さんにインタビュー!
伝統工芸士の認定を受けている篠崎さんは、江戸切子協同組合の副理事長も務めています。
篠崎英明さん ※撮影時のみ、マスクを外していただきました。
第2回は、職人の腕がわかる切子の模様や仕事道具のことなどをお伺いしました。
つづく第3回では、取材でお邪魔した部屋の棚に並ぶ、美しい切子作品の数々に迫ります!
(第2回はコチラ)
―いろいろなグラスが並んでいますね! どれも綺麗ですが、いくつかご紹介いただけますか?
まず、代表作が「連星」というオリジナル作品で、一番人気のグラスかもしれません。カラーバリエーションが5色あって、女性に人気ですよ。
―カットがたくさん入っていて、すごく綺麗ですね! 他にも定番の品があるのでしょうか?
売り場にもよりますが、たとえば新宿高島屋では1万円くらいで購入できる多目的グラスが定番ですね。若い人や、ちょうどその予算でプレゼントを探しにきたという人に買っていただいているようです。
こうした多目的グラスは、今増えてきました。ストローもさせるし、ビールも飲めるし、氷を入れてロックで・・・など、使いやすいですからね。
―ひとつあるだけで、いろいろなシーンで楽しめそうです。篠崎さんお気に入りの作品もぜひ教えてください!
透明な作品が好きですね。あと、細かいカットも好きで、ついつい細かくなっちゃうんですよ。
全面に色がついているグラスを小さな粒だけ残して、あとは全部カットを入れて模様を付けたりとか。
―かわいらしくて繊細な作品ですね! 切子でこんなに大きなお皿や、細長い足がついているものはなかなか見ないかもしれません。
お皿のような横に広く大きいものを作るのはとても難しいです。脚付きのグラスも、経験が豊富な人でないと美しくできません。
このグラスの脚は、最高に難しいんですよ。大きなところに押し当てて削るんですけど、作業中まったくこの部分が見えないので勘でやります。
―勘、ですか。
江戸切子を見慣れた人でないとわからない、マニアックな部分ですね。そもそもこの技ができる職人自体、かなり少ないのではないでしょうか。
―こうした作品のデザインをするとき、どこからインスピレーションはやってくるのでしょうか?
たとえば、色から発想を膨らませたりしますね。そういったテーマがあった方が作りやすい場合があります。
職人にも言うのですが、まずは自分のできることから始めるんです。いろいろなパターンのカットをするなかでも、得意不得意ってありますから。
―「色」から発想した作品も見せていただいてもいいですか?
5色のシリーズになっているデザインのものがあります。赤は太陽をイメージして、こうしたカットになりました。青は、海底から海水が湧き上がってきて、潮になるような雰囲気。
他にも、緑は草花のイメージで、垣根越しに見える花ですね。紫は宇宙。あと、琥珀色を「光」に見立てて、光の鋭さを表現したものがあります。
このシリーズのデザインでお皿やグラスを作りました。
―デザインを考えるときにスランプになったりすることはありますか?
スランプなんてしょっちゅうです。一番難しいのはデザインですから。デザインが決まったら、半分できたようなものです。
若い頃は、先輩に「こういうのは初めて見た」と言われるような難しいデザインにも挑戦していました。そうした経験が今につながっています。
見せていただいた作品はどれも綺麗で、細かなカットはまさに芸術品! 職人の技を感じますね。
最終回では、江戸切子の未来についてのお話についてお伺いします。
(第4回につづく)
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日本女子大学・内村理奈准教授
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Editor | 三輪 穂乃香
OBIKAKE編集部所属。
Writer | ニシ
美術と日本文化に癒しを求めるライター。記事とシナリオの間で反復横跳びしながら、何らかの文章を日々生産している。