Be-dan
2021.3.22
今月のBe-danは、江戸切子の職人で、篠崎硝子工芸所の社長・篠崎英明さんにインタビュー!
伝統工芸士の認定を受けている篠崎さんは、江戸切子協同組合の副理事長も務めています。
篠崎英明さん ※撮影時のみ、マスクを外していただきました。
篠崎さんから江戸切子のお話をお伺いする今月のBe-danも、今回で最終回。
第4回では、伝統工芸品である「江戸切子」と、職人の未来についてお聞きします。
(第3回はコチラ)
―伝統工芸品は、「どう未来につなげていくか」という話題がよく出ますよね。
伝統って変えなければいけない部分と変えてはいけない部分がある、と常に考えています。
先代の父が、新しい花のデザインを入れたときは「こんなの切子じゃない」なんて声もあったんです。でも今は、「江戸切子なんだから、こうしなさい」という考えが昔ほどなくなってきています。
―伝統は受け継ぎつつも、時代に合わせた作品作りをする、という感じでしょうか。
先代が活躍されていたころのキャンディボックス(右)。お花がかわいらしいです!
時代が変わっていくなかで必要とされ続けるには、やはり何か変えなければいけない。デザインもですが、技法などもそうです。
昔のガラスは全部手で磨いていましたが、たくさんの数はこなせなくて、値段も高くなってしまいます。手で磨かずに酸で洗ったほうが綺麗で、いいものができるんですよ。これは技術革新だと思います。
ただ、実は機械より人間の手で作ったほうが正確だったりします。
―機械の方がきっちりしているイメージがありました。
ガラスは作っている最中は柔らかくて、どんどんへたっていきます。
現在の機械はまだ、そうした1個1個別の状態になっていくガラスの調整に対応しきれません。人間なら「ここに泡が出ているから消そう」「この部分を調整して他のものに合わせよう」と考えながら作れます。
また、機械でやれることは限られているので、まだ単純なものしか作れません。だからこそ職人ならではの技術が大事で、お客さんが「こんなもの見たことない」って言ったら「よし!」となりますね。
―篠崎さんの会社には、若い職人さんたちがいらっしゃいますよが、次世代へ伝えたいことがあれば、ぜひお聞かせください。
「こういうものを作りたい」と思える、創作意欲のわく環境で続けてほしいと思います。
そして、「あなたの作品が欲しい」と言われるくらい必要とされるような作品を生み出してほしいですね。一人よがりじゃなく、誰かに「すごい」と思ってもらえるような。
毎年、「今年の新作はどれだ?」「どこまでできたんだ?」と尋ねてくるお客様が何人もいるんです。「なんだ、こんなもんか」と軽口を言いながらも買ってくださったり(笑)。
プレッシャーにもなりますが、そうした必要としてくれる方々の存在はとても大きいです。
―そうした人々が、職人さんを育てるのかもしれませんね。
あとは、国でも若手職人の育成や助成をもっと進めてほしい、とも思っています。海外へ完成品を売り出したいと言っていただくことがありますが、作る人がいなくなってしまうと、元も子もないですから。
―ご自身の今後の目標についても、お伺いしたいです。
まずはもちろん、このコロナ禍を乗り切ることです。
江戸切子協同組合の活動で新作展を毎年開催しているのですが、ここ数年は藤巻百貨店のご厚意もあって、銀座の東急プラザで行っていました。でも昨年は中止になってしまって。
今年からはまた開催予定です。多くの人に観てもらえる場所で続けていく意味は大きいと思っています。
ハイレベルな職人技から伝統工芸の未来まで、たっぷりお聞きした今月のインタビューはいかがでしたか?
職人さんたちの技や努力を知って、江戸切子にますます憧れを持ちました。
次回のBe-danもお楽しみに!
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日本女子大学・内村理奈准教授
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Editor | 三輪 穂乃香
OBIKAKE編集部所属。
Writer | ニシ
美術と日本文化に癒しを求めるライター。記事とシナリオの間で反復横跳びしながら、何らかの文章を日々生産している。